その四
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南館三階、三年四組の前に、その塊はあった。ふごふごと喚き暴れのたうちまわるその白い網で包まれた物体に、田中利香は見覚えがあった。というか、初めて会った時の剛田久美そのものだった。
「な?」
無表情で振り返る智之に、田中利香は溜め息を漏らす。
「こうなるって、見越してたの?」
「当然だ」
「もしかしてあんた、剛田さんがなんでダンス部止めたのか知ってたわけ?」
「古都葉乃綾の話を聞くまでは、てっきり屋上から落下し痴態を晒したために立ち直れなくなったのだと思っていた」
「……でも知ってたんだ」
「そうだ」
智之は、バツが悪そうに顔を顰める。
「まぁまぁ利香ちゃん、そう怒らずに……」
「――――ねぇ剛田さん、今の話聞いても、まだこいつのこと好き?」
「……はい」
それは酷く弱々しいか細い声だったが、田中利香の耳にははっきりと届いた。
「だったら、痩せるしかないじゃないっ!」
「え、あっ、あれ? ……そうなるか普通」
そして、田中利香の心を熱く動かしたのだった。
「あたしについて来なさいっ!」
「はっ、はい!」
言って、剛田久美は危うい足取りながら田中利香に続き階段を駆け上がっていった。
「じゃ、俺も行くとするか」
「待て。この場合俺はどうすればいい?」
「ん? 一緒に来ればいいじゃん」
世の中には、いろいろな人間がいるものだ。




