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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第一章 ロリサキュバスと出会うまで
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竜人族と行く、ぶらり魔結晶探しの旅


異世界に来て激しく痛感した事の一つとして、「現代はめちゃくちゃ快適だった」というものがある。


いや、気候こそこちらの方が温暖で良いのだが、なにぶん道具といった文化は一部旧時代的なもので、

この「馬車」……いや、馬車と言っていいのかは怪しいこのサラマンダー車……?もその一つだ。



「はは、腰が痛いか。なあに、じきに慣れる」


隣に座るのは『魔人十傑』が一人『煉獄のヴォルカニクス』いきなりボスの中でも強いヤツが出てきてしまったと思ったが、

色々あって今は彼と魔結晶探しの旅に出ている。



彼は強靭な肉体をしているから平気かもしれないが、俺はこの前まで何でもないフリーターだったわけで。

強化の加護がかかったところで靴擦れとか腰痛めたりとかは避ける術を持たないのだ……。



「目的地までは……うむ、おそらく馬車で三日程か、途中別の街によって補充をしよう」


「補充って……まさか人間を攫おうとか」


「それをしないためにお前が来ているのではないのか……?無論、人間であるお前に遣いとして行ってもらう」


「それが無難か」




「……むっ!」



ヴォルカニクスの目がぎろりと光る。その瞬間、いきなり馬車の速度がおちる。



「うぉっとっと!?」


思わずバランスを崩し横に倒れる。痛い。


「外に出ろ来訪者。敵だ」


「敵?」



馬車から出るとそこには、狂犬らしき姿をしたものや、スライムのような液状など、いくつかの魔物が見えた。


「待ってくれ師団長さん、彼らも魔物、つまり魔王軍では……?」


「いや?魔王軍は現魔王に使える軍人と、その配下である城下民達の事を指す。こいつらのような野良は違う。

それに――」



「グガァアウッ!!」



襲い掛かる狂犬の魔物を切り伏せながら、言葉を続ける。



「上官に逆らう様な奴は、たとえ部下でも不要だ。この場で始末し、我々の夕食となってもらおう」




考え方があまりにもシビアすぎる。


これが異世界での常識って奴なのか。ていうか、食べるのかこれ。



「ウルフ種はあまり美味くはないがな。栄養にはなる」


「ええ……」



正直気乗りしない。






―――――




戦闘はそう時間がかからなかった。


結局ヴォルカニクスは『煉獄』の二つ名によって使える職能を一切使わなかったが、

それでも他の兵達よりは段違いに強かった。



俺はというと、相変わらず剣の使い方は下手っぴが郡を抜いており、

周囲の竜人やヴォルカニクスにサポートしてもらいつつ、職能頼りの戦いをする事で、なんとか切り抜けた。



「相変わらず、宝の持ち腐れだな」



俺の戦いぶりを見て、はっきりと言う。

これはおそらく、侮蔑や煽りではなく、単純に残念がっているのだろう。表情がそう物語っている。



「お前さえよければ、この私が剣の稽古をつけてやろうか」


「ええっ!?いいんですか!?」



思わず敬語になる。


今いる場所……地図によると『ドロイア地域』と呼ばれているところだが、

ここは魔結晶の産地である『ドロイア山脈』が近いからそう呼ばれている。


そしてここは魔結晶の産地が近いがゆえに「魔物や、住む人々のレベルが高い」という事だ。


その中で戦いを繰り広げている様をずっと見ていたが、ヴォルカニクスはやはり格が違う。

『魔人十傑』がどういうものかは詳しくないが、流石にやはり魔王軍で幹部を務め、その二つ名に恥じぬ強さを持っているようだ。



そんなヴォルカニクスに教えを請えるのであれば、願ったり叶ったりだ。

今後の異世界生活にて絶対に役に立つだろう。


「でも、そんな事をしたら、そっちとしてはあんまり得がないんじゃ……」


