96宗教国は…
ハイエナ、イタチ、ハゲタカの集団を殲滅した一行は一路北に進路をとりコルテレット城下のナフラツを目指していた。集団を撃退してからは周辺一帯の魔獣は空白地なのかその存在を消し順調に道を進んでいた。
しかし其処彼処には骨が散乱し命を失ったものから餌になる弱肉強食の世界があった様だ。その下部に位置するハイエナ達が集団で襲ってきた物は漁夫の利で餌を漁りに来て掃除屋として活躍していたのだろう。
という事はここより先は下手したら本当に手がつけられない強いのもいる可能性があるって事か…後ろの3人はリアカーに座り込みグッタリしてるし、ここで襲われれば戦力としては無理だろうから操縦しながら牽制して逃げるに限るか?
それならまずは石突砲を操縦しながら扱っていざとなれば大剣を接続して大薙刀にして振り回せれば何とかなるんじゃ無いだろうか?
3人の休憩時間稼ぐくらいならどうにでもなるだろうし、メガネのマップにも敵性反応は出てないからそれを把握してからで十分かな。
さてと順調に走行が続きマップ上は平地にしか見えなかったがちょっとした小高い丘を抜けると眼下には1つの都市とその先には巨大な建物の先端らしきものが見えていた。
この1つの都市はサウリカ。コルテレット南部にある中心的な大聖堂を構える都市で信者が多く集まる都市で信仰という名の束縛に絡め取られてしまった人達が集う街。
別に宗教を否定するつもりは無いがこの国の宗教からは腐敗の臭いが漂っていてあまり好感を持てなかった。しかも今回聖戦の名の下に信者を一丸に纏めて魔物にけしかけているうちに自分達は北に逃げたって言うんだから信者も救われないよね。
だからこの街はすでに捨てられた街になっている。
立派であったであろう建物は至る所で崩壊し、綺麗であったであろう街は見るも無残な姿を晒していた。
果たして生存者は残っているのだろうか?
信じると言う字は人が言うと書く。
だから信者は教祖の言った言葉を信じた者達になってしまうから信者となり、自信が持てないから人の言葉に依存してしまう。それは最終的には自我の無い人形と変わらず、教祖の操り人形の様にどんな無茶な要求でも教祖が言った事だから行うと言う狂った人になりそれは狂信者となる。
これでは人として生きている意味が無いと思うのだが依存している人にとっては理解できないんだろうね。
自信が持てる人なら人の言う事には左右されずに自分で言った言葉を信じるから自信になりその積み重ねで上手くいっている人は生き生きした人生を歩んでいるよね。
言い換えれば自分の言葉で自己暗示に掛けてるのかもしれないけどそれって大切な時あるよね。
出来ないって思ってたら何も出来ないし自分で失敗するのを暗示に掛けちゃってるから、無謀でも出来るって言ってるやつは偶然だとしてもチャンスを掴みとって成功してるよね。
さてこんな絶望的な状況の中で生存者が居るのか?ってなるけど信者だった者達はおそらく犠牲になっているか教祖のいる北に行っているだろう。
そうなると残っているのは信仰心の薄いやつか悟って宗教と決別したやつかだがおそらく数人は生きているだろう。
捜すのは大変だが俺たちが街にいる魔物を潰していけば生き残れる奴も居るだろう。
直接助けられなくても関節的にでも助かる奴がいればそれでいい。
まだ次に行かなくてはいけないし大勢いたら連れてなんて歩けない。
生存者にはここで生活基盤を再構築してくれればいいよな。
後ろで回復中の3人と相談してこの見通しのいい丘で一旦休んで万全の体制を整え、街中の魔物を誘い出し借り尽くす事にした。
作戦は4人でそれぞれホバーバイクで縦横無尽に走って街の中心部を目指していき、俺のレーダーで生き残りが居るかを確認していく。3人は各個撃破で手当たり次第に狩ってもらう。そして此処からでも確認できる大型の魔獣に突っ込むって計画していそうだが行き当たりばったりな案を満場一致で承認を得て、討伐後は西に向かいソルジット国の街の状況を確認に向かう事にした。
