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30歳童貞聖騎士おじさんVSドスケベロリサキュバス  作者: 御園蟹太郎
第二章 目指すは王都グランディア
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ほんわかシスターと修道院フィルキオン

無事に乗馬をマスターした俺は、ついに馬車の運転をするまで上達したのであった……!



「はいよーっ!シルバーッ!」


「シルバー?そういう名前だっけ……?」


「ああごめん、気にしないで……」



預けていた信頼金をすべて降ろしたところまでは良かったものの、

流石に金額も魔結晶も多く、長旅には不向き、と感じたのでいっそのこと馬車を買うことで事なきを得た。

売ってるもんなんだなあ……意外と。



「あ、見えてきたね。あれが港町……えっと、確かリーサイド、みたいな名前だったと思う」


「結構うろ覚えなのな」


「うん、私の記憶も結構雑だからね……200年くらい前にきたっけ……?300年だっけ……?」



流石2000年生きてると時間間隔が違うな……。



とにかく、このリーサイドの定期便に乗れば、王都まですぐという事らしい。

まあすぐと言ってもどうせ一週間くらいかかるんだろうな。もうこの世界の移動に関する手間は理解したからな。

近いって言われて二日三日かかったこと忘れてないからな。旅行じゃねぇかちょっとした……。




――――




「3ヶ月後!?」


「お、おうどうした兄ちゃん……何をそんなにびっくりしてるんだ?」


「いや、次の定期便が3ヵ月後って……」


「次の奴は2週間後だが、それはもういっぱいだからなあ。先着順だ。王都に行きてぇのは兄ちゃんだけじゃあねえってことだな」


「えー……」


「はは!まあこの町も美味いモンがたくさんある!しばらく金を落としていってくれや!」


「わかりました……」




――いきなり出鼻を挫かれた。まさか定期便が大人気で、3ヶ月前から予約しないと乗れないなんて知るかよ……。

その情報早く欲しかったよ……。



「ごめんね?お兄ちゃん」


「ああ、ヒナは悪くないんだけど……、移動が面倒とは思っていたけどここまでとは」


「んー……お兄ちゃんの世界が便利すぎたんじゃないかなあ」


「確かに……」




飛行機や新幹線がどれだけ便利な乗り物だったのか痛感している……。

都内に住んでたのも大きいんだろうな……世界各国どこでもすぐいけたよ……。



気を取り直し、宿を取りに行く。

今からここに三ヶ月滞在する事になるので、生活用品一式をそろえる必要があるな……。




「すみません、宿を探しているんですけど……」


「おお、この時期にかい?……ありゃ埋まってるな。すまんがもう何日か待ってくれ」


「えっ、空いてないんですか!?」


「ん?おお。今丁度忙しい時期だからな。2週間もすれば次の定期便だ。それまで待ってくれれば」


「2週間宿無し……!?」


「他の宿屋も今は空いてないんじゃないか……?ちょっと時期が悪いなあ」


「わ、わかりました……」




マジか!?


定期便もないし宿もなし……、どこか近くで野宿!?流石にごめんだ……!


こっちの世界に着てから服は基本着っぱなしという事実に気が付いて、

清潔感が割となく、今もなんなら若干自分の匂いを気にするくらいだ……!


一応、大衆浴場が毎朝開かれるので、それに入ればなんとかなる。

いや、この世界が浴場がある感じの世界観でよかったよ、本当に……。




「宿無しかあ……とりあえず、色々あたってみる?」


「だな、どこか空いているところがあるかもしれない……!」



流石に宿無しはごめんだ。多少ボロくてもなんでもいい、俺は泊まる場所を探す……!!




