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蒼黒の竜騎士  作者: 海野 朔


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23.突貫お貴族教育・おまけ



 星明かりに煌めく、蒼黒の鱗に、上から下へとゆるりと手を滑らせる。

 一つ一つが宝石の様に輝いている硬質の竜の鱗は、大抵の攻撃魔法は弾くし、刃も通さないという、最強の鎧だ。

 少し前から、寝転がっている璃皇の腹に頬を寄せて、ずっと撫で続けている。

 動物の毛皮の撫で心地とは全然違うけど、コレも中々。夜風でひんやり冷たい鱗はツルツルしていて、撫で心地最高だ。


『もっと撫でても良いよ』


 うっとりと眼を細めて満足そうにグルグルと唸りながら、そんな事を言う璃皇。

 よしよし、もっと撫でて欲しいんだな。


「あー、癒されるぅ」


 ここ最近の疲れが、少し和らぐ。

 夜の庭の一角。ストレス溜まりまくりの私を見かねてか、ちょっとした夜食と共に「気分転換でもしてくれば?」と、リリシズが送り出してくれた。

 マジで有り難い。抜け目なく、エルトおじ様の課題図書も一緒に持たされたけどね。

 簡単な絵本だから、まぁ良いか。生憎と月は出ていないが、星明かりだけで充分読書可能だし。夜目が利くって、超便利。


「あ、“茨の王妃さま”だ。懐かしー」


 絵本の表紙を改めて確認すれば、とても懐かしい表紙があった。昔、侍女さんによく読んで貰った絵本だ。

 確か、大型竜を持つ王妃様が、悪い魔女に囚われた王様を愛竜と共に大冒険の末助け出す話だ。コレ男女逆だろって思いながらも、大好きだった話だ。

 璃皇の腹の上で絵本を読みつつ、夜食のサンドイッチを頂く。空には満点の星空。うーん、クセになりそうな程、最高のシチュエーションだ。

 天気さえ良ければ、毎日でもやりたいな。冬は流石に無理だろうけど。

 絵本を静かに閉じる。流石に幼児用の絵本なだけあって、あっという間に読み終わってしまった。


「いよいよ、明日か………」


 明日の早朝、いよいよ王都へと出発である。

 この1ヶ月、本当に早かった。

 朝は歩行訓練から始まり礼儀作法のおさらい、昼は剣術の練習に加えてもうすぐ王都まで飛ぶのだからと飛行訓練、その間を縫うように食事や間食をして、竜持ちに必要だろう知識も詰め込まれた。夜、フラフラになりながら自室へ帰れば、待ちかまえていた侍女さん達にお風呂に入れられ、身体を磨かれ、おじ様の課題図書をベッドの中で読みつつそのまま夢の中……というか、夢も見る余裕も無かった毎日。

 そんな事を繰り返している内に、あっという間に1ヶ月が過ぎていった。


 そして地獄の歩行訓練の甲斐あってか、なんとか今現在、高いヒールでダンスも踊れるようになり、裾の長いドレスを捌く姿も様になっていた。

 1ヶ月前とは、雲泥の差である。

 でもこれでなんとか、表面上はお嬢様として取り繕えそうだ。

 うん、その点だけは良かった。本当に良くやったよ、私。

 ただ、エルトおじ様の手によって無理矢理詰め込まれた知識の数々は、頭に何か少しでも衝撃が加われば、簡単に吹き飛ぶだろうな。

 ギリギリまであれもこれもと詰め込みたがっていたおじ様だが、これ以上はもう無理です。

 新しく詰め込んだ分、他の単語だとかの新しく詰め込んだばかりの知識が、心太(ところてん)方式で右から左へと抜け落ちていく。所詮は突貫教育よ。

 ここ1ヶ月で学んだ知識が、ほんの少しでも実になれば儲けもんって奴だ。

 まぁ、何も知識無しよりかは、大分心強いけどね。1ヶ月前の自分よりは、遥かに女子力も上がったと思うし。

 毎日侍女さん達に無理矢理磨かれて、お肌もモチモチのツルツルで、身体の方もコンディションは抜群ですよ。

 これで、国王陛下との謁見式もその後の社交界デビューも、恐くない………ハズだ。


「―――……よし、頑張るぞ!」


 ぺちぺち頬を叩いて、気合いを入れる。


「璃皇、今から私は、お淑やかで楚々としたお嬢様として生きていくよ!」

『………ふぅん?よく解かんないけど、頑張れー』


 不思議そうに首を傾げる璃皇の腹の上で、決意を新たに夜空に向かって拳を突き上げる。

 お嬢様なので、雄叫びは上げませんよ。


「……何やってるの」

「うぎゃっ………なんだ、リリシズか」


 いつの間にかそばまで来ていたリリシズが、呆れた様な眼をこちらに向けている。は、恥ずかしいな!


「リリシズ、竜騎兵団の兵舎に帰ったんじゃ……」

「外泊許可貰ったから、今日はここに泊まって、明日の朝にリルファの見送りしてから、竜騎兵団に戻るつもりよ」

「な、なるほど」


 まだ竜騎兵団所属のリリシズは、見習い期間が終わり次第、ヴァリエーレ辺境伯爵家の侍女として、王都にあるヴァリエーレ家の別宅に配属される予定だ。

 休日を合わせて、王都にある流行りの店を2人で色々と開拓しようと、すでに約束も交わしていた。


「さぁ、そろそろ気分転換終わりね。屋敷に戻りましょう」

「えー、もうちょっとだけ……」

「却下」


 ささっと夜食の入っていたバスケットと絵本を回収して、問答無用で襟首を掴んでくるリリシズ。相変わらず、容赦無いな。


「最後の仕上げに、今夜はお嬢様の身体をピカピカに磨き上げますからねー」

「えっ、ちょっ、待っ………!」


 抵抗する暇も無く、ずるずる引き摺られる身体。

 今日もまた、侍女さん達によってたかって全身洗われるのか……!

 流石にあの羞恥プレイは、中々慣れそうに無い。


「今日はとっても良い香油が手に入ったので、それで全身マッサージもしときましょうねー」


 更なる、止めを、刺して来た!


「マッサージは、間に合って「お淑やかで楚々としたお嬢様として、生きていくんでしょう?」」

「うぐっ」

「お淑やかで楚々としたお嬢様は、きっと肌も滑々の艶々で綺麗よ」


 もう、返す言葉もございません。

 リリシズに引き摺られるがまま、屋敷まで連れ戻された。

 逃げようとしても、リリシズに「お淑やかで楚々としたお嬢様は~」と言われてしまうので、そのまま大人しく侍女さん達に身体を磨かれて、全身マッサージも受けるしかなかった。

 こんな事なら、変な決意なんてするんじゃなかった。



 早くも、心が折れそうです。




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