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鋼月の軌跡  作者: チョコレ
第三章 黒銀の断罪機
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(37)虚構裁断

 無重力の闇の中で対峙する二機。漆黒の機体が放つ青白い輝きと、灰色の巨影が纏う冷たい光。沈黙を破ったのは、敵の通信だった。


「ルナヴァルド社──お前たちの支配は終わる。」

 低く抑えられた声には、威圧と確信が滲む。


「ルナリウムの恩恵は、全人類のものだ。だが、お前たちはその光を閉ざし、月に築いた王国の玉座に座り続けている。」


 灰色の巨体がスラスターを吹かし、じわじわと前進する。

「貴様らの手から、ルナリウムを解き放つ。」


「──愚かな。」


 ルシウスの声は、冷たい闇の中に鋭く響いた。

「光を手にする者が、それを操る術を持たねば──それはただの幻影にすぎない。」


 敵の機体がわずかに揺れる。


「何?」


「お前たちは、ルナリウムを地球に戻すという。ならば問おう──その力を、誰が管理する?」


「それを決めるのは、お前たちではない!」

 青白いビームキャノンが輝き、戦場を照らす。


「ルナリウムが地球にもたらされれば、人類は自らの意志で選択できる!貴様らの独占が続く限り、その未来は永遠に閉ざされたままだ!」


 ルシウスは静かに笑う。

「未来とは、ただ与えられるものではない。掴む者が、その形を決める。」


「独占は未来ではない!」

 敵機がスラスターを吹かし、距離を詰める。


「ならば、お前たちは何を持って未来を築く?制御なき力が、どれほどの災厄を生むか──知らぬわけではあるまい?」


 黒銀の機体が、無音のまま姿勢を変える。

「ルナドライブもまた、お前たちが封じ込めた技術の一つだ!」


 テロリストの声が鋭さを増す。

「月の資源を封じ、技術までも秘匿する――"独占"こそが、人類を停滞させる元凶だ!」


 ルシウスの声は、氷の刃のように鋭く響く。

「技術とは、ただ触れる者のためにあるものではない。それを鍛え、理解し、正しく用いる者の手にあってこそ──進歩を生む。」


「お前たちは"人類のため"と嘯きながら、その実、自らの王国を維持するために資源と技術を封じ込めているだけだ!」


 ルシウスは微かに肩をすくめる。

「ならば問おう──お前たちは、それを管理するに足る者なのか?資源と技術を解放したとして、その先に待つのは、秩序か?それとも混沌か?」


「それを決めるのは、人類の意志だ!」


「意志か。」

 ルシウスの機体が、一瞬の間を置いて動き出す。


「意志だけでは、未来は創れない。意志を形にする力こそが、未来を築くのだ。力なき者に、未来を選ぶ資格はない。」


 テロリストが叫ぶ。

「資格だと!?人類には、その選択をする権利がある!」


 ルシウスの声が、冷たい鋼のように響く。

「権利とは、力によって初めて成される。」


 黒銀の機体が、スラスターを全開にする。

「力なき者が技術を握れば、それは破壊となる。お前たちの掲げる理想は、未成熟な夢想にすぎない。」


 黒銀の機体が、静かに右腕を掲げる。

「見せようではないか。」

「知性が導く、真なる未来を。」


 青白い光が、ルシウスの機体全体を包み込む。


「見るがいい。」

「人類が紡いだ叡智の極みを。」

「そして進化を促す、蒼き燈火を──。」


 その言葉と共に、黒銀の機体が光を放つ。全身が青白い輝きに包まれ、宇宙アリーナの戦場を支配するかのような存在感を示す。


 "QUAD LUNAR DRIVE: INITIATING PRIMARY SEQUENCE."

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