(37)虚構裁断
無重力の闇の中で対峙する二機。漆黒の機体が放つ青白い輝きと、灰色の巨影が纏う冷たい光。沈黙を破ったのは、敵の通信だった。
「ルナヴァルド社──お前たちの支配は終わる。」
低く抑えられた声には、威圧と確信が滲む。
「ルナリウムの恩恵は、全人類のものだ。だが、お前たちはその光を閉ざし、月に築いた王国の玉座に座り続けている。」
灰色の巨体がスラスターを吹かし、じわじわと前進する。
「貴様らの手から、ルナリウムを解き放つ。」
「──愚かな。」
ルシウスの声は、冷たい闇の中に鋭く響いた。
「光を手にする者が、それを操る術を持たねば──それはただの幻影にすぎない。」
敵の機体がわずかに揺れる。
「何?」
「お前たちは、ルナリウムを地球に戻すという。ならば問おう──その力を、誰が管理する?」
「それを決めるのは、お前たちではない!」
青白いビームキャノンが輝き、戦場を照らす。
「ルナリウムが地球にもたらされれば、人類は自らの意志で選択できる!貴様らの独占が続く限り、その未来は永遠に閉ざされたままだ!」
ルシウスは静かに笑う。
「未来とは、ただ与えられるものではない。掴む者が、その形を決める。」
「独占は未来ではない!」
敵機がスラスターを吹かし、距離を詰める。
「ならば、お前たちは何を持って未来を築く?制御なき力が、どれほどの災厄を生むか──知らぬわけではあるまい?」
黒銀の機体が、無音のまま姿勢を変える。
「ルナドライブもまた、お前たちが封じ込めた技術の一つだ!」
テロリストの声が鋭さを増す。
「月の資源を封じ、技術までも秘匿する――"独占"こそが、人類を停滞させる元凶だ!」
ルシウスの声は、氷の刃のように鋭く響く。
「技術とは、ただ触れる者のためにあるものではない。それを鍛え、理解し、正しく用いる者の手にあってこそ──進歩を生む。」
「お前たちは"人類のため"と嘯きながら、その実、自らの王国を維持するために資源と技術を封じ込めているだけだ!」
ルシウスは微かに肩をすくめる。
「ならば問おう──お前たちは、それを管理するに足る者なのか?資源と技術を解放したとして、その先に待つのは、秩序か?それとも混沌か?」
「それを決めるのは、人類の意志だ!」
「意志か。」
ルシウスの機体が、一瞬の間を置いて動き出す。
「意志だけでは、未来は創れない。意志を形にする力こそが、未来を築くのだ。力なき者に、未来を選ぶ資格はない。」
テロリストが叫ぶ。
「資格だと!?人類には、その選択をする権利がある!」
ルシウスの声が、冷たい鋼のように響く。
「権利とは、力によって初めて成される。」
黒銀の機体が、スラスターを全開にする。
「力なき者が技術を握れば、それは破壊となる。お前たちの掲げる理想は、未成熟な夢想にすぎない。」
黒銀の機体が、静かに右腕を掲げる。
「見せようではないか。」
「知性が導く、真なる未来を。」
青白い光が、ルシウスの機体全体を包み込む。
「見るがいい。」
「人類が紡いだ叡智の極みを。」
「そして進化を促す、蒼き燈火を──。」
その言葉と共に、黒銀の機体が光を放つ。全身が青白い輝きに包まれ、宇宙アリーナの戦場を支配するかのような存在感を示す。
"QUAD LUNAR DRIVE: INITIATING PRIMARY SEQUENCE."
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