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94死の街道

昨夜のお祭り騒ぎで情報を聞けなかったが翌日は酒も大して無かったので朝早くから各地域の代表者を集めてもらい知ってる話を聞かせてもらった。

基本的にこのガトチヤより北はすでに崩壊していておかしく無いそうだ。なんでも街中で魔獣が現れ組織的な抵抗も出来ないまま散り散りに逃げるのがやっとだったそうで、しかも街を束ねるはずの貴族が真っ先に逃げたため、混乱は激しく犠牲者だけが増えていったそうだ。

一部の騎士や兵士、冒険者で声掛けをし逃げる者を集めほとんどの者が着の身着のまま逃げるのがやっとで、平民でも鎌や鍬を拾って戦う意欲を見せる者だけがなんとかこの地までたどり着けたようだ。


その中でコルテレットとソルジットの情報があるか訊ねるがそんな遠くから逃げてこれた者はおらず、噂程度でしか情報が無かった。

その情報というのも、ソルジットの地下で研究されていた人造魔獣が暴れたとか、コルテレットの僧兵が死ぬまで魔獣に突っ込む人形になったとか信憑性を疑いたくなるものしかなく、結局のところは危険度が高かろうとも見に行くしかなさそうだ。


そんなわけでこの地は兵士の皆さんに任せてここより北にあるという、コルテレットの南部城下町と言われるほど栄えていると言われてるサウリカを目指すことにした。

ここ出身の兵士もいたので既に滅んでいるとは言われたがこの目で確かめないと今後の反攻が出来ないだろうってことで納得してもらった。

俺たちの身の安全は来た時に4人であそこまで魔物をやれたなら問題無いだろうってそっちの心配されなかったのはなんとも寂しいが気にしないように旅立つことにした。


ただ、回復薬を追加で作って置き土産にしようとしたら朝早くから魔物が少ないのを見越して、薬草採取してきた強者達の為にも上級、これは手持ち分の提供と、下級を作って一部を中級に流用して安全対策として個別に瓶詰めして提供してきた。


さ〜ここまで準備しとけば文句はないだろう?

今日の移動は北に向くから昨日の比じゃない魔獣が出てくるだろう。そこで前はリーブと2人で無理やり道を開き、2列目のテルトが魔法で広げ支援してもらい、アーネに殿兼接近してきた者への対処と近接防御をお願いして、一直線につっこんでいった。


出だしこそホバーバイクで出発したのだがそれもすぐ魔物の集団の中に魔獣が混じり、進行速度も出せない状況に陥り、それならと全員徒歩になり、自由になった両手を最大限生かし殲滅速度を優先することになった。

ケントは150cmの刃渡の柄を2本繋いで全長にすると3.5mにもなる大薙刀を振り回し、一振りでいくつもの魔物を斬り飛ばし、大型の魔獣ですらそのリーチを活かして苦もなく対処していた。

その横ではリーブが大楯で殴り飛ばし、身長ほどの剣を振り回し、ケントの殲滅速度には劣るものの、移動速度に合わせてケントの広げた場所をさらに広げるように巧みな場所取りで、後ろに続く2人の為にスペースを維持していた。

そんな2人の後ろでも甘えることなく凄いことをやっている2人であるのだが、テルトはたくさん魔法陣を連ねて、発動ロスをなくして順次氷の矢を左右に撃ち続け弾幕を張りつつ、正面の2人のサポートにも何本か飛ばして16もの小型魔法陣が次々に光を貯め、放ち、とどまる事が無かった。

さらにその後ろでは自分の糸で作った鎖鎌を振り回し、テルトの弾幕をくぐり抜けた魔物や背後から近付く魔物に分銅で殴りつけ鎌で切り裂きさらに近付いた物には顕在化した蜘蛛足を活かして刺突し、それでも追いつかなかったのには子蜘蛛が粘着糸を吹き付け行動阻害で時間稼ぎをして、動きの鈍った隙に攻撃を叩き込んで行った。


そんな状態で歩きながら戦い続ける事4時間。

移動距離はガトチヤが見えなくなるくらいは移動出来ただろうか?普通に移動できた距離はさほどではないがついに周辺から魔物が激減してきた。

ただその代わり魔獣種と思われる大型の個体が現れてきた。

縄張り意識が強いのかあまり群れて来ないので魔物に囲まれているよりは楽なのだが、1匹にかかる時間が桁違いに増えて移動速度はほぼ無しになってしまった。

1匹倒すたびに、魔力回復薬や怪我の度合いで回復薬を飲み、軽く保存食を食べて次に備えながら500mも歩けば次の魔獣が姿を現してくる。戦闘準備をしつつ、さらに歩みを近付けるととてつもなくデカイ毛玉が近ずいて来た。


メガネ君これは何?