「あのう」



ふと、声をかけられる。美しい金髪の……シスターだ。

服装から一見してわかるほどのシスターだ。



「あ、俺……ですか?」



思わずおっかなびっくりな態度をしてしまう。

また何か罠か……?いや、この女性から感じる全体的なほんわかした雰囲気はおそらく本物。

人を騙そうという気持ちが全く見えてこない。


念のためちらりとヒナの顔を見る。うむ。大丈夫のようだ。



「ああすみません……あの、怪しいものではなくてですね~……」


「大丈夫です、今はっきりわかりました」


「へっ、そうなんですか……ならよかったです?」



なんだろうこのびっくりするくらい緩やかなムードは。

俺一応先日まで命のやりとりしまくってきたところなんだけど



「ええと……お困りの様子だったので……。もしかして、宿がなかったとか……」


「その通りです!実は宿屋ですとかそういうオチですか!?」


「お、おち……?えっと、宿屋ではないんですが――」





――――




「修道院……?」


「はい、元々は私達のような修道士のために設けられた施設なんですけど……、

最近はほとんど孤児院としての側面が強いですね」



たしかに、そこらじゅうを子供が走り回っている。とてもうるさい。元気なのは何よりだが……。



「孤児院にしては……ちゃんとご飯食べさせられてるみたいね」


「えっ?そういう感じなのか?」


「んー……私も人間の文化にそこまで詳しいものじゃないけど、だいたいこういう施設って栄養不足になることが多いらしいの。

なんせ、寄付金くらいしか収入源がないって聞くし……」



それはあまり聞きたくなかった事実だな……ここは幸せなほうなのか?それは良い事だが……。




「ええと、お客様向けの部屋が今空いてますので……是非、使ってください」


「ありがとうございます。とりあえずお金を払わせてください」


「ええ!?いいです、いいです……!あの、困っている人を助けるのが私の使命ですので」


「いいから払わせてください!払わせろ!!」


「ひぇ……」




その時、扉の近くから、大きな音がする。



「シスター・ルシエラ!大丈夫ですか!?」



「あっ、おかえりなさい」



血相を変えて走ってきた金髪の少年とは裏腹に、ほんわかした表情でお迎えするシスター。



「……一瞬、この男に何かをされていたかと思ったのですが、気のせいでしたか」



はーもう昔からこういう所あるんだよなあこの人はもう畜生恥ずかしいわ~みたいな表情をする少年。

年齢は16~17くらいだろうか。短い金髪が非常にかっこいい。押しも押されもせぬイケメンって奴だ。



「シスター、まさかまた……困っている人を招きいれたんじゃないでしょうね……?」



ゴゴゴゴ、という効果音が聞こえてきそうなくらい怒っている少年。

腰に携えた刀といい、筋肉質な体といい、かなり強そうな事がわかる。外見よりもしっかりしているようだ。



「だ、だってぇ……この人たちが……困ってそうだったし……いい人そうだったから……いいかなって」


「あのねぇ……はあ。わかりましたよ。確かに、シスターの人を見る目に関しては僕も認めています」


「そうなの、だってこの人……女神のご加護を受けているんですよ?」


「ええっ!?女神のご加護を……!?……シスター、調子に乗って冗談を言うのは」



「流石っすね、どうやって分かったんです……?」


「ほら!」


「ええ!?」



向こうも当てておいて驚いているみたいだが、こちらも素直に驚きだ。

確かに何度か加護の事に関してはバレているものの、今のところ初見で分かったのはヴォルカニクスとヒナだけ。

つまり、魔人十傑のみという事だ。他は一切分かってない様子だった。



「これが敬虔なるシスターのちからなのです!」



えへん、と胸を張るシスター、ルシエラさんというらしい。

でかい。このおっぱいで敬虔なるシスターなのか……?このおっぱいで……?



おっぱいをひたすら見つめているとグッ!と足を踏まれた。加護が発動しない絶妙な痛さだ……!



「はあ。すみません、旅の方。内輪の変な揉め事に付き合わせてしまって」


「いえいえ、楽しかったので」


「は、はあ……?シスターより紹介があったかもしれませんが、ここは修道院フィルキオン、

かの有名なフィルキオン様によって建てられた修道院です。最も、今では孤児院のような場所ですが……」



その説明はさっき聞いたような。名前は初めてか。



「おそらくシスターが困っているあなた方を引っ張ってきたのでしょう。御代はいりません。

しばらくの間、ここを仮の宿として過ごして下さい。詳しい事情は聞きませんが、女神の寵愛を受けし聖人とあっては、

粗末な扱いは修道士としての恥。どうぞごゆるりとお過ごしください」


「ありがとうございます。俺は…………えっと、ウィード・ローツレス。こっちは仲間のヒナです」


「よろしくお願いします……」



ぺこり、と控えめに頭を下げるヒナ。確かにここで目立つのはまずい。

修道院といえばサキュバスであるヒナにとってもっとも敵地なのではないだろうか。ダメージを受けてないといいけど。




「よろしくね、ウィードさん、ヒナちゃん……あれ?ヒナちゃん、貴方」



そっ……とヒナのローブをはずし、何かに気づくシスター・ルシエラ。


まずい、流石に本職はごまかせないか……!?




「…………とっても、可愛いのね!?見て!見てユーリイ、この子、とっても美しいわ!」



ヒナの可愛さをひたすら讃えるシスター。だろう?だろう!?うちのヒナちゃんは可愛いだろう!

少年はユーリイか、どこかで聞いたことのあるような名前だなあ……まあ、ファンタジーにはよく出てくるか。



「確かに、美しい外見をしていますね……まるで人ならざるものような……」



ぎくっ


お前ら何でそんな鋭いんだ……!?流石にここで悪魔とバレたら宿を失う、頼む、バレないでくれ……!



「あっ、ごめんねヒナちゃん……急に騒いじゃって。あんまりにも可愛かったから」


「え、えっと、大丈夫です……」



小さい女の子のフリをするヒナかわいい……。



「あ、あとヒナちゃん悪魔だと思うから、あまり十字架とか、そういう品物には触らない方がいいわ。

ここのは効力が弱いと言っても、一応結界の中だから、体に毒かもしれないし……」




今さらっと何言ったこの人!?




