99破壊された都市
「アレックス、進路はこっちでいいのか?」
「はい。この丘を抜けた先にナフラツがありますが、一度監督貴族が逃げ出し街内まで魔物の侵攻を受けたそうですが冒険者の協力で一旦追い出すのに成功したようです」
「お前の主人はそこに居るのか?」
「おそらく居ると思いますが、お嬢様はさらに後方へと移送されているかと思われます」
「お前のところの被害はどの位出てるんだ?」
「はっ我がメリス公爵家騎士団は公爵が半隠居の為、城下警護勤務でしたので国王が後方に避難する際の護衛として同行いたしました。その後ナフラツに戻ったのですがすでに陥落寸前で一部の冒険者と再奪還となりました。
公爵も御息女がソルジットに行って居りましたのでナフラツ奪還の陣頭指揮を取り、奪還後余裕の出来た部隊を使い命を省みない志願兵を募って特攻させました。そこで運良くカノマトの避難民の中にお嬢様の馬車を発見しましたがすでに魔物の群れに襲われており、馬車が破損して立往生していました。
そこに見事間に合い殿として食い止めつつお嬢様を逃すことに成功させましたがその際元々の護衛と救出隊で半数を失い、付き従った侍従達もそこで自身を盾に時間稼ぎする者が現れ、結果的に7割の者が盾となり散っていきました。
そしてなんとか脱出した我らも長い逃避行で脱落者が出て結果的にこれしか残れませんでした。
メリス家全体で見れば公爵様の部隊が健在ですがお嬢様の方は壊滅と言っていい被害だと思われます」
「ナゲーよ説明…」
ボソッと呟いた事はアレックスには聞こえていなそうだったがそれでも人材が一気に半分も居なくなった公爵家もこれからが大変だろう。
奪還したとはいえボロボロになってる城下町じゃ流通も止まって再建もままならないだろう。
「ところでそんなに身を盾に逃がしたくなるような姫さんは人望があるのか?」
「公爵様も元々は冒険者の出で、奥様もその旅で見初められた方でして、お嬢様も活発な方ですが下々の者にも気さくに接して頂けるので、公爵家で働く者達は自分の子のように大事にされております」
なるほどね。
随分と貴族の変な話ばかり聞いていたがちゃんとしたのもいるんだな。
公爵家って身分は高いがドロドロの政治にはあまり関わらなかったのかな?
もしくは半隠居ってのを隠れ蓑に逃げてたか?
アレックスの人間性は随分まじめな奴って感じだがこいつがこれだけ評価するならちょっと見てみたい。
だがマザーの存在は早いところ知らせたい。
あれは並なことでは歯が立つまい。
それにあの魔物の生産能力と地脈からの魔素吸収して行っているだろうが北に動いたって事はここより餌が有るって事だ。それが地脈から魔素を吸うのか、人なり魔物なりが居るのかわからないが、北に行くほど強くなるのだろう。
ちゃんとした反抗計画を持たなければすぐに危険が迫ってきてしまうからやはり送り届けたらすぐに帰ろう。
こちらもいろいろ準備が必要になるだろうから…
「ケント殿ナフラツが見えて参りました」
考え事しながら走っていると後ろからアレックスに声をかけられた。
その声に反応し周りでも生死を分ける緊張した状態が解放される期待から感極まった者もいたが、皆一様に笑顔を見せていた。
所々街壁が崩れているが、街の入り口まで運びみんなと別れようとしたがそこはやはり恩人にお礼もしないと主人に叱られると無理やり街の中まで連れられて行った。
流石に20人に囲まれて追い立てられてしまっては切り抜けられなかった。
だが街の中はお嬢様の帰還で賑わっていたが見るからに怪我人の山って感じで今後の戦闘に不安が残る状態となっていた。
ギルド前などは素材を売りに来て、売ってすぐに装備を新調してなんてやってるベテランが一部いたがある意味こいつら冒険者が中心地なって維持されている。
それに現在ここが最前線として一般人を後方に移送させたりの事務手続きは騎士団がやってと棲みわけは出来ていそうだった。
さて20人に連れられて着いたところはそこそこ大きい屋敷なのだが家の前が賑わっている。
どうやら俺達が着くちょっと前にお嬢様がついて感動の対面をしているようだ。
そりゃそうかこっちは飛ばしに飛ばしてあっという間に距離を詰めたから追いついていたみたいだね。
感動の再会を邪魔しちゃ悪いからって遠慮しようと思ったがアレックスが誰かを連れてきた。
「この度は私どもの家の者達を救って頂き感謝します。私、メリス家長男のウォルターと申します。以後お見知り置きを」
「冒険者のケントって言います。偶々近くを通って行き先も近かったのでついでです」
「ついででも優秀なのは変わりません。今は当家も人が必要ですから、長く仕えた者達をこれだけ助け出して頂いただけでもメリス家にとっては宝ですから。
父も溺愛していた妹が無事でこちらに挨拶に伺わせられず申し訳ありません。
報酬などはいずれお渡しs…」
「いや要らないです。貴方の振る舞いに好感を覚えました。貴方がいればここも再建が可能でしょう。そこでこれを提供していきます。私どもはクレセントと言うレホの村…今は街でしたね。そこの南に住んでいます。今回の騒動で急遽現状把握にいろいろ回りましたが一旦補給に戻るつもりでした。そこで今回の余りで申し訳ありませんがこの回復薬を提供します。その間に必要そうな物を積んだ馬車を手配して参りますから」
「なんと!本当に良いのか?レホと言うとシュワルツ家か?そうかあそこと繋がりのある者だったか。有難く使わせていただく。もしカイルに会う事があったらウォルターがよろしく言っていたと伝えてくだされ」
「わかりました。それでは我々は急ぎますので」
ケント達は一台のリアカーに残っていた回復薬や薬草など治療関係に必要そうな物は全部出して置いて、親子の感動の再会を邪魔する事なくウォルター様だけに挨拶して歩き始めた。武器も置いて来たかったが渡せる様な物が何も残っていなかったのでそこは諦めて、早く戻ってゴルドに無茶言って揃えて貰うつもりだけど…カイル様に話通しておけば騎士の装備は手配してくれるかな?
間違いなくウォルター様は貴族の世界の足の引っ張り合いなんてしないと言うか出来ないタイプだろう。
親の背中見て育ってこれならこの家の者達も期待が持てるし緊急時の拠点を治める手腕は有るのだろう。
人を使う事が無理な俺にはない者を持っている感じなのだろう。
この只ならぬ事態にはコネを作っといて良いだろう人材だな。
さてそれでは一路飛ばして帰るとしよう。
やる事はいっぱい待っている。




