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どうやらこの11階層にいるのも、10階層と同様にゴブリンだけのようだ。たまにちょっと大きなゴブリンも現れるが、ハイゴブリンほどではない。まあどちらにしてもレベル30の勇者である俺の敵ではないのだが。

ゴブリンどもの落とす魔石を拾いながら、ユージンと共に通路を先へと進んで行く。


その間、ユージンといろいろ話をした。

ユージンはレベル40の賢者だけあって、実際は相当な強さだ。もし彼が本気を出せば、今の俺なんて簡単に負けてしまうだろう。


「しかし、私は戦闘は止められておりまして。」


「なんでだ?」


「ある山で、賢者の書の第八章《滅びの輪舞曲ロンド―響け絶望の鐘―》の朗読の練習をしていたところ、その山の全ての生命体が死に絶えてしまいまして。あやうく私も一緒に死ぬところでしたよ。あっはっは。」


…あの北の死の山はお前のせいだったのかよ。

ある日突然、ぺんぺん草ひとつ生えなくなったとのことだぞ。その元凶が目の前で落ち着き払って笑っている。


敵に回せば恐ろしい、味方につけても全滅エンドもあるってことか。しかしその破壊力…ドラゴン攻略には役に立つかもしれない。よし、ここはひとつ友達になっておかねば!


「なあユージン。旅は好きか?良ければ一緒に旅をしてみないか?」


「ふむ…、実は私ムユツミから出たことがないのですよ。旅、ですか………」


思案するユージン。まあ今無理やり押して警戒されたら元も子もないか。ダンジョンを出てからあらためて相談してみよう。



「あ、エイトさん。左手に扉があるようですよ?開けてみます?」


これはアドの選択肢か!と、身構えたが脳内にアドの声は聞こえない。普通にダンジョンのイベントなのか?


そのドアにゆっくりと近づき開けようとノブを回した…

開かない。ガチャガチャしてみても、押しても引いても開かない。


もしやこれは呪われた部屋なのか!?ユージンの顔にも緊張が走る。俺は剣に手を掛け身構えた。

すると突然、場違いな穏やかな声が聞こえてきた。


「入ってます。もうちょっと待ってください。」


は……トイレか?ここ?


ユージンが「なるほど。11階層のBエリア、ここにお手洗いがある……と。」と、大真面目にダンジョンマップにさらさら書き込んでいる。

いやまあ、そもそもギルドからの依頼内容がダンジョン内の探索だから間違っちゃいないんだが。


「……なんか今どっと疲れたわ……」


緊張が解けた俺はがっくりと肩を落とすのだった。

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