(10)月影絶技
試合開始のサイレンがフィールドに響いた瞬間、全身の毛穴が開くような緊張感が走った。
目の前に立ちはだかるのは、京都代表・西園寺の機体。その金色の装飾がこれでもかと自己主張してくる。いや、派手すぎだろこれ。見るからに「魅せるために作られた」って感じで、威圧感が半端ない。
「わたくしより美しい機体など許せませんわ!」
通信越しに響く西園寺の高圧的な声に、観客席がざわつく。
いやいや、戦場で張り合うのは機体の美しさなのか?
「行きますわよ、藤堂さん!」
その声が合図となり、ミヤコフェニックスが鳳凰ミサイルを放つ。
ミサイルが描く軌道は優雅で、まるで舞う鳳凰のごとく芸術的ですらあった。だが、ルミナスフローラはその一切を意にも介さず、軽やかにかわす。スラスターの青白い残像が、空間を切り裂くように動いていく。
「速ぇ…!」
思わず口に出た瞬間、背後で爆発音が響いた。
だが、ルミナスフローラはすでに次の動きに移っている。
何だこの反応速度…。
西園寺が素早く《燦然フレアシールド》を展開する。眩い黄金の光がフィールド全体を包み、観客席から「すげぇ!」と歓声が飛ぶ。しかし、ルミナスフローラはその光の中をまるで滑るように接近する。機械であることを忘れるほどの滑らかさ。
「《轟雷スマッシュフィスト》!」
藤堂の操る《シシガミアーマー》が巨大な拳を振り下ろした。
その破壊力、見た目からしてヤバい。
だが、ルミナスフローラはスラスターを全開にし、紙一重で回避する。
ギリギリのタイミングでの回避に、心臓がドクンと跳ねた。
次の瞬間、ルミナスフローラの右腕から《高周波ブレード》が展開される。
フィールドに鋭い駆動音が響く。
──その一閃で、シシガミアーマーの右拳が真っ二つ。
金属の破片が飛び散る。
観客席から悲鳴と歓声が入り混じった声が響いた。
「やべぇ…。」
呆然と呟く俺の耳に、通信越しのルナの冷静な声が届く。
「次は…そっち。」
その言葉と同時に、ルミナスフローラがさらに加速する。焔尾バーストキャノンの閃光を軽々とかわし、ミヤコフェニックスの懐へ飛び込む。その動きに、迷いも躊躇もない。
「《燦然フレアシールド》で防ぎますわ!」
西園寺の叫びも虚しく、ルミナスフローラのブレードがシールドを一刀両断する。
まるで光の盾など、最初から存在しなかったかのように。
続く追撃で、焔尾バーストキャノンが粉砕される。
「《獅子牙クロー》!」
藤堂が最後の抵抗を試みるが──その瞬間、再びルミナスフローラのブレードが閃く。獅子牙クローごと、シシガミアーマーの左腕が切断された。
正確無比な一撃に、俺は目を奪われた。
「まだ終わらせませんわ!」
最後の力を振り絞るように、ミヤコフェニックスが脚部を狙った一撃を放つ。だが、それさえもルミナスフローラはかわし、ブレードを振り下ろした。
──鋭い一撃が、ミヤコフェニックスの膝を砕く。
スローモーションのように、その巨体が崩れ落ちる。
金属が砕ける音が、静寂を引き裂いた。
観客席が一瞬静まり返る。
そして、悠然と立つルミナスフローラ。
その姿は圧倒的で、まるで戦場の支配者そのものだった。
「嘘だろ…もう終わりかよ。」
俺の呟きが、静まり返ったフィールドに吸い込まれるように消えた。
「ミヤコフェニックス、シシガミアーマー、共に行動不能!」
司会の声が響くと同時に、観客席から割れんばかりの歓声が上がる。
俺はただ、呆然とその光景を見上げるしかなかった。
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