「シスター、今、なんと……!?」


「聖水とか十字架とか、気をつけてね、って」


「いやその前です!」


「何か言ったかしら……」




天然か!?ダメだ、この世界に来てツッコミ役が多くなったが、ここまでの天然は初めてだ!

ヒナもびっくりして固まってるし……!



「ああ、悪魔の事?ふふっ、そりゃあ私だって、祝福を受けたシスターの一人だもの。

結界内に悪魔がいるかどうかくらいわかるわ?」


「え、えっと……いいん、ですか?悪魔を泊めちゃっても……」



「……あ、そっか、ダメなの?」


「ダメです!!」



力強く宣言するユーリイ。しかし、そこに現れたのは……、


空気を読まない、小さい女の子だった!!




「あそぼ」


「え」



唐突にヒナのローブをひっぱる少女。完全に同年代だと思われたらしい。


「いや、私は、その……」


「えーっ、遊ぼうよ!マナひもやろ、マナひも!」



マナひもって何だろう……あやとりみたいなものなんだろうか?

魔力を使ってロープをつくる、みたいな……。




「はい、いってらっしゃい」



そっ、と二人を送り出すシスター。その所作はまさしく母のようで……、

思わずバブみを感じてしまう。ママ…………。



「……いいでしょ?ね?」



いたずらな微笑みと共に、上目遣いでユーリイに懇願するママ……ではなくシスター。

これにはユーリイも参ったようで、「仕方ないですね……」と、心底納得いかないけどママがそういうなら……みたいな顔でオッケーしてくれた。



「実際、聖人の貴方が連れてきた子ですし……例え悪魔でも、客人として丁寧におもてなししますよ」



さわやかな笑顔で言うユーリイ。お前本当びっくりするくらいイケメンだな……。

大丈夫?そのうち汚いおっさんに路地裏で怪しいことさせられない……?




そんなゆるっとした日常風景の最中、ふと二人の表情に緊張が走る。




「おお、今日はやけに賑わっておるね……どれ、少し茶でも頂こうか?」




小太りのおっさん……そう、つまり……なんか悪そうな奴が現れた!

二人も怪訝な表情でおっさんを見つめる……アレだろ、地主とかそういう奴だろ。



「ふふ……今月分の土地代をまだ頂いていなかったのでね?金は用意できたかな」


「す、すみません……もう少し、お待ちください!」



すがるように男に駆け寄るシスター。これはエロ同人の展開を期待していいのだろうか?



「今月分はこの前、お支払いしたはずですが……」



あくまで冷静に、それでいてふつふつと湧き出る怒りが隠せないユーリイ。

やはりまだ子供であるようだ。



「あれでは利子分にしかならん。今月から値上げをしてね……、

もう一割ほど多めに支払ってもらう事にしたよ」


「なっ……そんな話は聞いていません!」


「そりゃあそうだ。言ってないからな」




絵に描いたような展開でわくわくしていると、おっさんがシスターの尻を鷲づかみにする。



「ひゃっ……」


「貴様……ッ!」



剣を抜きかけるユーリイを、片手で制する。



「やめておけ」


「お前……一体どういう立場で」


「今暴れる事がシスターの損になる事くらいわかれ。剣を収めろ」


「ぐっ……!」



「ほう、そこの冒険者は中々話が分かるようだな……フン、まあいい。また二週間後に来る。

それまでに金は用意しておけよ。もしなければ……良い稼ぎどころを紹介してやる」



そういうと、タバコに火をつけ、去っていく小太りの男性。

明らかに地主という奴だろう。しかしながら、神聖なる修道院でこんなことやらかす奴いたんだな……。罰が当たりそう。




「シスター、大丈夫ですか!?」


「あ、うん……私は平気」



そういうが、シスターもすこしふらついている。……おそらくシスターは純潔だ。

ああいう輩の相手にも慣れていないのだろう。




「なるほど」


「……火種、だね」



ひょこ、と出てくるヒナ。遊びはもういいのだろうか。



「終わったのか」


「変なおじさんが来た時に、皆部屋に戻っちゃったよ」



なるほど。教育に悪いからか……。




「ウィードさん、さっきはありがとうございます」


「いえ、すみません、何もできずに……」


「いいんです。これは私達の問題なので……。すみません、お見苦しい所を」


「見苦しくはありませんよ、立派でした。貴方はやはり、女神によって救われるべきだ」


「……はいっ?」


「ああいえ。祈りはいつか通じますよ、みたいな?」


「はあ……」



ユーリイはというと、自分の無力さと、先ほどの軽率さを恥じてか、


拳を握り締めて下を向いている。




わかりやすくて丁度いい。

いよいよ、()()()()というわけか。

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