表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第三章 黒銀の断罪機
90/190

(18)虚数解放

 ルシウスの荘厳な挨拶が終わると、宇宙アリーナ全体が拍手と歓声に包まれた。観客は熱狂し、選手たちの士気も高まる――そのはずなのに、俺の胸の奥には妙なざわつきが広がっていた。その余韻に浸る暇もなく、ゼファーが前に言っていた言葉が頭をよぎる。


「詩的な父」


 今になって、その意味がしっくりくる。ルシウスの言葉は、確かに詩みたいだった。耳に残るリズム、胸を打つ熱。もしこれがただの演出なら、すげぇカリスマだなって思うだけで終わるかもしれない。でも、そうじゃない。あの言葉には、本物の重みがある。ただ人を惹きつけるだけじゃなく、その裏にとんでもない意図と力を秘めている。まるで、それを堂々と示しているみたいに。


 けど――その言葉の裏には、もっと違うものがある気がしてならなかった。


「ルナリウム解放計画」


 この言葉が頭をよぎるたび、背筋が冷たくなる。


 ゼファーは「次世代ルナドライブの開発計画だろう」と言っていた。そのときは、俺もそう思い込もうとしてた。でも、ルミナスフローラの中から見つかったルナのお母さんの記録が、それを覆した。


 「虚数次元」

 「あの人を止めてください」


 エリックさんの説明によれば、虚数次元をコントロールできれば 「無限のエネルギーを手に入れることに等しい」 らしい。


 無限――。


 そんなの、俺みたいな高校生にはピンとこない。最近、物理の授業でエネルギー保存の法則を習ったばかりなのに、それが全く意味をなさなくなるような話だ。ゲームやアニメなら「すげぇ!」って思えるけど、現実として考えると、恐ろしすぎる。けど、この宇宙アリーナの光景や、ルシウスの圧倒的な存在感が、それを「ただの夢物語じゃない」と否応なしに突きつけてくる。


 胸がずしりと重くなる。もし、この世界大会そのものが「ルナリウム解放計画」の一部だったとしたら――。


 このアリーナは、単なる技術と信念の戦いの場じゃない。ムーンギア同士の激突の裏で、俺たちには見えない、もっと巨大な何かが動いている。


「虚数次元」


 その言葉が頭の中で何度も反響する。「未来の扉を開く」――そういう希望に満ちた響きのはずなのに、どうしても破壊や犠牲の影がつきまとう。


 無意識に拳を握りしめた。ここは俺たちの夢の舞台だ。でも、その舞台の下に広がる闇が、静かに、確実に迫ってきている気がする。それが何なのか、どうすればいいのか、まだわからない。


 だけど――。


「俺たちの戦いを、未来を奪わせるわけにはいかない。」


 そう心の中で呟き、俺は前を向いた。どれだけ巨大な力に包まれていようと、ここは俺たちのフィールドだ。俺たち自身の力で、この未来を証明してみせる。それが、今この瞬間に固めるべき覚悟だった。

ページを下にスクロールしていただくと、広告の下に【★★★★★】の評価ボタンがあります。もし「続きを読みたい!」と思っていただけた際は、評価をいただけると嬉しいです。Twitter(X)でのご感想も励みになります!皆さまからの応援が、「もっと続きを書こう!」という力になりますので、どうぞよろしくお願いいたします!


@chocola_carlyle

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