帳簿作業は大変
今日は短めです。
冒険者ギルドはニベアの政庁にパルマダンジョンの管理を委託されている。
管理を委託されているのでその収入と経費を計算し、税金を払わなくてはいけない。
税務官が査定するための提出書類を準備する、その下調べの第一段階が帳簿整理だ。
依頼は基本的にニベアで受けているのだが他の街から来る冒険者もいる。ダンジョン近辺で精算して次の冒険に赴く者もいて、出張所には出張所の帳簿があってそれでダンジョンに関わる収入や経費をより正確に算定するのだ。
と、いうことで今日のビアンカたちの仕事は帳簿整理なのだが正確には記載の抜け落ちがないか?の確認作業の予定だ。
収穫物管理帳簿、各種支払い台帳、物品購入台帳、ダンジョン入退場管理台帳。
領収書、納品書、請求書。とにかく紙の山、山山との文字通り格闘だ。
「きっちり確認しないと税務官の査定に答えられないからね。」
ニベア本部では毎日キチンと記載され確認されている帳簿類だけど出先機関では若干事情が変わってくる。
まず出先機関までは正規の職員が人員不足なのが大きい。
そのため、登録している冒険者の中から契約して臨時職員としての扱いで配置することも多い。
冒険者、いざと言う時に戦える人物を契約して管理者に登録していることが多いので書類管理や計算が苦手な者がほとんどなのだ。
だいたい計算や書類仕事が得意な人間はあまり冒険者にはなりたがらない。
パルマのダンジョンでもそれは同じで派遣されているのは登録冒険者のラウルとカミーラ、それにギルド養育院からの登録で半職員見習いの立場でもあるアルドだ。
アルドはギルド養育院での育つ間に簡単な読み書き計算は仕込まれているが、純粋な冒険者であるラウルはそこまできっちりと収めているわけではなかった。
半年前に書類整理に派遣された際の惨状を思い出すと、今でもビアンカの頭が痛む。
「そんなラウルさん真面目そうなのに。」
「冒険者として」のラウルは受けた依頼は期日までに必要要件を満たして行うことが出来る完遂率の高い冒険者だった。
ラウルのカード記録を参照したことがあるクリスタが不思議そうにそう言う。
「冒険者として真面目なのと、事務処理能力の有無はリンクしない!!」
ビアンカがその鼻先にビシッとキメる。
「前回の大惨事を受けて事務方の全力をあげて今回は事にあたるわ。
なんだかんだ言いつつ要領のいいクリスタと時間はかけても細部にも丁寧なニコロを擁した我々は今回対策済みと言えるわけよ!」
自分自身に言い聞かせているようにしか聞こえないニコロである。
とりあえず請求書なんかの書類は捨てずに箱に入れる、とにかく捨てるな、とラウルに言い含めてあるという。
「だからこんな落書き紙まで取ってあるわけですね・・・・。わかりました。」
「まず紙の中から本当にいらないものを仕分けするわよ。まずは月別にわけて、それからできれば日付順!!じゃ、行くわよ。」
3時間経過
「・・・・おかしい。」
台帳の整理をひととおり終えてひとまずの休憩時間である。
「何がおかしいんですか?ビアンカさんが言うほどラウルさん酷くなかったじゃないですか。」
「紙から仕分けとか言うからびっくりしたけど、ちゃんと種類別、日付別になってて不用紙なんてなかったし。」
「もうっ。気合い入れるためとはいえビアンカさん脅しすぎなんですよ。」
「あんたたちはあの惨状を知らないから!」
「順調なのに信じられないとかどんだけ悲観的になってるんですか。いつものビアンカさんらしくないですよ。」
「順調かい?休憩だからデボラから差し入れだよ。」
果実の香りがふんわりと漂って、カミーラがお茶とお茶菓子のセットを載せたトレイを持って姿を現す。
不正のないことを確認するために今日のカミーラは隣室で待機しているのだ。
カミーラの登場にニコロとクリスタがよほど安堵した表情になったのか、カミーラがちょっと部屋に入ることを躊躇う。
「カミーラさん、ビアンカさんが。」
「ん?帳簿が合わないのかい?」
カミーラがしかめ面のままのビアンカを不安そうに覗き込む。
「違うの。カミーラ、まだ半分くらいしかあわせてないんだけどね。合ってるの!」
「合ってるんならそんな疑わなくても。」
ニコロがそう言う。
「半年前の確認はそもそも記載すらおかしかったの!人間そんな簡単に変わらないでしょ?」
「なんだ。そんなことか。ラウルは今回ほとんど関与してないよ。私がやったんだ。」
カミーラの言葉にビアンカが目を見張る。そんなビアンカに笑みを見せて書類をぬらさないように場所を作ってお茶のトレイを置く。
「私が派遣されて来たのがちょうど前回が終わった後だろう。私もまだ本調子じゃなくてダンジョンに降りるのは、ってんでやったんだよ。」
「すごく見やすかったです。購入した物品とかの控えも添えてあって整理しやすかったですよ。」
ニコロが感嘆の声を上げる。
「ありがとう。ギルドの精鋭に認められるなら私の腕も満更でもないかな?」
「満更どころかっ!!おかげでどれだけ楽にまとめられるか。ありがとう。本当にありがとう!」
立ち上がり、カミーラの手を握り締めてビアンカが食い気味に礼を言う。
「でも確かめ算とかはちゃんとしておくれよ。」
「あ、もちろん!」
そんな二人の様子を見ながらクリスタは小声でニコロに耳打ちする。
「ビアンカさん泣いてない?」
「ね。どんだけ前の回酷かったんだろ?」
今回、カミーラが派遣された後に監査業務が入って本当によかった、と思う新人2名だった。




