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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第一章 蒼白の月鋼機
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(3)月機降臨

 タッグの相方はまだ見つかっていなかった。それでも、ユイの「パワーアップ」提案で少し光が見えた気がして、重かった気分が少しだけ軽くなっていた。


 スペースポートの一角では、ユイとアヤカが意気投合しながら改造の打ち合わせを進めている。そのやり取りがあまりに賑やかで、見ているだけで元気をもらえるほどだった。


 「やっぱ水流装備やろ!」

 ユイが目をキラキラさせながら提案する。その自信たっぷりな態度はどこか子供っぽくて、つい笑ってしまいそうになる。


 「いやいや、関西大会の会場ってまだ発表されてないじゃない!和歌山みたいに水が使える環境とは限らないでしょ?」

 アヤカは眉をひそめ、一瞬だけ考え込んだあと、冷静に切り返す。その声には、わずかな苛立ちも混ざっていたけど、やり取り自体は楽しそうだ。


 「まあ、せやな…ほな、ユニバーサルな装備にしとくか!」

 ユイは腕を組みながら満足げに頷いた。


 二人の漫才みたいなやり取りに、俺はつい口元が緩んだ。タッグの相方は見つかっていないけど、こうして少しずつでも前に進んでいる――それが不思議と希望を与えてくれる気がした。


 そんな日々が続いていたある日。

 関西大会エントリー締め切りの一週間前のことだ。


 俺はいつものようにスペースポートでジャンク整理のバイトをしていた。

 すると、突然――


 巨大なトレーラーが施設の前に滑り込んできた。


 「リュウト様宛に、ルナヴァルド社から特別配送です〜!それと、ルナ様にお渡しするようにとのことです!」


 配送員の大声に、俺の手が止まった。


 ルナヴァルド社?

 月面開発のトップ企業…!?


 耳を疑ったけど、トレーラーの側面に描かれたロゴを見た瞬間、それが本物だと確信した。


 「俺宛に?それに、ルナにって…?」

 頭の中が一気に混乱する。作業手袋を放り出すと、慌てて事務所に駆け込んだ。


 事務所では、ルナが黙々と書類の整理をしていた。

 いつもより真剣な表情で、俺の声も最初は届かなかったくらいだ。


 「ルナ!ちょっと急いで来てくれ!」

 「えっ、ど、どうしたんですか?」


 驚いた顔で振り返るルナの手を取って、俺はトレーラーの前まで連れて行った。

 配送員が荷台を開け始めると、中から現れたのは――


 銀色の装甲をまとった、優美な機体。


 そのフォルムは、これまで見たどの機体とも違っていた。

 まるで月の女神が、ここに舞い降りたみたいだった。


 「お母様の…ルミナスフローラ…!」


 隣でルナが呟いたその言葉に、俺は息を飲んだ。前に彼女が話していた、海に沈んだ機体。それが、今ここに届いたというのか。


 状況を理解するには少し時間が必要だったが、目の前の光景は否応なく現実を叩きつけてくる。


 俺はその様子を、固唾を飲んで見守るしかなかった。

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@chocola_carlyle

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