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リナルドとの合流

8階層の確認を終えたリナルドたちと4階層から順番にメンテナンス作業を続けてきたティナたちが合流したのは5階層から6階層への坑道の途中だった。

さほど強力なものはいないけれど安全のために6階層の入り口までひとまず全員で戻ってリナルドは見てきたものをロッソたちに説明した。

「そっか。やっぱり奥の方に8階層からの移動口があったんだな。」

「そう。俺でも入るのにはどうか?っていうサイズだったけど外からゴブリンとかが潜り込む危険は皆無でもない。」

パルマのダンジョンを取り巻く魔の森は強い魔獣や亜人と言われる魔物もでることがある。

リナルドの地図を見ながらロッソが眉を曇らせる。どんな武器でも、なんあら素手でも戦闘できるロッソだが、本来槍使いのロッソにとってはそれくらいの狭さが一番動きにくいのだ。

腕に覚えがある冒険者でも動きが取りにくい場所での戦闘になれば分が悪いのは当たり前だ。


「あ、そうだ。話のついでって言ったら何だけどせっかくだから人数が多いうちに魔法陣の確認しちゃおうかね。魔力を解放しなくちゃいけないから隠形を解くね。」

各階層には魔物が上がってこないように許可された者しか通過できないように魔法陣が設置されている。

ダンジョンへの入山料を払うことでその魔法陣を通過できる札をもらえるが、その動作確認も大事な作業のうちだ。

ティナはそう言うとネックレスを外し魔力を遮断する首飾りを入れた。

髪は銀色に透き通り瞳の紫色は赤みを帯び、顔だちは変わらないのに不思議な雰囲気に変わる。


(ティナがこの姿になると何故か近づきがたい気になるな・・・。)


ロッソがそんなことを考えていると

「うん。魔力結界は綻びもないしきちんと魔力も追加されてるみたいね。若旦那もなかなかやるみたいよ。」

ダンジョン階層の四隅を確認したティナはにこりとした。

ティナがダンジョンメンテで確認する魔物避けの結界魔法陣を普段管理しているのは一角獣商会のジャンニーノだ。

かつて冒険者だった彼は魔法使いをしていたので扱いを教えてある。

ダンジョンメンテナンスの時に細かく確認はするけれど日々の活動で劣化したりすることもあるので彼の他にも1か月に1度はダンジョンを潜る冒険者に依頼して目視確認をしているのだ。

