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2年前
まだオレが中学2のとき
「おい、鬼崎。今日こそ決着つけてやる」
「しつけぇなお前、何回ボコられれば気が済むんだよ」
「だまれ!お前をやるまでオレは諦め…」
ーーバキっ
「うっ」
ーーバタン
「うぜぇ」
この頃のオレは毎日喧嘩に明け暮れていた。所属していた硬式野球のクラブチームにも行かずに、毎日ただ暴れまわっていた。学校に行っても授業をサボり、不良仲間と遊びほうけていた。
そのかいあって教師には煙たがられ、教室に行けばクラスメートに嫌な顔をされる。
いわゆる不良だった。
「拓也、終わったか?」
「おう、佑介。終わった終わった、コイツ何回やられれば分かるのかね?」
「さぁね、ドMなんじゃねぇの?」
そう言いながらオレにやられたヤツのポケットから財布を抜きとり金を奪ってるコイツは
【富樫佑介】小、中と一緒のオレの親友
オレと佑介はこの辺の不良にはかなり有名で
よく喧嘩を売られる。でも一度も負けたことが無い。オレたちが強いのかやられるヤツらが弱いのか分からないが、でも喧嘩してると気分がスッキリする。だから売られた喧嘩は誰が相手だって構わず買った。
「なぁ、これからどうする?ゲーセンでもよってくか?」佑介が言った
「あぁ、そうだな。どうせ帰っても暇だし」
タバコに火をつけてオレは応えた
「よし、んじゃ行こうぜ。UFOキャッチャーのぬいぐるみが欲しいって女からせがまれててよー」
「はいはい、わかったよ」
そんなことを言いながらオレたちはゲームセンターへと足を進めていた
そこにオレを呼ぶ声が聞こえた
「拓也ー、ちょっと待てよ」
その声に反応しオレは後ろを振り向いた。そこにいたのは兄貴の太一だった
「兄貴…」
「あ、太一さんチース」
「おう、佑介か。お前らまた喧嘩したのか?」
「いや~、売られたから買っただけっすよ」
オレは少しイライラしながら言った
「で、なに?」
「お前この後練習だろ?今日はオレ部活休みだから一緒に行こうと思ってよ」
「行かねぇよ!!」
兄貴の反応を待たずに続けた
「もう行かねぇ、オレは野球を辞めたんだ」
「なに言ってんだよ!お前には才能があるんだぞ、オレとは違って。それにみんな待ってる筈だよ。お前が戻ってくるのを」
「うるせぇ!!とにかくもう野球はやらねぇ」
そう言ってオレはさっさとその場を離れる。佑介も兄貴に頭を下げてからついてきた。後ろで兄貴がなにか叫んでいるが関係ない。
「おい、拓也。いいのかよ。太一さんが誘ってんのに」
「いいんだよ、うるせぇな。お前もそんなこと言うのかよ」
「わかったよ。お前がいいならしょうがないよな。早くゲーセン行って気分変えようぜ」
イライラしているオレに気を効かせたのか佑介がそう言った
オレがこうなってしまったのは半年前のことがきっかけだ。
それまでも学校では粋がってたし、生意気だった。喧嘩もたまにしていた。でも不良ではなかった。タバコも吸ってなかったし教師や一般の生徒から煙たがられてもいなかった。むしろ学校の人気者だった。
そんなオレを変えてしまった事件。それは、オレが所属している野球チームでの出来事だった。
オレは小学生のころから体は小さかったが野球の実力は群を抜いていた。そのため兄貴が所属していた硬式野球のクラブチームから声がかかり、中学校の軟式野球部ではなくそこに入った。
そこでもやはりオレの実力は頭ひとつ抜けていた。中1で3年生ばかりが1軍のレギュラーの中、唯一オレ1人が下級生でレギュラーの座についた。そのせいで天狗だった、とくに2年生には先輩だとも思わないような振る舞いを続けていた。
それでも誰も何も言ってこなかった。兄貴が3年生にいたから、他の3年生とも仲が良かったから。
でもそれは永く続かなかった。
兄貴たちが引退してから2年生の先輩たちはオレを目の敵にした。当然だ、クソ生意気でミスでもすれば後輩のくせにボロクソに言ってたから。
そして半年前、先輩たちは練習後にオレを袋にした。それからオレは練習に行かなくなった。
その後、オレはオレを袋にした先輩たちを1人1人ボコボコにした。いきなり襲うのはソイツらと同じになるから1人1人呼び出して、タイマンで完膚なきまでに叩きのめした。
もうその先輩たちもこの夏で引退した。
だから兄貴は最近しつこくオレをチームに戻そうとしているのだ。
でもそんなの関係ない。
練習に来なくなったオレを同級生のチームメイトは心配して何度も連絡してきた。でもオレはそれを全て無視した。そんな仲間に今更どのツラ下げて会ったらいいか分からなかったし、もう一度野球に向き合うのが怖かったから…




