第69話 強さの形
王城・円形評議室。
朝。
昨夜の緊張が、まだ空気に残っている。
武装蜂起に関わった者たちは、拘束されたまま整列している。
中心に、カイル・ローディン。
顔色は悪い。
だが、目は逃げていない。
評議には、貴族代表、商人代表、騎士団幹部も同席している。
公開の場だ。
隠さない。
ルーカスが立つ。
「昨夜、王城は内から揺れた」
静かな声。
「だが血は流れなかった」
沈黙。
「副長カイル・ローディン」
「はい」
「なぜ剣を向けた」
短い問い。
言い訳の余地はない。
「……焦りました」
カイルは正直に言う。
「帝国は信用できない」
「また牙を向ける」
「その前に、王国が強いと示すべきだと」
「誰かに命じられたか」
「いいえ」
真実だ。
「帝国の武器は受け取りました」
「だが、判断は自分です」
ざわめきが広がる。
責任を逃れない。
アルベルトが静かに見ている。
ルーカスは続ける。
「私は強くない」
その言葉に、視線が集まる。
「だが、強くあろうとはしている」
「副長」
「あなたの剣は、外に向くべきだ」
沈黙。
「内に向ければ、国家は裂ける」
カイルの拳が震える。
「……申し訳ありません」
頭を下げる。
長い沈黙。
全員が、処罰を待っている。
ルーカスは言う。
「副長カイルを、三か月の謹慎処分とする」
ざわめき。
軽い。
軽すぎる。
「その間、国境守備の再編計画を立案せよ」
全員が目を見開く。
「……は?」
カイルが顔を上げる。
「あなたの焦りは、無意味ではない」
「だが方法を誤った」
「ならば、方法を学べ」
静かな声。
「強さとは、暴発ではない」
「準備だ」
アルベルトが一歩前に出る。
「俺が監督する」
短い言葉。
カイルの目が揺れる。
尊敬する殿下が、処罰ではなく教育を選んだ。
「殿下……」
「守りたいのだろう」
「なら学べ」
沈黙。
カイルは深く頭を下げる。
「……はい」
涙が落ちる。
若い騎士たちも同様に処分が下される。
だが誰も追放されない。
評議が終わる。
人々が退室する。
最後に残るのは、兄弟とレティシア。
「甘いか」
アルベルトが問う。
「いいえ」
レティシアが先に答える。
「強いですわ」
ルーカスは静かに言う。
「恐れがある限り、暴発は起こる」
「ならば恐れを消す」
「罰ではなく、役割で」
窓の外。
帝国方面の空は、静かだ。
外圧は去りつつある。
内部も、整った。
「均衡は」
ルーカスが小さく呟く。
「揺れ続ける」
「だが」
「揺れを恐れない」
アルベルトが短く笑う。
「王らしくなったな」
「兄上がいるからです」
「違う」
「お前が立ったからだ」
レティシアは静かに微笑む。
王国は、内と外の試練を越えた。
強さとは何か。
それは。
剣を振るうことではない。
剣を預かること。
守ること。
そして、戻すこと。
王城の旗が、朝日に照らされる。
第6章――完。
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