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断罪された悪役令嬢は契約で国を買い取る ~支配ではなく市場で無双します~  作者: 朝凪ことは


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第48話 静かな会談

 王城・北翼の小会議室。


 豪奢ではない。

 だが格式はある。


 窓から差す光が、静かに室内を照らしていた。


 先に入室していたのは、ルーカス。


 机の上には、統制令後の市場報告書。


 触媒流通量、減少。

 取引停滞、拡大。

 地下取引の兆候。


「……予想通り」


 小さく呟く。


 扉が開く。


「お待たせいたしました、第二王子殿下」


 レティシアが入室する。


 互いに一礼。


 形式は整っている。


 だが、空気は張り詰めていた。


「お会いするのは初めてですね」


 ルーカスが穏やかに言う。


「ええ、正式には」


 レティシアは微笑む。


「学院では、遠目に拝見しておりました」


 わずかに、ルーカスの口元が緩む。


「私もです」


 沈黙。


 探り合いではない。


 測り合い。


「統制令について」


 ルーカスが切り出す。


「率直なご意見を」


「短期的には安定します」


 即答。


「ですが、供給は細ります」


「理由は」


「利益が出なければ、誰も流通させません」


 静かな説明。


 感情はない。


 構造だけ。


「地下取引は」


「拡大します」


 ルーカスは頷く。


 彼も分かっている。


「では、どうすべきだと」


「価格は市場に任せるべきです」


「国家が関与せず?」


「関与は必要です」


 レティシアは首を振る。


「ですが“固定”ではなく“調整”です」


 その言葉に、ルーカスの視線がわずかに鋭くなる。


「調整」


「供給の透明化」

「備蓄公開」

「段階的介入」


「強く握るのではなく、支える」


 沈黙。


 同じ思想。


 だが、互いに確信はまだない。


「兄上は、国家の軸を示そうとしている」


 ルーカスが静かに言う。


「ええ」


「あなたは、それを否定しますか」


 問い。


 慎重だ。


「いいえ」


 レティシアは即答する。


「軸は必要です」


 そして。


「ですが、軸は硬すぎれば折れます」


 空気が、わずかに変わる。


 ルーカスは、ゆっくり椅子にもたれる。


「あなたは、王権をどう考えますか」


 踏み込んだ質問。


「王は」


 レティシアは、視線を逸らさない。


「市場でも信仰でもなく、均衡を保つ存在」


「支配者ではなく?」


「調整者」


 完全に一致。


 だが、まだ言葉にしない。


「あなたは王位を望みますか」


 レティシアが逆に問う。


 一瞬、静寂。


 ルーカスは、正直に答える。


「望んではいません」


「ですが」


「必要とされるなら、逃げません」


 その言葉は、重い。


 レティシアは、わずかに目を細める。


 軽くない。


 覚悟がある。


「統制令は、長くは持ちません」


 彼女は言う。


「揺れは、必ず戻ります」


「その時」


 ルーカスが問う。


「あなたは動きますか」


「国家が壊れるなら」


 一拍。


「動きます」


 視線が交わる。


 敵ではない。


 だが同盟でもない。


 まだ。


 扉の外。


 宰相ヴォルフガングが、静かに立っている。


「……なるほど」


 彼は小さく呟く。


 王城の空気が、変わり始めている。


 別れ際。


 ルーカスが言う。


「急ぎません」


 それは、自分に向けた言葉でもある。


「揺れは、観察します」


 レティシアは微笑む。


「振り子は、必ず中央へ戻ります」


 二人は、背を向ける。


 だが。


 方向は、似ていた。


 王城の廊下を歩きながら、ルーカスは思う。


 兄上は、強い。


 だが。


 今、必要なのは。


 強さではない。


 均衡だ。


 王権の影が、ゆっくりと形を変え始めていた。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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