73診察という名の毛刈り
「ではレオさん貴方から診察しましょう」
「なぬ!?」
ケントが言うなり周りは驚くが何事もなかった様にレオの手を引いて診察室になっているミニ小屋に連れて行った。中にはケントと患者のレオと助手のテルトが中に入り入口には順番整理のリーブとなぜかトリアージしているアーネと役割が決まっていた様だ。
レオの配下も自力で動ける者と運んでもらう者が別れたところで動ける者の方からアーネが外傷治療、感染患者、両方と分けてくれてそこに動けない人を移動させてくれていた。
それではこちらも本題に入ろう。
「レオさんこのままじゃこの里が持たないでしょう?」
「やはりわかっていたか…ご覧の通り戦闘に出れる者は怪我が多くさらには寄生虫をつけられてな、この里で大繁殖されてしまったのだ。治った所でまた直ぐにくっつかれてしまう。それに猿共に狩場を奪われて食料問題もある。頭が痛い問題ばかりだよ」
「それなら里を動かしてしまわないか?ここより南部は集落は無いのか?」
「おそらく無いな。南部の猿が北上して西側の魔の森で合流してしまったからな。ここより東では聞いたことが無い。お主らが見てきた村がダメだったのだからここが最後かもしれんな。ここは森から一番遠かったから…」
「じゃあ移動しても問題無いか?俺たちの村は海岸沿いなんだ。船を使えば支援が出来るしあそこの鉄の箱は海も移動出来るんだ。そこから支援体制作ってもう少し北の海沿いで魔の森南部で村作れば戦士が復活すれば自分達でやりくり出来るだろう?全員の診察終わるまで考えといてくれ幹部連中先に終わらせるから」
そして有無を言わさず上着を脱がし、回転椅子のおかげでクルッと後ろを向けて背中を見る。
そこには獅子の白い毛がビッシリ生える中、中を蠢めく黒い点がいっぱい…
やっぱりこいつらが何か媒介したのかな?
それは小指の爪ほどもある地球で勝手知ったるサイズでは無いノミやダニが生息していた。
レオに確認するとこんなものは今まで無かったから対処がわからなかったらしい。
そこで選択肢として、
持続時間がわからないが嫌虫剤を毛に塗る。
風呂で虫が落ちるまで入っている。
ブラシで落ちるまでとく。
毛を剃って一網打尽。
を提案したら時間が惜しいとのことでなぜか背中の剃毛と侍女に髪をブラシでといて貰うという選択肢をされてしまったのだ。
さすがに本職が理容師とはいえ背中を剃ったことは無いが不可能では無い…なぜにおっさんの背中をケツまで剃らなきゃいけないのか…そっちの精神的ダメージの方が心配だ…
考えちゃダメだ!心を無にするんだ!これは作業だ!
さっそく小屋内にあるベッドにうつ伏せになってもらい尻尾の付け根まで出してもらう。
足はいいのか聞いたら会議しながら足湯で済ますそうだ。
どうも全身つかって長く入ってるのが嫌な人らしく背中だけでいいらしい尻尾も侍女がするんだって。
偉い人は羨ましい。
それではさっそく久しぶりに剃刀を手に持って見ると、長年使ってきた道具は持っただけで吸い付く様に体の一部と感じるくらい馴染んでくる。
切れ味を確認するのに少々端を切ってみる普通は動物の毛は感覚が違うはずなのだがこちらに来て性能が上がったのか問題なく髭を剃るときの様に使えそうだ。
肌の抵抗も普通は泡をつけて滑らせるのだが切れ味が良すぎて肌も痛く無いらしい…
ならいいか…時間ももったい無いしそのまま作業開始。
俺の持っている常識なら痛いはずなのだがスプーンの裏で撫でられてるみたいだと言われればもう迷いは無い。
あっという間に肩からプリンとしたお尻までツルツルに剃り上げた。
レオは服を着るといつもとの肌触りの違いを楽しんで外の幹部の順番を決める者だから、なぜか全員の背中剃りが確定してしまった…女性もいたのに…見てないからね。視界に入っていても心を無にしたからそんな目で見てないからね。
誰にとはなく言い訳しつつ主要メンバーは終了した。
そこからは重症者を優先して、あまりに酷く肌に直接薬を掛けたい人は剃ったけどその他は解毒嫌虫薬草風呂に浸かってもらった。
全部ミックスして濃度を薄めて風呂にしたので一石二鳥なのです。剃った人はそのまま三日月亭の方へ行ってもらって処置なので流れ作業で次々に流して行けたから風呂が満帆になってしまい行列が出来てしまったがそこはそのまま任せておくことにして、重症者の症状を見て何か使える薬が無いかメガネくんと共に検討することにしたが解毒剤で症状を緩和は出来ても完治することは見つからなかった。
調べ物も現状では何も出来なそうなので完全に手が空いてしまったら、風呂待ちで入った人たちが周りでアーネの子蜘蛛がノミなど害虫を捕獲しているシーンが気持ち悪いと意外と不評みたいで毛を剃って欲しいってリクエストが来てしまった。
まーお仕事ですからやれと言われればやりますけどなぜに女性しかいないのだ!
そりゃ男は蜘蛛の事なんか気持ち悪くは無いだろうけど…
剃るの男だよ?それでいいのか?
俺としてはモフモフの背中を触れるし剃る位置によってお尻鷲掴みだったり横乳に触れたりでご褒美なんだけど、厳しい監視がいる隣でやるには無心でやらなくてはいけない精神修行で、これはなかなかキツイものがないかい?
精神が持つ限りやるとしましょう。
いやむしろ機械になればいいのだ。そうだ!そうしよう!
いたってシンプルに肩から始まりだんだん降りていき脇から真ん中まで行き、それを腰までで一区切り次に反対側を肩から腰まで。
次に腰を上から下にお尻まで行き、最後に尻尾周りのお尻を仕上げて終了!
どうだこれで!これをルーティーン化して行えばもはや機械だろう。
茶色のふわふわな毛、白い長毛、黒いブチ、ピンク、白い短毛、茶色の剛毛、etc
これはもしや悟りの境地なのだろうか?
あれ程モフモフを楽しみにしていたはずが何も感じない。
そうだ俺は働きすぎて疲れているんだ…今日はもう休もう。
入口にcloseの看板掛けてもう寝よう。
ちょうどここに布団が引いてあるしそれに抱き枕がある。
きつね色の様な金色のフサフサな毛の抱き枕を抱きしめて寝るとしよう。
おやすみ!
「ちょっと!ケントぉ〜離してよぉ〜どうしちゃったの?いつもと違うよ!?」
すでにケントは落ちていた。テルトがいくら叫んだところで何も感じない様に心を閉ざして精神をすり減らしたケントには届いていなかった。
それは風呂が終わって様子を見に来たアーネが見つけるまでずっとそのままだった。
普段のテルトなら喜ぶところだがケントの手が回ったところはちょうどくすぐり地獄で、助けられた時にはテルトもぐったりしていた。
後の始末はアーネに託され獣人の里の夜は更けていくのだった。




