好み
マドエとユーカは、好みの方向性は似てるのに、求めてる関係が大きく異なるようだった。
二人とも明るく陽気な相手が好きだけれど、マドエは相手を管理したいし、ユーカは相手に引っ張ってほしい。
だからこそよく衝突する。
特にこの定期的な飲み会ではそれが表面化するようだった。
「明るく元気で、ちょっとアホなのが可愛いんだ。
放っておくと危なっかしくて、俺が管理してあげる必要がある子がいい。
聖性がどこまで保たれるのか観察しながら、少しずつ穢したり、管理して感謝を受け取りたい。
善性や輝きを愛でるだけでなく、自分の手で変化させ、そのうえで俺を必要とさせたい」
モラハラ夫が良く言いそうなセリフだった。
研究欲と支配欲と承認欲求がぐらぐらと煮詰まっている。
ユーカがねずみのように目を真っ赤にしながら、それに反駁する。
「明るく陽気で素直な人は確かに私も好きですけどぉ……!私の陰気さや内向性を責めず、自然に手を引いて外の世界へ連れ出してくれるようなひとがいいんですっ!私ではうまくできないことを、支えてくれてっ、まっすぐな善意で自分を引っ張ってくれるひとがいいんですっ!」
理解のある彼氏を求める女が良く言いそうなセリフだった。
都合が良いことこの上ない。
……まあ、真っすぐな光に照らされたい気持ち、分からないではないけれど。
解釈違い同担拒否とでも言えそうな二人は、箱庭への介入の仕方も異なっていた。
マドエは、気に入った相手が自分の想定どおりに変化しなくても、それ自体を観察対象として楽しめることが多いようだった。
むしろ、管理しきれない部分に興味をそそられることも記録や普段の振る舞いを見る限りよくあることのようだった。
一方でユーカは、自分が気に入っていた世界や住人との関係を、第三者に勝手に壊されるとつらいようだった。
自分が大切にしていたものが、誰かの勝手な都合で失われることには、かなり敏感で、憤慨していた。
私はユーカの領域にあまり近付くことがないので少しだけ警戒心を解かれているが。
「おーい、俺も混ぜろよー!」
「げっ……あなた、あっちでヨウさんとタヌキさんに絡まれてた筈じゃ……」
「うぜーから振り切ってきた!」
来た。
最終兵器が。
私、マドエ、ユーカの共通の敵が。
こいつは、この二人が好む存在の「明るさ」や「元気さ」を、別の方向から面白がっている。
―――――壊す対象として。
「帰れ。今俺はこいつと論議している。お前は邪魔だ」
「んなつれねえこと言うなよぉ!寂しいだろぉぁ!?」
「私達は寂しくありませんッ!!!」
「もう寝たらいかがですか?」
本当に方向性が二人以上に異なるので、二人と私はこぞって手を組み、追い返そうとする。
しかし結局飲み勝負をリフジンがはじめ、そうして先に潰れたマドエはリフジンに引きずられていってしまった。
ご愁傷様である。
この世界では過度な暴行は出来ないようにしてあるはず―――――――……
あっ。
「……あー、受肉しちゃいましたね」
「あらら……」
酔っているにしては妙に機敏な手つきでリフジンが箱庭を操作し、そこに適当な箱庭内素体を用意し、そこに憑依した。
……マドエも勝手に引きずり込んで。
箱庭の外ではリフジンとマドエがぐうすかと寝ている。
おそらく目を覚ましたマドエに後でリフジンはこってり絞られるだろうことを予見しながら、私達も解散した。




