(15)銀環饗宴
散策の後、日本代表チームに割り当てられた宿泊室に戻ると、そこには予想外の光景が待っていた。
エプロン姿のフェルディナンドさんだ。ただのエプロンじゃない。白地に金の刺繍が施された、まるで高級レストランのシェフが身に着けるような一品。それを堂々と着こなした彼が満面の笑みで立っている。
「さあ、食え!これがヨーロッパ自慢の味だ!」
彼はテーブル上の料理を指差した。その胸を張る表情は、まるでアーティストが自信作を披露するようだ。
思わず吹き出しそうになるのを必死に堪える。いや、エプロン似合いすぎるだろ。それに、料理まで完璧ってどうなってるんだ、この人。隣のアヤカは目を輝かせながらテーブルに駆け寄る。
「これ、本当に全部作ったんですか?」
その問いに、フェルディナンドさんは誇らしげに頷き、声を張り上げる。
「当然だとも!スペインのパエリア、イタリアのリゾット、フランスのラタトゥイユ――これがヨーロッパの美食だ!単調な宇宙食に飽きてきただろうから、胃袋を喜ばせてやろうと思ってな。」
彼の声に冗談混じりの優しさと熱意が込められているのが分かる。だが、直後に「はっはっは!」と豪快に笑ったせいで、その重厚感は一瞬で吹き飛んだ。
アヤカがパエリアを口にして「うまっ!」と驚きの声を上げると、フェルディナンドさんは満足げに微笑む。
「味覚は士気を支える重要な要素だ。しっかり食べて力をつけろ。それが勝利への第一歩だ。」
その後、彼は椅子に腰掛け、窓の外の漆黒の宇宙を見つめながら語り始めた。
「実はな、私が日本チームのガイドを志願したんだ。」
その言葉に全員が驚き、彼の顔を見つめる。彼は続ける。
「昔、日本に留学していたことがあってな。あの時の経験が、私の人生を大きく変えた。…偶然にも、私が滞在していた時に地震が起こったんだ。慌てふためくばかりだった私を、現地の人々が支えてくれた。あの時の温かさは、今でも忘れられない。」
さらに彼は目を細め、真剣な声でこう言った。
「それに…私はテロが大嫌いだ。力で無理やり物事を捻じ曲げようとするその在り方がな。お前たちが日本で戦ったと聞いて、この手で支えたいと思った。それが私の務めだ。」
その言葉には冗談抜きの熱意と決意が込められていた。俺たち全員が静かに彼の話を聞いていた。普段軽口ばかり叩いているこの人が、こんな真剣な顔をするなんて。
「だから、全力でサポートする。お前たちが勝つ。それを信じている。」
その言葉に、俺は自然と頭を下げていた。
これからの戦いは厳しいだろう。でも、フェルディナンドさんのような仲間がいる。だから俺たちは負けない――そう思えた。
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