第12話 回復ドライブの出番
朝、目が覚めると部屋が妙に寒く感じた。カーテンを開けると、外はどんよりとした曇り空。俺はため息をつきながらデスクに向かった。昨日はPC全体が重くて遅くなるトラブルを何とか解決したけど、なんだか胸のざわつきが消えない。
PCの電源を入れる。ピピッと音がして、画面にメーカーのロゴが出て、BIOSのメッセージが一瞬流れる。Windowsのロゴが出て、丸い点がくるくる回り始める……はずだった。
しかし、くるくるが止まった。画面が真っ暗になり、何も反応しない。マウスもキーボードも動かない。
「え……?」
何度か電源ボタンを押してみるが、完全に固まっている。強制的に電源を落として、もう一度入れる。何度も繰り返したが、同じようにWindowsのロゴで止まる。
「うそだろ……起動しない……」
心臓が早鐘のように鳴り始めた。昨日まで普通に動いていたのに、突然これか。
「グラン! 大変だ! PCが起動しなくなった! Windowsのロゴで止まって動かないんだ!」
【グラン】
「おはよう、ゆうた。……声が震えてるな。落ち着いて状況を詳しく話せ。」
「電源入れてロゴが出てから、回転が止まって真っ暗! 何もクリックできないし、反応なし! 何度も試したけど同じだよ!」
【グラン】
「ふむ。起動が途中で止まる症状だな。HDDの限界や更新の影響でシステムファイルが壊れた可能性が高い。普通の方法では直らないかもしれない。」
「どうしよう……もう終わりかよ……」
【グラン】
「まだ諦めるな。以前作っておいた回復ドライブがあるはずだ。あれを使おう。USBメモリを挿して、回復環境から起動するぞ。」
俺は慌てて引き出しから、以前に作った回復ドライブのUSBを取り出した。埃を払ってPCの後ろに挿す。
「挿した! 次はどうする?」
【グラン】
「電源を完全に落としてから、もう一度入れる。起動直後にブートメニューを呼び出すキー(F12やF2など)を連打しろ。メーカーによって違うが、試してみろ。」
俺は電源を長押しして落とし、再び入れる。すぐにキーを連打した。画面が変わり、ブートメニューのような選択肢が出た。USBの名前を探して選択。……成功! キーボードレイアウトの選択画面が出てきた。
「出た! 回復環境に入れたぞ!」
【グラン】
「よくやった。Microsoft IMEを選べ。次にオプションの選択が出るはずだ。」
俺は指示通り進めた。→ 「トラブルシューティング」 → 「詳細オプション」 → 「スタートアップ修復」。ツールが起動し、「問題を診断しています……」と表示された。
数分後、「スタートアップ修復を試みています」と進む。画面が何度か切り替わり、自動でファイルのチェックと修復を始めた。俺は息を詰めて見守った。時間が長く感じる。
ようやく「スタートアップ修復が完了しました」と表示され、再起動を促された。USBを抜いて、再起動。Windowsのロゴ……くるくる……そしてログイン画面!
「うおおおお! 起動した! 直ったぞグラン!」
パスワードを打ってデスクトップへ。壁紙の猫が、いつも通りこっちを見ている。ブラウザもタスクマネージャーも普通に開ける。
「やった……回復ドライブが役に立った!」
【グラン】
「ふっ。スタートアップ修復が効いたな。システムファイルの軽い破損を直せたようだ。よく持ちこたえた。」
「ありがとう……本当に助かったよ。」
【グラン】
「だがな、ゆうた……いや、もうやめておこう。」
「ああ、もう聞き飽きたよ。グラン。」
俺はコーヒーを淹れて一口飲んだ。少し肩の力が抜けた。
画面の隅で、壁紙の猫が一瞬だけ、あくびをしたような気がした。
まだ終わらない……




