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パレット・ブックメイカー侯爵令嬢

友人のルナ・アルテミス子爵令嬢は、とても可愛らしい子ですの。

本人は平凡顔だと言っていますけどね。

まあ、それもそのはず私をはじめとしたお友達たちはとても綺麗な子が多いですもの。

ルナ様は子爵という低い身分にもかかわらず、社交界では人気のご令嬢ですの。

彼女の周りには、私やお友達たちという身分の高い子たちがいるからというのもあります。

それに、小動物を思わせる仕草や保護欲をかきたてるような子。

馬鹿な男たちを近づけたくなくて、私とお友達たちが協力して話しかけづらくしていますわ。

ですが、人は誰でも外見できない部分があるというのが誰にでもあるというのがありまして。

ルナ様は綺麗な男女を観察する趣味がありますが、その方たちに恋愛感情を全く持っていません。それどころか、「家に利益がある婚約者が欲しい」とお考えですわ。

どこの男性ですか、それ。

まあ、そのおかげで私とお友達たちはルナ様と友達になることができたのですが。

兄のウィルは、密かにルナ様に思いを寄せていて私に何度も紹介しろと言ってきます。その度に私は兄に断ります。これは、お友達たちも同様です。

例えばですが、ルナ様に綺麗な男性を紹介しようものなら、その場で却下されます。お付き合いすることに。

以前、勘違い公爵子息(美形)がルナ様に交際を申し込んだ結果、即答で断られていました。「家に利益がなさそうなので」と。

確かに、勘違い公爵子息(美形)の家はルナ様の家に利益をもたらさない家でした。

いくら格上の家だといっても、利益をもたらす家ともたらさない家がありますものね。格上の家だといっても、無条件にとはいえません。


そんなある日のこと、この国の馬鹿王子アポロ・ファタージュ様がルナ様に婚約を申し込みましたの。

王族なのに、一目惚れで子爵令嬢に婚約を申し込むとは馬鹿ですの!?

何のための身分制度かご理解なさらないの!?

呆れてものが言えませんわ。

馬鹿王子は、ルナ様と婚約すれば国から選ばれた婚約者候補たちとの婚約が解消されると思い込んでいるようですが、そうはいきません。

何のために国が選んだと思っているのでしょう。

まあ、恋愛に生きる馬鹿はこちらからお断りですけど。

王族の役目、貴族の役目をなんと思っているのでしょうか?

本当に、頭が痛くなる方ですわ。

翌日、我が家にルナ様が来られて盛大に愚痴られましたわ。

穏やかなルナ様には珍しいこと。

ですが、その気持ちも分かります。

まさか、恋愛に生きる馬鹿と婚約する羽目になるなんて思いもしませんことですものね。

ルナ様は、私とお友達たちに愚痴って落ち着いたのか「本当の愛に目覚めた。婚約解消だ」と馬鹿王子が言いそうなので、婚約を了承しようと言いましたわ。

来たときは顔色悪くしていたのですが、落ち着いたようでなによりですわ。


翌日からは、家は恐怖の館と化した。

父と母と兄の笑顔が怖いですわ。

ルナ様は、我が家のお気に入りですの。

特に、父と母はルナ様を「いずれ、家の義娘に!」と願っていたのですわ。

恐怖の館と化したのは一時的なもので、これはルナ様によって解消されましたの。

王族の婚約者としての教育を王妃様と家にルナ様が、『私たち』に協力をして欲しいと願ったからですわ。

冷静になった父と母は、「いずれ、家の義娘になるから」と教育とマナーを施しましたの。

恋愛に生きる馬鹿王子が、このままルナ様と結婚するとは思いませんものね。

まあ、兄は機嫌が悪いままですが。

それは、仕方のないこと。馬鹿王子の側近である兄は、ルナ様が馬鹿王子に会いに王城に行くたびに護衛をしなければいけませんもの。

恋い焦がれた人が、他の男に会うための護衛。何とも言えませんわね。

これには、兄に同情いたしました。


ですが、それも終りを告げました。

馬鹿王子が、ルナ様との婚約解消を言い渡したのです。

ルナ様の予想通りで、正直ホッといたしました。

子爵令嬢が王族の仲間入りなんて、無理がありますものね。

それになにより、誰よりも馬鹿王子との婚約はルナ様が一番難色を示していました。

立場をわきまえるからこそ、当り前ですよね。

馬鹿王子が次に婚約したいと言った令嬢は、アンリナ・ソル子爵令嬢。

周囲は声に出さなかったのですが、「また、子爵令嬢か」と呆れ果てましたわ。

このアンリナ・ソル子爵令嬢は、ルナ様と違って王族に入るための助力を誰にも請いませんでした。

どういうお考えなのでしょう?

来る日も来る日も、馬鹿王子とイチャイチャするだけ。

愛に生きるというのはこういうことではないと思うのですが。

馬鹿王子は、王族としての自覚がないのでしょうか?

私たち馬鹿王子の婚約者候補は、この様子に呆れて国に婚約者候補辞退を申し出ましたわ。

翌日には、馬鹿王子の新たな婚約者候補たちを選出したようですが。


これで終わりということはありません。

家の兄をルナ様の婚約者にする計画を進めなければ!

ルナ様はご自分のことを「馬鹿王子に無理やり婚約者にされた上、捨てられた傷もの」と思い込んでいられるのですが、実際はそうではありませんわ。

馬鹿王子との婚約解消を狙って、ルナ様と婚約しようと躍起になっている年頃の男性たちがいるのです。

私の『ルナ様、義妹計画』を邪魔されるわけにはいきませんわ。

幸い、ルナ様を狙う人たちの中で私の家は確実にルナ様の家に利益をもたらす家ですの。

お母様を説得したら、王妃様もついてきました。

王妃様は、お母様の親友ですの。

王妃様は、ルナ様を気に入り何かと気にかけていました。

馬鹿王子は全く気付いていなかったのですが、ルナ様と馬鹿王子の婚約破棄に王妃様は大激怒。

これには国王陛下も心底震えあがったと聞きましたわ。

少しでも、ルナ様との繋がりを作っておきたい王妃様は私の計画に乗って来ましたわ。

お母様と王妃様の必死の説得により、ルナ様とルナ様の家は兄との婚約を承諾しました。

ですが、ルナ様が嫌なら兄との婚約をさせませんでしたわよ。

ルナ様はご自分の気持ちに全く気付いている様子がありませんでしたが、はたから見ると兄と両思いでしたわ。

あの腹黒い兄のどこを好きになる要素があるのか私にはまったく分かりませんが。


ルナ様と馬鹿王子の婚約解消から一年後、ルナ様は兄と結婚しましたわ。

もちろん、私はその前に結婚して元気な男の子を生みました。

ルナ様が産んだ子は、すべて女の子。

ここに、兄の執念を感じましたわ。

もし、ルナ様が男の子を生んでいたかと思うと...いえ、考えるのはよしましょう。

まあ、私、旦那様、お父様、お母様、使用人一同が「ルナ様に女の子が授かりますように」と必死にお祈りしたのはここだけの秘密ですわ。



そんなわけで、ブックメイカー侯爵家は今日も平和ですわ。

「身分的不相応な婚約の結末」は、今話で終わりです。

読んでくださり、ありがとうございました。

少しでも楽しんでくださっていたら、嬉しいです。

『あとがき』はありません。

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