（９）闘機進撃
手続きを終え、いよいよ会場に入ろうとしたその瞬間——。
受付のスタッフが急に鋭い声を上げ、俺たちを呼び止めた。
目の前に現れたのは、気の強そうな女性スタッフ。腕時計をちらちらと見ながら、舌打ちまでしている。
「す、すみません。ちょっと準備が…」
アヤカが申し訳なさそうに頭を下げる。俺はその隣で無言。
こういう場面でどう振る舞えばいいのか、さっぱりわからない。
「とにかく、早くしてください！ 機体を搬出機に！」
その言葉に促され、俺たちは慌ただしく対応を進める。
ゴゴゴ……と重厚な音を響かせながら、ロードラストが専用の搬出機に乗せられていく。
その姿を見た瞬間、ふと脳裏に浮かんだのは——戦場に送り出される戦士の姿。
……いやいや、なんでそんな物騒なイメージが出てくるんだよ。
でも、不思議とロードラストが頼もしく見えるのも、また事実だった。
「もう準備の時間はありません。そのまま会場にお送りします！ 付き添いのお二人もご案内しますので、こちらへ！」
スタッフがきびきびと動きながら、俺たちを促す。
「ちょ、ちょっと待てよ。準備も何も…」
言いかけた俺の声を遮るように、搬出機がガクンと揺れ、会場に向けて動き出した。
「おい、マジかよ……」
仕方なく、アヤカとルナと一緒に搬送用の車両に乗り込む。
その瞬間、会場の方から熱狂的な歓声が響いてきた。
「さあ、皆さん！ ついに開幕です！ ムーンギアバトル和歌山大会、第一試合が間もなく始まります！」
司会者の声がスピーカーを震わせ、それに応えるように、観客たちの歓声がうねりとなって広がる。耳をつんざくような熱気。観客のボルテージが、一気に最高潮へと向かう。
「いよいよだね。」
隣で小さく呟いたルナの声。
その表情には、緊張と興奮が入り混じっていた。
「やるしかねぇだろ。」
俺は深く息を吐きながら、ロードラストに視線を向ける。
——その時、確かに聞こえた。
ロードラストが動き出す音。
それはまるで、「行くぞ」と俺を奮い立たせるような鼓動だった。
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