今回はなかなか信頼できそうなパーティーがいなかったのでジャンニーノに特別に依頼して確認に潜ってもらった。


「ちょっと普通に頼むよりはお高くなりそうだけど、やっぱりいい仕事してくれてるよね。」

「そりゃジャンニーノにしてみても生活と商売がかかってるからな。必死にもなるさ。」

リナルドはそっけなく返事を返した。


「ほぉ。これがニベアの銀の月なんだねぇ。確かにこの色は月の光だ。」

ティナの隠形を解いた姿を見たヤドミラがほぅっとため息をついて目を細めた。


魔力が多すぎるティナは副ギルドマスターのアンナの指示で養育院に入った小さい頃から隠形のネックレスを付けていた。

魔力が多すぎるのに平民なことは小さなティナを危険に晒すから。と言われたからだ。


ギルベルタ西部では忌み子として嫌われることが多い色合いだが北部国境近いリナルドたちには出会った当初からも忌避感が少ない。

マルコがかつて言っていたように北部の国には薄い色合いの人々が多いので、別に悪意もないことを知っているのだ。

「やあだ。見た目が変わるだけだよ。でも私も何だか落ち着かないかも。」

ティナがいつもと同じような口調でコロコロ笑い、ロッソは気づかれないように息をひとつついた。



魔法陣の確認作業が終わり、ティナはまたネックレスをはめていつもの姿に戻り、ロッソは誰にも気が付かれないように小さく息を一つつく。

「このエリアは冒険者の派遣エリアだよね。」

ヤドミラが少し背伸びをして周りを見回しながら尋ねる。

「あぁ。基本的にこのあたりが魔物の出没度と強度からしてメインのエリアになるな。」

「魔物だけじゃなくて薬用植物もあるが危険植物もまだまだ多いんだよ。」

ティナも言い加えるとなるほど、とヤドミラが小さく頷いた。

「だとしたら早々退治できないってことはなさそうだけど、違うの?」

「遭遇した奴どうしの力のバランスはその時にならんとわからんよ。」

リナルドがそう答える。

「畑にしたいってジャンニーノは言うがここは残したほうがいいだろうなぁ。ティナ、どうだ?」

ロッソの返事にリナルドがそう付け足す。

「魔物対策、ね。魔物が上がってくるまでの時間が稼げたらどこかで警戒用の魔法陣にひっかかるだろうから、それもいいね。」

「それもあるけれど、いずれ錬金術師がここに来ればポーションの素材を運搬して来る必要がなくなる植生だからね。」

歩きながら植生の検査もぬけめなく行っていたらしい。そこはさすがのリナルドだった。

「なるほど、そうなるとこの環境をそのまま維持しておかないといけなくなるってことだな。」

「植物が生える土壌を知ってると、農作物の収穫に期待しちゃうよねぇ。」

リナルド、ロッソ、ティナが頭を突き合わせて相談していると

「この間も言ったけど人間ってのは本当に耕すのが好きだねぇ。」

ヤドミラがちょっと呆れたように言う。

「どうせ掘ってももう何もでないんだし、なかなかにいい植生なんだから放置しとけばいいのにな。」

ルジェクもそのあたりの土を掴み上げてパラパラと手からこぼし落とす。


錬金術師が用いる薬草の一部は魔力草と呼び慣らされている。栽培に成功しているものもあるが、なかには野生に近い環境でしか採取できない種もある。

人の手で一度でも畑にしてしまうと取れなくなってしまうそれらを再び繁茂させるには放棄してさらに長い年月を経過させる必要があると研究されている。


「その線で説明していけばジャンニーノなら納得してくれるだろう。錬金術師を派遣することができれば文句は言わないはずだぞ。」

ジャンニーノと相談してきたロッソと日頃から彼と接するラウルがそう言うとリナルドは頷いた。

「錬金術師の派遣手配は生産職ギルドにかけあってみないとだな、アンナさんに相談しよう。」


二人がそんな会話をするのを聞きながらティナがふと動きを止める。ロッソがその気配に気がついた瞬間ティナの右手が素早く動いた。

ティナの動きにロッソが視線を動かした先には毒ガエルが短剣で壁に縫い付けられて絶命していた。毒液を吐く直前、小さな体の毒だまりを綺麗に避けているのが見て取れた。

「お見事。」

「ありがと。」

ティナは小さく笑うと刺さったナイフを丹念にふき取り、カエルの死骸もろとも焼却処分してしまった。


「リナルドはどうする?俺たちとメンテする?」

「いや。俺は少し上まで上がってみるわ。さっき通信魔術具使ったらビアンカが降りてくるらしいから。合流してから降りてくる。」

リナルドは少し考えた後、ニコリと笑ってそう答える。

カミーラとビアンカの二人でも4階層のあたりまでは大丈夫そうだが5階層になると思いもよらぬ魔物が出てくることがある。

だからそれはそれで一見とても理にかなっているように聞こえるのだけれど、リナルドの戦闘能力は低い。

カミーラがいれば、ビアンカの戦闘能力とでこのダンジョンなら突破するのに問題はないはずだ。


(あ・・・トイレ掃除、避けたな。)

安全の上で考えたらまぁ当たり前の回答ではあるけれどリナルドの笑みを見たらそうとしか思えなくなるこの不思議さ。

どうやらロッソの方も似たようなことを考えたようで、そうかという口元がなんだか不自然にひくついて見えるのは気のせいではない、とティナは思う。

目と目で語り合う(というか殴り合う)長く短い時間の後、リナルドとラウルは上へと昇って行ったのだった。


読んでいただきありがとうございます。


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