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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第五章 機械仕掛けの神
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相対するは神の力

『私の子ども達と仲良くしてくれてありがとう



             ――――死ね。』







剣が、振り下ろされた。





走馬灯のように、今までの出来事が思い返される。


トラックに撥ねられたと思ったら、異世界に転生していた事。


ヴォルカニクスと和解し、魔結晶を探しに行った事。


ヒナと出会い、戦い、そして共に旅をするようになった事。


教会でシスター達と出会った事。


グランディアへ行く途中の船で、エメリア達と出会い、船が難破した事。


龍の棲む島でドラゴンに食べられかけ、巫女であるユユとも一緒に島を出た事。


グランディアで騎士団の面々と出会い、風俗でバトルした事。


そこでサルガタナスと出会い、その後魔王とも出会ってしまった事。


魔王の話を聞き、学院に編入し、トーラス達と出会った事……。



ほんの数ヶ月で、色々な事がありすぎた。


転生前の人生30年よりも濃いんじゃないかと思うほどだ。


時間がゆっくり進むように感じる。振り下ろされる剣は、俺の頭を確実に捉え――、




それと同時に、俺の手は動いていた。





「……えっ?」




『……何!?』



その場にいた全員が、驚いた顔で俺を見ていた。


いや、一人だけ、不敵な笑みを浮かべる少女。




「つまらんぞ、人間、汝はこんな所で終わる器か?」


「……ユユ!?」



いや、違う、正確にはユユじゃない。


ユユの体を借り、喋っているその存在は。




「本来なれば我が手を貸す事はない。然しな、こやつは流石にイレギュラーが過ぎる。

汝に少しくらい加担するのも『力』の努めよ」



「ありがとう……!」



力が、漲る。

先ほどまで圧倒的な存在だった所長……いや、今となっては完全に同化しつつある機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナに向き直る。

これでやっと、対等な存在という事だ。



『解せぬ!なんだその力は!貴様も転生者だとは知っているが……そんな力は聞いていないぞ!』


「当たり前だよ。俺だって知らないからな!」


『何を言っている!?』



振り下ろされた光の剣を打ち払い、逆に所長に一太刀浴びせる。


原点回帰オリジン・リグレッションを付け忘れたただの斬撃だが、確実に効いているようだ。



『グッ……この私に攻撃を……!?』


「お前の思想が、行動が……正しいか、今はもはやどうでもいい!俺は個人的な私怨によって、お前を打ちのめす!」


『貴様、それが転生して言うセリフか……!?』



所長の気持ちもわかる。本来ならばもっとこう―――、違う言葉のやりとりもあったはずだ。


しかし今の俺に言葉などない、ただあるのは無力さと、やりきれなさ―――、それだけだ。


そんな感情をどうすればいい?ただ、目の前の相手にぶつける他、俺は解消の仕方を知らない。



「おおおおおおっ!!!」



とにかく攻撃を受けようがお構いなしに、所長を滅多切りにする。


もちろん、今までの敵のように、一撃で両断というわけにはいかないが、

確実にダメージが蓄積されていっているのがわかる。


ここにきて、随分と時間が経ったおかげで「魔力の流れ」が少しずつわかるようになり、


所長、いや、機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナの体から魔力がもれ出ているのがわかる。




「すごい攻防……私達じゃ足手まといかも……。お兄ちゃん!とりあえず強化魔術付与するね!」


「近づくことすらできないな……魔力で吹き飛ばされそうだ」


「なら私達は、その間に魔力供給源となりそうな……施設を破壊すればいいのでは?」



ドロシー達の考えは正しいはずだ。


こいつは確かに召喚された、召喚はされたが―――、この強大な力、維持のみでも魔力を使い続けるはず。


ならば核融合炉……は壊すと危ないから、供給ポンプとか制御機構を破壊してくれれば!



「皆!その通りだ!俺がこいつを抑える!その間に制御機構や、供給系統を破壊してくれ!

