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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第二章 双月の覚醒機
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(20)黄金激闘

 試合開始のサイレンが戦場に響き渡った瞬間、黄金の戦神が動き出した。ソレイユヴァンガード、ゼファーの駆る絶対機。その機動は、まるで風を斬る剣。無駄のない滑らかな軌道が、俺たちの焦燥を炙り出す。


 「…速ぇ…!」


 目の前の光景が信じられなかった。ディスプレイに映るその姿は、俺たちの誇る最速機体・ルミナスフローラでさえ霞むほどのスピードを誇る。


 「お兄様、いきます!」


 通信越しに響くルナの声。彼女の機体、青白い光を纏ったルミナスフローラが先陣を切る。その姿に、胸が熱くなる。


 行けるかもしれない。

 そう思ったのも束の間、次の瞬間、目の前の光景に息を呑んだ。


 ――避けた。


 ソレイユヴァンガードは、ほんのわずかに軌道をずらしただけで、ルミナスフローラの熱振動ブレードをいとも容易く回避した。一瞬後、雪が蒸気となり、白い霧が戦場を包み込む。


 しかし、その視界を奪う状況の中でも、ゼファーの機体は揺るぎない。圧倒的な冷静さを持って、次の一手を選び取るかのように動く。


 「ルナ、下がれ!」


 叫ぶと同時に、俺はロードラストを加速させる。肩部のショルダーカノンを即座に起動し、霧の向こうへ向けて砲撃。炸裂音が響く。だが、俺たちの攻撃は、ソレイユヴァンガードに届かない。まるで未来を見ているかのように、滑るように回避される。


 「こっちも忘れないでよね!」


 アヤカのバスターディガーが雪山を駆け上がる。新兵装・グランドハンマーが振り下ろされる。その衝撃が斜面を砕き、雪崩を引き起こした。


 これなら…!

 ほんの一瞬、期待が膨らむ。


 しかし――


 ソレイユヴァンガードはスラスターを噴射し、雪崩すらもものともせず、軽やかに斜面を回避した。その動きは、まるで未来を予知しているかのように完璧だった。


 「こいつ…本当に人間が操縦してんのかよ…!」


 俺たちが準備した三つの新兵装――どれも今大会では一度も披露してこなかった切り札だ。だが、それすらもソレイユヴァンガードの前では無意味。まるで――すべての戦術を見透かされているかのように。


 「お前たちの連携は見事だ。しかし、ソレイユヴァンガードには届かない。」


 通信越しに響く、ゼファーの冷静な声。感情の欠片もないその声音が、俺たちの焦りをさらに煽る。 悔しい。けど、事実だ。三機で仕掛けた連携攻撃は、ことごとく無効化されている。このままでは――勝てない。


 「リュウトさん、援護を!」


 ルナの声が割り込む。ルミナスフローラが再び接近を試みている。その勇敢な姿に胸が締め付けられる。


 「くそっ、無茶するな!」


 叫びも届かない。ルナは果敢に攻め込むが、その動きすら読まれていた。


 ――閃光。


 ソレイユヴァンガードの右腕が振り上げられる。オーラブレードが一閃し、ルミナスフローラのシールドが弾き飛ばされた。


 「ルナ、大丈夫か!」


 俺の問いに、ルナが通信越しに息を整えながら答える。


 「…平気です…でも、兄の動きが、読めません…!」


 その焦りに満ちた声が、俺の胸に突き刺さる。それでもルナは諦めず、攻撃を続ける。その姿が痛々しく、見ていられない。


 その時、ソレイユヴァンガードが動いた。

 次に狙われたのは、バスターディガー。


 「ちょっと、こっち来ないでよ!」


 アヤカがランスクレーンを振り回し、全力で迎え撃つ。しかし、その攻撃もまた、無意味だった。


 一撃。


 それだけで装甲が大きく凹む。


 「なんなんだよ、こいつ……!」


 ゼファーの動きは完璧すぎる。俺たちが掴みかけた反撃の糸口は、ことごとく切り裂かれていく。


 その時、視界の端に映る。静止したままのゼファーの仲間たち。まるで「王の命令が下るまで動く必要はない」とでも言わんばかりに。


 もし、奴らが動き出したら……

 ――勝機なんて、ない。

 

 喉が渇く。額を伝う汗。

 この絶望的な状況に、俺はどう抗えばいい?まだ、何かできるのか?


 考えろ。策を見つけろ。

 だが、追い詰められた思考の隙間にさえ、ゼファーの影が忍び込んでくる。

 

 俺の心は、焦燥と葛藤に飲み込まれる。

 それでも──

 操縦桿を握る手を、緩めるわけにはいかなかった。

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@chocola_carlyle

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