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その八
「――――普通あそこまでやる?」
校門前の道路で、まだ少し呼吸が乱れている田中利香が誰ともなしに尋ねた。陽はいつの間にか沈んでおり、人気のない住宅街には早くも夜の帳が降り始めている。
「もうすぐ部長会議なんだ。当然だろ」
智之はあれから教室の中を突っ切って窓から飛び降り、植え込みに着地して校門まで全力疾走するというかなりの重労働を強いられたはずなのだが、息は元より切れていない。
「あぁ、そういやぁそろそろだっけ」
「だから、なんであんたたちはそう瞬時に納得できるのよ……」
「案ずるな。君もすぐに慣れるさ」
「嫌なんだけど……」
田中利香は疲れた様子でぼそりと呟くと、深呼吸に似た深い溜め息をつく。
「そう言えば、あの剛玄って人は置いて来ちゃって良かったの?」
「あぁ。剛玄はこの後もしばらくやることがある」
「委員会にでも入ってるの?」
「いや、そうじゃない。――――後片付けと事後処理だ」
顔色一つ変えず言う智之の背後で、窓枠が歪み悲惨な姿になった二階の窓からガラスの破片がぱらぱらと落ちる。そして、どこからか鬼の黒田の怒号が聞こえた気がした。




