(42)未来紡機
全国大会に続いて、世界大会でもテロ事件が起きた。俺たちはまたしても戦場のど真ん中に放り込まれ、なんとか生き延びた。でも、勝ったはずなのに、全然スッキリしない。
胸に残るのは、言葉にできない重苦しさ。目の前の戦いだけじゃなく、その背後にある、もっと大きな影が嫌というほど見えたからだ。
ルナヴァルド社、そしてその独占するルナリウムが生む、莫大な力と、それに抗おうとする者たちの執念。俺たちが戦ったのは、ただのテロリストじゃない。もっと根深い、世界を分断する巨大な力のぶつかり合いだった。
テロを乗り切った俺たちを包む空気は、妙に冷え切っていた。勝利を喜ぶムードなんて、どこにもない。みんな、それぞれ何かを考えてる。多分、俺もそうだ。
でも、そんな雰囲気をぶち壊したのが、御影さんだった。
「いやぁ、素晴らしい!君たち、本当にやってくれたな!」
御影さんは、目を輝かせて拳を握りしめていた。 外にまで響くような声で、俺たちを何度も見ては頷いてる。なんかもう、俺たちの親代わりか何かみたいだ。
冷静沈着な御影さんとは思えないテンション。こんな風に喜びを爆発させる姿、初めて見る。
「神戸重工業の名が、ついに世界を越えて宇宙に刻まれた!これで、地球でも月でも、我々の技術が認められることになるだろう!君たちをスポンサーして本当に良かった!」
誇りと未来への期待が詰まった言葉だった。いや、期待だけじゃない。御影さんの頭の中では、もう次のステップが動き出してる。きっと、勝った瞬間から次の計画を考えてたんだろう。
「さて、地球に戻ったら、エリックさんと月面仕様の設計についてじっくり打ち合わせだな。間に合っていなかったロードラスト・ヴァルクスの暴走制御も、次回の大会までに完璧に仕上げようじゃないか!」
御影さんの目がキラキラ輝いてる。いや、もう燃えてるってレベルだ。これは、ただの達成感じゃない。その先にある、もっと高い目標を見据えてるからこその光だ。
そんな熱気にさらに火をつけたのが、フェルディナンドさんだった。
「はっはっは! やっぱりお前たち、やると思ってたぜ!」
豪快な笑い声が響く。大股で近づいてくるその姿は、戦いの緊張を吹き飛ばすような迫力があった。
「地球に戻ったら祝賀会だろう?俺も参加させてもらうぜ!久々に休暇を取る理由ができたからな!」
アヤカがすかさずツッコミを入れる。
「フェルディナンドさん、休暇なんて取るんですか?いつも動き回ってるのに?」
「ん? さぁな、最後に休んだのがいつだったかも覚えてねぇよ。でもな、楽しみなんだよ、地球に帰って本物の重力を感じるのが。この気持ち悪い人工重力じゃなくな!」
フェルディナンドさんは窓の外に見える地球を眺めながら、大きく伸びをする。 その仕草には、俺たちと共に戦った日々への誇りと満足感がにじみ出ていた。
気づけば、俺たちは周囲に支えられてる。それが、どれだけ心強いか、どれだけ俺たちの足元を固めてくれているか――改めて感じた。
勝利の余韻を噛みしめる間もなく、戦いは続く。でも、俺たちは一人じゃない。喜びも苦しみも共有できる仲間や、支えてくれる人たちがいる。それだけで、この先どんな困難があっても、前に進める気がした。
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