休憩と言ってもメガネ君レーダーで周りを把握しつつ腹拵えで飯を食うくらいだがさっき捕獲した巨大羊の肉で骨付き肉の丸焼きにかぶり付き腹を満腹にしつつ疲れた体をほぐすついでに床屋で培ったマッサージ技で3人の体をほぐして行った。
床屋のマッサージは本職がやる様な治療目的ではなく、肩凝りをちょっとほぐすくらいの痛いまで行かない気持ち良いで止まるくらいのマッサージだから順番に3人にやって行ったが物の見事に寝落ちたよこの娘達。
頭皮の凝りからほぐすマッサージで耳周りやおでこもやるから目の周りの筋肉もほぐれた様で表情がだらしなくなってきた所に耳裏辺りから首を肩までモミモミしてついで肩まで行き、肩甲骨の間まで親指で指圧して、さらに両腕の指先から肘までも指圧、圧迫、揉捻と床屋の教科書に載ってる程度のマッサージだったがそれだけでヨダレ垂らして寝てくれちゃいました3人とも…
あれだ続けて戦い続けたのは初めてだったからさすがに俺も疲れたんだけど…3人のうち誰か起きるまでは見張りをしてますかね。
そして見張りをしつつ3人の寝顔を見ているとさすがにこっちも眠くなってきた…ダメ…寝ちゃダメ…今寝たら見張りが…
そう思いながらも意識は手放されてしまった。
ハッ!ヤバい寝てた!
マズイ見張りは!?
顔を上げるとなぜかうつ伏せの状態になっていた。
意識が覚醒して状況を把握すると誰かが背中を踏んでいる!?
迷う事なく3人なんだけど、1人は背中1人は足1人は足裏って分担して踏んでくれている。
彼女達の体重で丁度良い重さで踏まれるから予想以上に気持ち良いからちょっとだけこのまま休憩させて貰おう。
適度にマッサージを受けた事で体調が万全になった。
各々ホバーバイクに跨り、それぞれ手当たり次第に魔物を駆逐していくだけである。ただ数体魔獣と思われる巨大な個体も確認出来ているので、それに出くわしたら上空に何かしらの魔法を打ち上げ合図して複数で当たるのだけ決めて突入して行った。
街に入ってからは即散会して各道に屯する魔物を始末して行った。そして俺はメガネのレーダーを街中に広げ生き残っている人を検索していくが残念な事に表示されるのは赤い点のみ…生存者はいない事になる…それでも地下などは入らないと表示されないのでそこに期待を寄せて駆除だけに力を入れて殲滅して行った。
此処にいた魔物は自分で狩るよりはおこぼれをかすめ取る様な意地汚い連中しかいないのですれ違いざまの一撃で始末が可能だった。これならそんなに手間も掛からず終わるだろう。
探査は掛けながら魔獣を捜していると一体が目の前に見えてきた。
そいつは単純に言えば牛なんだがなぜか二足歩行している。人の様に動いて前足の蹄でのしかかる様にして色々なものを潰しながら進んでいる。なんか進化の途中経過を見ている様だ。
ただこいつは二足歩行していようが所詮は牛。牛という事は牛肉が取れる。此処は食料捕獲という事で頑張るしかないな。
こいつは立ち上がった事で5mくらいの高さを持っているが結局は牛だからこちらの武器も大薙刀バージョンで袈裟懸けに一閃するとそれだけで綺麗に首から斬り裂けた。
もう終わっちゃった…なんか物足りない…でももう他も倒し終わっちゃってるからもう撤退かな?マップ上には赤い点は居なくなった。でも結局は青い点は見ていないが一軒一軒家だったものの跡地を捜すほど時間があるわけではないから此処もう引き上げるとしよう。
撤収の合図に石突砲から打ち上げて音花火の様に3発鳴らす。そして西に進路をとり城門を出たところで待機するとテルト、アーネ、リーブの順に戻ってきた。
生存者が見つからなかった事に3人も哀しそうな顔をしていたがそこは覚悟の上だったので4人で西にあるソルジットを目指して移動を開始した。するとその頃にはマップ上に幾つかの青い点が生み出されていた。
「あっみんなどうやら隠れていた人達が街の様子を見に出てきたみたいだよ。俺たちがやった事が無駄にならずに済んだね。後は残った人達で決断して貰おう」




