42便利な魔法建築
「さて。まずどこからやりますか?」
「まずは騎士達の詰所からだろ。俺たちの生命線だからな」
真っ先にゴルドが言ってきた。
「そうだね〜私らは自分の荷物を先に貰って選り分け出来れば後で構わないね」
マーサが追随した。
コールとポーラ夫妻にマックとアルト夫妻の農家二組もまだ宿生活であっても倉庫があれば問題ないらしい。
そう言う事なら将来の村長宅として騎士達の宿営地兼行政拠点として整備を始める事にした。
それと次にギルドの建築を優先するようにという事でその予定地に丸太を積み上げてもらった。
まずは村長宅として隊長室と他にも行政官が後から来るかもしれないから何部屋か貴賓室のような執務室を確保して、ホールのような集会室も完備して、何に使うかまだ役割は無いが多目的室も用意した。
また別棟で騎士の待機場と宿泊所も用意して、入口詰所と連絡を取るように櫓も組む事になった。
これは二箇所の詰所と連絡をすぐに取れるように企画されて即採用され、手旗信号で連絡を取るそうだ。城壁も柵も何も無い状況なので連絡体系はあったほうがいいとみんなの意見ですぐに作らされたのだった。
ここまで出来れば後は荷物の搬入と整理になるので、手の空いているものは手伝いに来てくれていた。
次に北東方向に動き、ギルドの予定地に移動した。
ここは一階に広いスペースを必要として受付カウンターと後々には解体スペースの分も確保して、さらには買取カウンターと保管庫、さらには会議室なども必要だがこれは二階に回し、職員の休憩室を用意する事になった。
これで解体スペースや職員の休憩室に水回りが近くに持ってこれるのでちょうどいい。
それで二階に回った会議室の他にもギルド長室や予備で多目的室も用意しておいた。
ここはきっと暴れるものも多いだろうからと壁なども厚めにしっかりとした材料で建築しておいた。
これだけの建物にしても魔法が勝手に日本の伝統工法の釘を使わない継手を加工してくれて強度も申し分なく気を練って流し込んでるだけで出来ていくのは有難いのだが…さすがにこんな大型の建物を2つも作るには俺の体力が先に尽きた。
部品の加工までは終わっていた様だが組立に流す分の気が足りてなかった様である。
地面に大の字で寝転び少し休憩していたのだがゴルドができる過程を眺めていて、やり方が判ったらしい。
騎士達を呼び出し木材を運ばせ継ぎ目をゴルドが行って、続きを組み立てていった。
しばらくは休憩して気を練り直し、粗方基礎を組んで床板も並べるだけ並べた状態で、再び気を流し込み仕上げていったらかなり節約して建築が完了した。
ケントは魔力枯渇というか一気に使い過ぎた事による体調不良で今日のところは休憩となった。
荷物はテルトがバックから出してくれているので、村長宅とギルドは荷物の搬入や小物や棚などはゴルドとロレッタが受け持ってくれて、この二軒は日が落ちる頃にはほぼ搬入が終わり完成して、その日は酒も少し出してお祭り騒ぎで終了した。
翌日はまずはじめに全部の家の使う木材の加工をしろとなった。
そうすればゴルドや騎士が建築をおこない、少しでもケントの負担が減れば全部の家が出来るのは早いだろうと意見が出て半強制でなった。
その言葉に甘えて、次々に繋ぎ目の加工をしていった。
俺は武具ベルトに入れたり出したりしながら加工が終わったのを使う位置に置いて、わかりやすい様にして次々に建築をしていった。
まずは農家の二軒を作り、それに伴い倉庫も合わせて作っておいた。続いてマーサの家には調合室と倉庫、販売棚などを備えた店舗一体型の住宅、ゴルドは工房を2人分と店舗部分に素材倉庫と住居、裏庭の実験場も整備するそうだがそっちは後回しで家部分までは木材加工を終了させた。
自分のところは後回しでこの4軒を優先して仕上げる事にした。
かなりの肉体労働であったのだが冒険者チームと騎士チーム、テルトがバックを利用して宿屋従業員の3つに分かれて次々に製作していた。
力自慢は柱を立てたり梁を架けたりして基礎を組み、宿の子達は床板を並べたりで役割分担してあっという間に農家の2軒の骨組みは形になっていた。
間取り的には日本にいた時風に言えば4dkくらいになるのかな?
夫婦だから将来的には子供も生まれるのを踏まえての建造である。
また隣に倉庫を作り、馬小屋なども用意された。
マーサやゴルドのところも基本住居は似た様な雰囲気になってるがそれぞれ店舗部分は似た様になってしまうが作業場がそれぞれ違いが出る程度に作られて、ゴルドの方は釜が入る都合で地面の上に無いと危険だったりするのでそのあたりが特別違うくらいである。
4件はある程度仕上げられていたので、完成させるのに最後に気を流して木材を接着させて終了した。
しかしいくら節約させたとはいえ、自分のところの分は力が残っていなかった。
みんな荷物を運び入れるのが忙しいし、テルトとアーネで他の家を見て参考にし間取りを決めてもらう事になった。
「ねぇ〜アーネ。ケントってぇ〜これからも増やすわよねぇ〜」
「それは間違いなく起こることでしょう。問題はどの位増えるか予想する事だと思いますテルト様」
何やら不穏な言葉が聞こえてきたがなんで増えるんだ?
うーむ?まったくわからん。
まーどんな部屋割りでもいいや。
こっそり風呂だけ作れればそれでいいや。
そんな考えをしていたらいつの間にか椅子にもたれかかりながら意識を手放したのだった。
翌日は早朝からテルトにいつもの様な誘惑も無く普通に起こされ、さっさと建設予定地に連れて行かれた。
そこには木材が用意されていて、アーネから一枚の紙を渡された。
見てみると…
部屋多すぎないか?
一階には入口入ってそこそこ広いエントランスの左側には厨房と食堂と思われる部屋、右側にはかなり広めで20畳くらいありそうな部屋があった。
二階に上がって一部屋大きいが同じくらいのサイズの部屋が6部屋もある。
そんなにいるか?
でも風呂が無い。
これだけは譲れない。
勝手に改造しよう。
大の字になって浮かべる様な温泉地に行った雰囲気を味わえそうな大きなお風呂を付け足してやる。
俺が気を練って作り始めるとなぜかみんな集まってきていた。
積み上げられた木材が次々に消費されて一本一本消えるたびに屋敷が育っていた。改めてこう見ると面白い力だよね。一本木が消えるたびに屋敷が上に伸びていく…理解の範疇を超えているが出来ちゃってるからこんな物だと思っておけば良いか〜それからだいぶ時間はかかったがなんとか完成にこぎつけた。
それと共に回りから拍手が巻き起こった。
隊長が前に出てきて
「これにて開拓村の基盤が完成してこの村に名前をつけなくてはいけないがそれはこの場所を発見したケントに頼もうと思う。みんなそれでいいな」
集まった人々は一斉に頷いてそして俺の方を向き始めた。
キイテナイヨ〜
「さぁ〜ケントぉ〜」
「ご主人様皆が待っております」
「そんな事言ったってさ〜」
その後ネーミングセンスの無い俺に向かってなんでこの場所を選んだかの誘導尋問の末、この地の三日月型の入江が気に入ったところから取られて「クレセント」と決まるのだった。