53修練のために神樹登り
神樹を目指していたケント達はかなり近いところまで接近していた。ところがどこかの騎士団と思われる一団がいくつも存在していて、魔獣に蹴散らされたり、見当違いな方向に進んでいたりと邪魔でしょうがなかった。
「な〜神樹までは明日には着けると思うんだがなんか邪魔なのがうろちょろしてるのどうするか?」
「まとめてぶっ飛ばすならやるわよぉ〜」
「次にきた魔物でも洗脳してケシかけましょうか?」
「私が咆哮を打って脅そうかお兄ちゃん?」
「……みんな発想が過激だね…」
しかしやる気があるなら構わないか?全部採用して直線距離で動くとしますか。それも有りだね。
「アーネ。左に手頃な魔物がいるから糸索人形で捕まえておいて。
テルトは風で音が良く響くようにして、合図したところに見た目だけの爆発頼むよ。
リーブも合図したら咆哮をお願いね」
さてとそれじゃあ行きますか。
アーネはどうやら猪を捕縛して操っているようだ。
サイズはデカイがまだ魔物クラスこれなら脅しにはちょうど良いかな?
神樹までは3つの団体がいるから、まずはリーブの咆哮を神樹までの直線距離でぶっ放してもらってと。
よし!集団の動きが止まったな。
次はと、テルトに風を展開してもらって、メガホンのように使って木を爆破でメキメキ倒れる音をまずは届ける。
次に操ってる猪君に一声叫んでもらって、何かに怯えて逃げるように前にいる集団を掠めて走ってもらうと…
後はレーダー見ながらなるべく猪との感覚を空けないように移動してと。
うん!上手くいったね!今のうちに急がなきゃ。
10人以上の集団は程なく強力な魔獣が接近してると思ったようで統制も取らずに散っていった。
所々進路上に来そうなのはテルトに当てないように迎撃してもらい、無事に神樹の側までたどり着く事が出来た。
「な〜テルト。これはどうしたら良いんだ?」
「いつもので壊しちゃえばぁ〜?」
神樹の見える位置まで着いたのはいいのだが、なぜか透明な壁のような物に囲まれていてそれ以上進めなかった。
テルトはいつものハサミで切り開けと言うのだが壊していいのか?
後の2人の顔を見てもそれが当たり前のような顔をしている。
しかたないやるか〜
ただ上は何処まであるか解らないし、無難なところで人が通れるくらいでやってみますか?
そう思ったらシザーケースから7インチのハサミが飛び出して、二本で丸く人が通れる穴を作って、ガラスみたいなのが倒れて砕け散った。
薄っすらと境目が解るくらいでほとんど言われないとわからないがそこを全員で通過すると、穴は再び閉じてしまった。
これは実力無いのは門前払いって仕組みなのかもね。
あの貴族とかは入れないからうろちょろしてったって事になるんだろうか。
そんなのはどうでもいいか?
進むとしよう。
まずはグルッと一周木の回りを観察してみよう。
普通に歩いて5分…外周で約300mは超えるって事か…デカイな…
直径100mくらい有るって事だろう?
そんで何箇所か穴みたいなのがあったからそれを一個一個調べるしか無いよね?
自分達の届く範囲を調べるが単に木の凹みだけだった。
次に高さのある位置にリーブが龍化して頭に乗せてくれ15m位のところまでは探査したが変わらず。
次にアーネに穴の入口に糸を付けてもらい、30m位の所までを探査したが何もなく。
最後に入った穴が広かったからみんな登ってもらい、そこからさらに上まで糸を張ってもらい振り子の原理で壁面を走り届く所に入ってみた。
たまたま届いたそこは今までと違い人工的な作りの真四角な部屋であった。
みんなにも登ってもらい、調べるが特には何もなさそうだった。
「神樹って何するところだっけ?」
「昔は魔物が住んでていい鍛錬になったって時代もあったけどぉー、今は聖女の認証とかって言ってたと思うのぉ〜」
「上の方に誰か住んでるって聞いた気がするの」
ふむ〜上ね〜
聖女なら何か力を示すと何か反応するって事だろう?
メガネ君何か情報無いの?
[魔力の放出量を測定して審判されると過去の情報にあります]
なるほど。でもここで普通に出してもダメだよね?
それなら部屋中に気を展開して流れがあるか見てみるか。
部屋の中央に胡座をかき、目を閉じ手を合わせ呼吸を深くし瞑想を始めた。
気が練り始めると次第に溢れるように広がり徐々に部屋を満たし始めた様で天井目指して広がったいく様に感じた。
3人は驚いているような感じを受けるが何も言わず見守ってくれている。
溢れた気はだんだんと部屋だけに溜まってきて、天井まで溜まると気が行き場を失い木に染み込む様に流れ始めた。
それはどんどん吸い上げられるように登っていき、どこかへ届いたのがわかった。
目を開くとそこは来た時と違う空間になっていた。入ってきた入口は何処かに消えてしまったのだろう?完全に閉じ込められてしまっている様だ。
「ここは?」
そう問いかけるも誰も答えられないままみんな呆然としていたが突如部屋が動く事によって反応してくれたが現状自分達では何も出来ることはなさそうである。
ガコッカラカラカラ
何かカラクリ仕掛けが動くような音がして、部屋が微妙な振動を始めて部屋ごとどこかに動いている様な振動が伝わってくる。
ゴゴゴゴゴ
ガタン
部屋の移動がやっと止まり壁の一部が開き、見えた先には広大な空間が目の前に広がっていた。
その中央では事務机のような物の上に沢山の書類や本が山積みの中、金色の髪の毛を腰まで垂らした女性が背中を向けていた。
「ここまで登ってくるものが居るとは久しいな。俗物まみれの人族が少しは減ったのか?」
金髪の女性がそう声を掛けてくるがその声を聞いてテルトが反応した。
「えっうそぉ〜貴女まだ生きてたの?」
「テルト知り合いか?」
「何!?テルトだと!」
俺が出したテルトの名前に反応して、金髪の女性が勢いよく立ち上がりこちらに振り向いた。
「やっぱり貴女はティートルア。再び生きて会えるとは思わなかったわぁ〜」
「テルワートやはりお前か。あの時の生き残りが再び出会うとはな。古き友よ。歓迎するぞ」
テルトとティートルアはお互い歩み寄り、抱き合い、再会を喜びあうのだった。その間俺達は放ったらかしで説明なし。まあ仕方ないか旧友との再会なんだしね納得するまで待ちましょう。
「氷の魔女がこんなに明るくなるとはな」
「あらぁ〜暗黒の召喚士が引きこもりなんて似合わないわよぉ〜」
俺とアーネ、リーブは放ったらかしはいいのだけどすごい情報が出てくるね。テルトは旧友との再会で自分の世界に入ってしまい、気にしてない様だから3人でその光景を眺めるしか無いのであった。




