44冒険リスタート
月日が経ち開拓村クレセントの初期メンバーは家族のように生活をしていた。
ゴルドが井戸の手押しポンプを作ったのをきっかけに各住居のライフラインが整備されていき、ロレッタが魔石を使った生活利用機器を作り、魔力を持たない人でも魔力の恩恵を受けれるようになっていった。
移動手段としても自転車を魔力回路抜きの物が村民に配られ、またリヤカーも接続可能な事から軽い荷物は馬も使わずに済み、手間がかからずに済んでいる。
農家の方でも温暖な気候と肥沃な大地で成長が早く、豆などの早いものが収穫可能になってきて様々な野菜類が順調に育っている。
また走鳥類の飼育は無事に成功して、放し飼いで草が主食の為手間がかからず、夜も勝手に寝床に帰るので何もする事が無く済みそうだ。この成功から次に牛のような魔物が近くに来た時に捕まえて、飼育出来るまでになってきた。豚も欲しいところだったがこの辺りで狩る猪が豚に近いので冒険者の仕事として狩猟されるようになり飼育するまでもなく確保されていた。
また海の方でもアーネの糸を板に巻きつけルアーを投げては板に巻きつけで原始的ながらルアー釣りとして確立しつつあった。
この釣れる魚により、内臓の塩漬けからいよいよ魚醤が生産され、刺身を普及させることに成功した。
それでも1番人気は冊をそのまま焼いたステーキに塩を振ったものがみんなに評判だった…刺身の市民権はまだまだ遠い様である。
他にも変わったところではゴルドとマーサのファン冒険者が後を追ってここまでたどり着いたようだ。
ここまで徒歩の旅で来たようだが、わざわざ王都からマジックバックを購入して、荷物を減らして来たそうで、金欠だから当分ここを拠点に狩りをするそうだ。
マーサの回復薬は効きが良いらしく、味も評判で普通のより飲み易くかなりファンを獲得しているそうだ。
他のはもったりとして青臭く、喉の奥にいつまでも纏わりつき飲みにくいそうで、この点が違うだけでかなりの人がファンになったそうだ。
ゴルドのところも昆虫鎧の耐久度で他の鍛冶屋が作った物とは相当差があるようで、同じ耐久度で比較して見ても今度は軽さが半分くらい違うそうだ。
武器の方でも型に流し込む鋳造と叩いて伸ばす鍛造の差みたいに根本が違うって熱弁してたファンがいた。
冒険者がきてくれたことにより生活も少し変わった。
うちの余っている部屋にジャックとシャロルが住むようになり、裏には寮が出来て宿屋の従業員とミル達4人それに追加してダンジョンで救出した娘達も数人こちらに移り住むようになった。
簡単に言うと俺の家が開拓時にいたメンバーの集合場所になったって事なんだけど、これからも人が増えるだろうからってけじめをつけるのに俺の友人という事で集合場所に選ばれてしまった。
これでたとえ住人が増えても開拓者第一陣の仲間として文句は出ないだろうという事らしい。
ギルドの方でも変化があった。
輸送路は護衛付きで馬車を運行して素材を買い付けに来る事が増えてきた。
その為職員も新たに派遣され充実されていった。
何人かは解体の研修とかで買取カウンター裏でひたすら魔物を切り刻むだけの日々で若干ヤンできてそうなのだがそのままでいいそうだ。限界を超えてまともでいれない者など役に立たないらしい。
ギルドのブラックな一面を垣間見た気がした。
村の発展に伴い俺の村護衛常駐の役割がかなり下がったようだが、どちらかというと俺をフリーにした方が勝手に探索に行っていろいろ見つけて来るだろうという事らしくその方が発展度合いが良くなるとのお達しらしい。
ご丁寧に指名依頼の形で持ってこられてしまった。
その為3輪バイクもどきはジャックに譲り新たにゴルド自信作魔力式4輪車が作られた。
これは魔石の魔力を動力源として回路制御の仕組みがロレッタの手で確立された。
今回は火魔石で連続爆破させて軸を回転させる仕組みのようで、ロータリーエンジンのような構造らしい。
車高はやや高めで、バイクを四輪にして後輪の上が2人の座席みたいになってるだけなのだが、ここまで来たなら軽トラみたいなのでも文句はなかったな〜
それと武器の方も一新された。
まずロレッタがいつの間にかたたら製鉄をマスターしてしまい、そのおかげで薙刀と双剣が作り変えられた。
薙刀は気を纏わすのがスムーズになり、鍔は炎と雷の放出が強化され、石突のところに蜂針射出機能を仕込んで撃てるようになっていた。
双剣は切るに特化して脇差サイズが二本になっていた。これは相変わらず肩から背負う形式で片側一本づつの二本なのでまるでガンダ○のビーム○ーベルみたいになってしまった。
テルトは相変わらず指輪で何個か実験的に装備させられたそうだ。
中には魔力を流すと近接で使えるようにした物もあるそうだが使ってどれが良いか選ぶらしい。ただ指10本全部にジャラジャラ指輪付けてるのってどうなんだ?
アーネは糸の先に付ける物をクナイ、ワイヤーノコギリ、鉄球、フックなど何に使うんだって物が準備されていた。それだけでくノ一でもするのか?って物も紛れてるのだが俺にはどの方向に進むのか見当がつかなくなってきた。
防具に関してはアーネの糸にいろいろ混ぜて織られた服で済ませている。
強度は問題ないので、魔力が通ると物理障壁が弱く展開するように何か詳しくわからないが仕込んであるそうだ。。
テルトはグレーのタイトミニにノースリーブブラウス…見た目袖なしにした女教師さんって感じかな?
それにガーターのストッキング。
こいつ狙ってきやがった…誰の趣味でこれ選んだんだ?理性が保てるだろうか…
アーネは黒い生地に花の様な蜘蛛柄のミニ和装にガーター…なんでこいつらは…これはロレッタの差し金か?
これは困った…深く考えないようにしよう。成るように成るさ…今はみちゃダメ。夜に理性が…
そんな事より、ロレッタが試作マジックバックを作った。
既製品を買い取り研究して試しに作り上げたそうだ。まだそんなに入るものではないが俺の武具ベルトみたいに使えるお揃いっぽくデザインにしてそれぞれ服装に合う様にしてプレゼントしてくれた。
これにより個人の装備は自分で持てるようになり、時空バックは共同品を入れるように役割分担ができた。
この中にはリニューアルした20畳ほどの小屋が入り、キッチンだけがついたシンプルなワンフロアータイプで、風呂などを別棟でさらに用意する事で対応した。他にも狭地用も用意した。これは本当に3畳ほどの寝るだけにして狭い場所でも置けるようにと用意しておいた。
ここまで揃えて今回は神樹周辺を探索する事が目的で王都から南下ルートしか正式には存在しないので、未開地を走破して人類未踏の地の実情を調べ、レホ、もしくはクレセントからの神樹ルート開拓がギルドからの名目上、表の依頼である。
裏では人造ダンジョンがないのかを確認するのが目的になっている。
虫ダンジョン救助者の中から得た情報を統合すると複数ある事が伺えた事により、かなり上の方から依頼が入ったそうだ。
もともと行く予定でいたので、ついでに恩を売っておこうとなって今回俺が受けた事により、いつでもクレセント村に支援部隊を送れるようにカイル様は手配を済ませてるそうだ。
もしあったらまた囚われの女性たちが居るだろうと…
こんな人体実験をする連中に怒りを覚えながら新たに冒険をスタートするのだった。