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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第一章 蒼白の月鋼機
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(10)月影絶技

 試合開始のサイレンがフィールドに響いた瞬間、全身の毛穴が開くような緊張感が走った。


 目の前に立ちはだかるのは、京都代表・西園寺の機体ミヤコフェニックス。その金色の装飾がこれでもかと自己主張してくる。いや、派手すぎだろこれ。見るからに「魅せるために作られた」って感じで、威圧感が半端ない。


「わたくしより美しい機体など許せませんわ!」

 通信越しに響く西園寺の高圧的な声に、観客席がざわつく。

 いやいや、戦場で張り合うのは機体の美しさなのか?


「行きますわよ、藤堂さん!」

 その声が合図となり、ミヤコフェニックスが鳳凰ミサイルを放つ。


 ミサイルが描く軌道は優雅で、まるで舞う鳳凰のごとく芸術的ですらあった。だが、ルミナスフローラはその一切を意にも介さず、軽やかにかわす。スラスターの青白い残像が、空間を切り裂くように動いていく。


「速ぇ…!」


 思わず口に出た瞬間、背後で爆発音が響いた。

 だが、ルミナスフローラはすでに次の動きに移っている。


 何だこの反応速度…。


 西園寺が素早く《燦然フレアシールド》を展開する。眩い黄金の光がフィールド全体を包み、観客席から「すげぇ!」と歓声が飛ぶ。しかし、ルミナスフローラはその光の中をまるで滑るように接近する。機械であることを忘れるほどの滑らかさ。


「《轟雷スマッシュフィスト》!」


 藤堂の操る《シシガミアーマー》が巨大な拳を振り下ろした。

 その破壊力、見た目からしてヤバい。


 だが、ルミナスフローラはスラスターを全開にし、紙一重で回避する。

 ギリギリのタイミングでの回避に、心臓がドクンと跳ねた。


 次の瞬間、ルミナスフローラの右腕から《高周波ブレード》が展開される。

 フィールドに鋭い駆動音が響く。


 ──その一閃で、シシガミアーマーの右拳が真っ二つ。


 金属の破片が飛び散る。

 観客席から悲鳴と歓声が入り混じった声が響いた。


「やべぇ…。」


 呆然と呟く俺の耳に、通信越しのルナの冷静な声が届く。

「次は…そっち。」


 その言葉と同時に、ルミナスフローラがさらに加速する。焔尾バーストキャノンの閃光を軽々とかわし、ミヤコフェニックスの懐へ飛び込む。その動きに、迷いも躊躇もない。


「《燦然フレアシールド》で防ぎますわ!」


 西園寺の叫びも虚しく、ルミナスフローラのブレードがシールドを一刀両断する。

 まるで光の盾など、最初から存在しなかったかのように。


 続く追撃で、焔尾バーストキャノンが粉砕される。


「《獅子牙クロー》!」


 藤堂が最後の抵抗を試みるが──その瞬間、再びルミナスフローラのブレードが閃く。獅子牙クローごと、シシガミアーマーの左腕が切断された。


 正確無比な一撃に、俺は目を奪われた。


「まだ終わらせませんわ!」


 最後の力を振り絞るように、ミヤコフェニックスが脚部を狙った一撃を放つ。だが、それさえもルミナスフローラはかわし、ブレードを振り下ろした。


 ──鋭い一撃が、ミヤコフェニックスの膝を砕く。


 スローモーションのように、その巨体が崩れ落ちる。

 金属が砕ける音が、静寂を引き裂いた。


 観客席が一瞬静まり返る。


 そして、悠然と立つルミナスフローラ。

 その姿は圧倒的で、まるで戦場の支配者そのものだった。


「嘘だろ…もう終わりかよ。」


 俺の呟きが、静まり返ったフィールドに吸い込まれるように消えた。


「ミヤコフェニックス、シシガミアーマー、共に行動不能!」


 司会の声が響くと同時に、観客席から割れんばかりの歓声が上がる。

 俺はただ、呆然とその光景を見上げるしかなかった。

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@chocola_carlyle

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