『バルーンシープ。風船のような姿でモコモコな毛を身に纏う。その毛に包まれた体では攻撃が届かないし、なぜか魔法も霧散してしまう不思議な魔獣』


あっコレ見ないほうが良かったかな?

攻撃手段ないじゃん!


しかしこいつ足短いな…毛玉にちょこんと脚が出ていてちょこちょこ動く姿はなんとも言えない癒しを感じる…可愛いかもこいつ…

みんな戦闘準備をしてはいるがその表情は緩んでいた。どうやら同じ事を考えているのかな?でも高さが6mくらいあって二階建ての家くらいのモコモコってのもどうなんだろうね?


ガシッガシ ダダダダダダー


油断しきっていた俺たちに向け、バルーンシープは前足で地面を蹴り突如突進してきた。その速度は見た目とはかけ離れ、瞬く間に接近してきた。


うぉ〜はえ〜!?


余りにも急な展開にギリギリ回避が出来たがその速度に追いついて何かするにはちょっと不可能そうだが、シープは通り過ぎてからその短い足で一生懸命方向転換し、その愛らしい仕草にまた惹きつけられてしまっていた。

そして方向転換し終えるとまた地面を蹴り突進の準備に入っていた。


「アーネ!後ろに糸張って!みんなはギリギリで避けて」


突然の指示にもかかわらずアーネは即座に対応してみんなのいる後ろに糸を何本か設置して、シープを引きつけてから回避してもらえるように言葉足らずで時間もなく伝えたが把握はしてもらえたようで、考える時間も与えてもらえないうちにすでに突進して接近し、左右に分かれて寸前で避ける事に成功した。

そしてすぐ後方を確認すると糸を張ったすぐ先でシープは止まっていた。


まずい!すぐに逃げないと!


余りにも近い距離で停止したシープがこの距離で突進を掛けてきたら回避が間に合わなくなる。これは失策だったか?

二手に分かれてしまったがそのまま距離をとりながら警戒してよく観察した。


あれ?動かない?

何かひっくり返って動かなくなるうさぎみたいにそのままになっちゃった…

動かないのはいいけどこのままってわけにはいかないよね?

でも毛が邪魔して対処出来ないし…

幸い毛を刈れそうな道具は持ってるが…やるか…


どこからやる?

大薙刀をハサミモードで使い、刃の部分を合わせて少しずつ切ることにし、まずは根元が見える足の蹄周りから入れてみるか?


3人に協力を仰ぎ、蹄の上に登りハサミをチョップカットの様に少しづつ入れるが反発力が強く普通には切ることが出来なかった。そこで刃先を使って根元を一本づつ挟んで行くとまるでペンチで針金を切るような抵抗を受けるが引切りにすることで切断には成功した。ただこれは一本づつ行くには面倒だな…

よし!ある程度肌の面を出したら重量を最大増加で剃刀の様にと刃の重さで一気に行ってみよう。

普通に真っ直ぐに下ろすだけではまず切れないから斜行運行と円運動を意識してアーネの糸で皮膚がたるまない様にピント張ってもらって「おりゃ!」

すると重量を増した大薙刀は重さも活かした斜行で一気に足の付け根まで毛をゴリゴリと刈り取った。

ところが刈り取られた毛は硬いかと思ったら予想を覆し非常に柔らかく、ウールとして使えそうだ。


て事はこれを集めておけばウール100パーセントの衣類が出来る!?羊毛の布団もいけちゃうか?

羽毛集めもしているがこれだけあれば先に羊毛布団作っとくのもいいだろう。


それなら全部刈り取ってやる!!


ケントは取り憑かれたように全身剃毛をおこなっていった。

剃ってる時は気づいていなかったがこいつ腹の周りの骨が弱いようだ。

まさか自分の毛の重さで内臓圧迫死をしているなんて思わなかった。


毛の防御力には驚かされたが利用価値が高いので、毛を纏め体も解体して食材として保存して北に向け歩みを進めるのだった。



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