1泳ぎ.ハワイのSPELL
その日の海は何時にも増して輝いていた。
押しては返って来る幾つもの波の面に溢れんばかりに降り注ぐ太陽の光が乱反射して海はまるで一つの大きなダイヤモンドの様に綺麗だった。
今日は雨が降りそうにもないし、まして嵐にもなる様子もない。
太平洋の真ん中にある日本に近い側のハワイよりの海ではそんな穏やかで心が解けるような優しい気候で包まれていた。
一方その頃―――。
海底の世界の会社では魚達がお昼時を告げる合図で若い気を溢れさせていた。
「やっとお昼かー。それにしてもここ最近身体全身を崩壊する様なこの痛み、どうにかならないかな。ニンゲンという生き物が遠野で何かやらかしたらしいが、一体何をやったと言うんだ? これじゃあ、生きるのが辛いや」
大ぶりの関サバがぶつぶつ呟きながら弁当を持って少し高い平地に向かって泳いで行った。
「空、か。海のこの一線を越えると何があるんだろう」
少し高い平地に着いた大ぶりの関サバが水面を仰ぐとその光の暖かさで心に何だか少し大き目の光が灯った気がした。
体は毎日身が裂けそうで痛くて苦しいというのに。
「よっ! 今日も一人で食事かい?」
「―――おっ! お疲れ。一緒に弁当食う?」
「あぁ」
同時期に会社にやって来た中ぶりの関サバの青年がスマートに声を掛けて来た。
この関サバは入社してからずっと部署も同じで、度々一緒にいるので大ぶりの関サバと中ぶりの関サバは互いに兄弟のような関係だと思っている。
「しかし、身体が痛いなぁー。何時になると止まるんだ?」
全身、小さな傷だらけでその切口がそれぞれ引き裂かれているような痛みで身体はボロボロだ。
しかも、その治療の方法が全くないと風の便りで知らされている。
中ぶりの関サバは「はぁー」と溜息を吐いて大ぶりの関サバの隣に着いた。
「治療法が無いのでは仕方がないね」
「……そうだね」
「うん……」
「……」
途方もないその問題に二疋の関サバは項垂れた。
「いただきます」
大ぶりの関サバがそう唱えるとそれに続いて中ぶりの関サバも「いただきます」と言い、倣って弁当を食べた。
途中、同じ会社のカラフルな魚や海底に潜む忙しそうな魚達がやって来たが、どれも皆身体の変調で苦しそうに泳いでいた。
大ぶりの関サバが弁当を食べ終わる頃には中ぶりの関サバもあともう少しというところで弁当を一気に口へ掻き込んだ。
「俺、ちょっとトイレに行ってくる」
大ぶりの関サバが中ぶりの関サバに伝えると、中ぶりの関サバも「自分も!」と言って大ぶりの関サバの後について行った。