核融合炉自体はあんまり攻撃しないほうがいい!爆発したらここにいる全員が吹っ飛ぶ!」



「わかったわ!じゃあやることはさっきと同じね?」


「決まり……ね……」



『ヌゥ……そうはさせん!集え!!』



所長が苦しみながらも声を張り上げると、どこからともなく赤装束達がやってくる。



「お呼びですか、所長!」


『残党どもを片付けろ!こいつらは新たな時代にふさわしくない』


「御意!」



ここに着て新たな赤装束―――というより、道中で倒したのがほんの一部だったのかもしれない。



大広間にて、各地で戦闘が始まる。



「……『魅了チャーム』!『困惑コンフューズ』!『昏睡ディープスリープ』!」



だが、そこはヒナ、格が違った。


今でこそ力を手にし、強くなった俺だが、そもそも所長以外の相手ならばヒナをなんとかしないと戦闘にさえ入れないのだ。



「なんだコイツ、強すぎる……!」


「強化外装を使うぞ!ウっ……!」


「この……うわっ……!」



ズルじゃん……。




『貴様ら……、貴様らァァァッ!!調子に乗るなよ……!世界を導くのは、この私だッ――!!』



完全に機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナと一体化した所長が、体中から青いエネルギーを放出する。


すると、昏睡していた赤装束たちが次々と起き上がり、襲い掛かってくる!



「これは……!」



流石のヒナも改めて警戒態勢に入り、一人一人と向き合い、

格闘を含めた戦闘に入る。



『これが我が【強制力】である!!機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナはその性質を、物事の方向性を捻じ曲げ、着地させる事に持つ!

我が忠実なる研究員諸君は、君らを打ち滅ぼすまで何度でも立ち上がる!』



運命や因果に干渉するタイプの能力らしい。

先ほどまでイケイケだったとはいえ、これに勝てるのか?


ちらり、とユユ(神の力入り)を見る。




「……そう不安がるな。運命や因果には元々逆らえぬ。ここで終わるのであれば、ここは元々そういう世界だったという事だ」



そうか!なら安心……じゃないな!



「ユユ……じゃなくて神様?何か方法はないのか!」


「神様と呼ばれるのは違和感があるが……そうさな、アイツに勝てるのであればそれこそ個人の力ではなく……、

友情とか、気持ちとか、そういうものだろうな」


「いや感情論の話は今してなくて……うわっ!?」



突然ビームがうしろから飛んでくる。思わずユユをかばって受けたが、普段の俺なら消し飛ばされていたかもしれない。



『ウィード・ローツレス!こそこそと逃げ回るのが貴様の怒りか!来るが良い!私は逃げも隠れもせん!』


「くっそ新たな力を発現したからってイキりやがって……!」



しかし事実、こちらが神の力一手に頼りきりで、ほかに良い手がないのは確かだ。


今一番動ける自分が、なんとか所長の動きを止めるしかない。



「言われ……なくともッ!」


勢いよく助走をつけ、その勢いで斬り付ける。一瞬で修復されてしまうので見た目には見えないが、

魔力量が確実に減少していっている。


「所長さえ抑えれば!あとは皆が核融合炉を止めてくれる……!」


『そう簡単にはいかせんぞ!』



赤装束と別に機械兵まで登場する。どこまでこの部屋に防備を割いたというんだ。



「ごめんウィード君!どんどん数が増えて……!これじゃあ動けない!」


「お兄ちゃんごめんなさい~!」



あれだけ圧倒的な強さを見せ付けていたヒナも防戦に回ってしまっていた。


やはり、因果干渉系の能力である機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナの力によって、

特殊強化された兵達はそう簡単な相手ではないらしい。



「ジリ貧か……!?」


『君達もいずれ……魔力炉の材料にしてあげよう』


「お前、まさか……!」



まさかこいつ、人間まで材料にして―――、




「この、悪の権化がッ!」


『科学の発展には、多少の犠牲は必要だ』


「そのセリフは、現代で聞き飽きた!もうここでは必要ないッ!」



――と、格好良く啖呵を切ったものの、どんどんこちらの兵力が削られていくのがわかる。

なんとか状況を立て直せないものか。


機械仕掛けの神デウス・エクス・マキナは、更なるステージに到達する……!』


「まだあるっていうのか……!?」



嘘だろう、そもそも召喚する事自体が高難易度の極みだったはず。

ここから更に強化されるなんて、神の力を借りてる俺が言うのもなんだがちょっとしたズルだろう。


しかし相手のそれは決して冗談などではないようで、青白い光と共に魔力が集まってゆく―――。

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