異世界の探偵
No.1
名前:エル・サクリス
職業:探偵
注意:この世界の探偵は街中で起こった事件を解決するだけが仕事ではない。
異世界の探偵は、事件解決と共に街周辺の魔物討伐にも携わっている。
♢
探偵、エル・サクリスは自身の事務所を設け、そこにやって来る人たちの依頼を
請け負う日常を過ごしていた。
今日は其の一環である魔物討伐をすると言う。
討伐対象は街郊外にあるファール家別邸に出た“緑鬼”の討伐。
報酬は300Gだ。
「魔物討伐は相当大変なのに報酬が事件解決より安いのは何故だ…」
ファール家別邸に向かう間、エル・サクリスは報酬について文句を言っていた。
報酬300G、1G=3円のこの世界では、日本円900円となる。
900円、それは東京都でのバイト平均時給1,300~1,450円の約70%程度なのだ。
要するに報酬が安すぎる。900円じゃぁ良い物なの食べられやしない。
其れが、探偵エル・サクリスが文句を言う理由であった。
ファール家別邸、そこには異様な空気が漂っていた。
中からは呻くような鳴き声、“緑鬼”のものである、と容易に想像ができた。
探偵エル・サクリスは其の別邸にある扉に手を掛け、ゆっくりと押した。
扉からはギィィ、と鈍い音が鳴り響き、地面を擦るように開いていった。
そして、中の様子がある程度窺えるようになると同時、数匹の“緑鬼”が一斉に探偵エル・サクリスに飛びかかって来た。
『探偵は冷静さが命』
父から語られた其の言葉を胸に言動してきた探偵エル・サクリスにとってこの程度造作も無く。飛びかかってきた“緑鬼”を腰に下げていた短剣で見事に切り刻んだ。
切ると同時に飛び散ごう赫色の血、ある程度見慣れた光景…だが慣れには程遠く、探偵エル・サクリスは目を薄く瞑りながら先へと進んでいった。
「“緑鬼”の数が多い…どこかに“緑鬼王”が居るな…。」
討伐を開始してから数分。襲ってくる“緑鬼”を切りながら舌打ち混じりに言った
言葉が今のである。
して、“緑鬼”とはなんぞやと。其の説明をしておこう。
“緑鬼”とは、別名“対初心者用魔物”と呼ばれる奴であり、農地を荒らすなどの行為を行う害悪魔物である。
通常は単独や数十匹程度の群れで行動するが、数百を超える群れの場合もある。
数百超えの群れは、“緑鬼王”と呼ばれる突然変異体が群れを仕切っている。
ファール家別邸に出現した“緑鬼”の群れは、其の“緑鬼王”の居る群れであった。
「お前が…“緑鬼王”だな」
討伐を開始し実に30分以上、こちらも実に計200体以上の“緑鬼”を切り刻んだ探偵エル・サクリスはファール家別邸、謁見の間に居た。
そして其の謁見の間にある椅子に座っているのが、一際大きい“緑鬼”であった。
其の“緑鬼王”と思われる魔物は大きな口を開き、こう言葉を紡いだ。
「キサマガ…ワレノケンゾクヲタオシタヤツダナ…!」
こうして喋れる魔物は稀であり、それ相応の力を持つと言われている。
探偵エル・サクリスは其のような魔物を幾度となく討伐している。
だから、喋れる魔物程度で驚かないのだ。
「で? 君の眷属を倒したから何?」
探偵エル・サクリスは煽るかのように“緑鬼王”に向かってそう言い放った。
刹那、“緑鬼王”の右腕が落ちた。
「!? ナンダ…ナニガオキタ!!」
“緑鬼王”は理解が追いつかず、ただ焦っていた。
落ちた右腕は血も流れず、ただ置いてあるかのようだった。
右腕が落ちた理由。その真相は『見えない程の斬撃』。
探偵エル・サクリスは其の仕事柄、戦闘スキルを多く持っていた。
この世界における『スキル』とは戦闘や学習などで入手出来る「特殊能力や技能」の総称である。
先の『見えない程の斬撃』は探偵エル・サクリスの必殺スキル『瞬抜斬撃』だ。
『瞬抜斬撃』は一定時間自身の脚にある筋肉を増幅させ、其れにより手に入った
俊足で相手に切り掛かるスキル。難点はスキル使用後脚に負荷がかかる事である。
探偵エル・サクリスは其のスキルを使って“緑鬼王”に大ダメージを与えたのだ。
そしてそのまま次のスキルへ以降。二つ目のスキルの名は『二重斬撃』。
空気を俊速で切る事により『見えない斬撃』を創り、其れをもう一つ創り二重攻撃にするスキルだ。
この攻撃が決め手となり、“緑鬼王”は倒れた。
こうして、探偵エル・サクリスは今回の討伐依頼を終了したのだ。
♢
「ありがとうございます! なんとお礼を言えば良いのやら…」
その後探偵エル・サクリスは自身の事務所に戻り、依頼主のファール家現主人から感謝を受けていた。
“緑鬼王”が居た、という事で報酬は少し上がり、500Gになったそうだ。
こうして、探偵エル・サクリスの魔物討伐の一日は幕を閉じた。
因みに、『ファール家』は後々再度発生した魔物によって滅亡したそうだ。
元々没落貴族だった、というのもあるだろうが…。