「お前の言う通りだ……。実際、この行程が終わればお前とは敵対する事もあるだろう。しかしな」



ヴォルカニクスの目はどこか遠いところを見ている。



「まず、おそらく魔結晶探索ではかなりの危険がある。お前に頼らなければ仲間に死人を出してしまうかもしれない」



確かに。徐々に強力になってくる魔物たちのレベルを鑑みれば、今の竜人族達では少し心もとない。

先ほどの戦闘時も、いくつか苦戦しているところが見受けられた。全体のレベルは高いのだろうが、

集団戦が苦手なのだろうか。



「それから……この行程は里で帰りを待つ女達のためのものだ。中には我が妻もいる。

その行程に力を貸してくれるお前を敵として無碍に扱うことは、竜人族としての恥だ」



武人だ。


自分の身内のために体を張ってくれる奴は、たとえ敵であっても、いずれ自分に牙を向くかもしれない相手でも、

礼儀を持って接する……。


この手のキャラは絶対強いから今後なるべく敵対しないようにしよう。そういえば本来の能力一つも使ってない。

鬼かよ。



「ああ、あと、本件は一応十傑として軍本部に報告もするので、お前に刺客が送られると思うぞ。

その時こんな無様な剣では、相対する魔族も不満だろう」


「待って!?ちょっと待って!?報告するの!?」


「ん?当たり前だろう。数百年に一人とも言われている来訪者の存在だぞ。これを報告せず何を報告するというんだ」


「いやちょっとそこはなんかこうよしみで秘密にとか……」


「はは、何を言っている。信頼するお前だからこそ、こうして報告することも話し、

その上で剣の技術をつけてもらって、真剣に戦って欲しいのだ。確かに十傑の中には卑劣極まりない外道もいるが、

お前の職能ならなんとかできるだろう。期待しているぞ」



期待しないでくれ。

俺の今の能力は大体把握できた。それゆえに、「この能力の発動を防ぐ」みたいな術式一発でやられることも理解している。

おそらく職能なしでは魔人十傑相手なら一分ももたないだろう。



そうして、サラマンダーの休憩がてら取られた時間で、

俺に対する剣の稽古が始まった。



――――



結論から言うと、俺はめちゃくちゃ弱い。


先ほどあまりレベルが高くないと評した竜人族にさえ、正直まったく勝てないレベルだった。

前回の戦闘で善戦したのはやはり職能に頼ったところが大きかったのだろう。


今回の訓練では木の棒を使って練習しているため、俺の攻撃はまったくもって威力が乗っていない。

俺の『聖騎士』による職能は『破邪』つまり外敵を排除するためのものであり、味方と訓練するという前提では全く発揮されないらしい。



「ギギーッ!今回も俺様の勝ちだな!」



こいつはガルズ。竜騎兵団の中ではすこし珍しい、人間語が使える奴だ。

やはり知能の高さからか、他の竜人達よりちょっと立ち回りが上手い。ちょっととは言ったが俺の10倍くらいは上手い。



「ギッ、ギッ。人間よ、お前どうしても引け腰だな。あれだけ元気に戦っていた奴とは思えん」


「戦闘経験とかないからな……」


「ギッ!それは驚きだ!ならいいじゃあねえか!はじめたてでこれだけできりゃあ、今後が期待って奴だ!」



竜人族は人間の言葉であらわすと「ガーガー」とか「ギーギー」と言っているが、

これはなんというか、爬虫類とかの威嚇に近い音感な感じがする。声を出しているというか……喉を鳴らしている感じ?

実際耳にしないとなかなか表現し辛いものがある。


彼らは音の高さ、長さ等で言葉を理解しているらしい。そもそもの言語体系があまりに違うはずなのに、

どうやって人間の言葉を理解しているのか聞いたところ、「人間族にできるのだから竜人族にはできるだろう」という、

まったく参考にならない回答が帰ってきた。


そして数時間ほどの訓練を経て、俺がへとへとになった頃合を見て、出発する。

竜人族たちは全く疲れていないようだ。そのタフさはどこから来ているのか……。

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