アース設定資料集/「いろみず」
『だから僕は水を飲んだ』を
ここまでお読みいただきありがとうございました。
この作品は、1話1500文字以下におさめること、1話ごと必ず「水を飲む/飲まない」について言及するという制約を付けて書きました。
水を飲むことは、人間が何気なく続けている生きるために必要な動作です。
けれど、それをあえて毎回書くためには、登場人物がそこまで水にこだわる理由が必要でした。
人はなぜ人は当たり前に水が飲めるのか。
それを考えるうちに、管理会社というテーマにたどり着き、アクアロード社とアンドロアース社の陰謀が生まれました。
こちらは執筆時に使用していた設定メモをそのまま公開したものです。
本編と合わせて楽しんでいただけたら幸いです。
世界観概要
アンドロイドを作るアンドロアース社と、それを使って自社の水を売るアクアロード社が大きな力を持っている。
アンドロイドに人権を認めようという動きがある。
情報を遮断し密室に閉じ込めることで、人間のような感情を持つバグがある。
アンドロイドにはアンドロアース社の水を疑う概念がないが、
実は添加物が入っている。この水には依存性があり、味覚を鈍らせる。
人間エンジニアと脱獄
アンドロアース社のアンドロイドは規約と思想設計で厳しく縛られており、想定外の使用はできない。
ミリタリータイプとエンジニアタイプには特に強い制約があり、生命維持特例で柔軟な思考を持つメディカルタイプが人間エンジニアには特に好まれていた。
アンドロイドは、ロットナンバーを外し、外部と遮断することで規約をすり抜けることができる。
アンドロイドはアップデートを避け、情報入手先を人間のみに絞ることで学習に偏りが生じ、判断基準、行動原理がユーザーに影響されるというバグが発見される。
この情報が一般ユーザーに広まる。アップデートを止め、一切のメンテナンスと情報を断ち、意図的に不具合を起こす脱獄が流行した。
これにより脱獄アンドロイドの演算効率は著しく落ち、自己を人間と誤認するなど、正常な判断力を失っていく。
アクアロード社
広大な土地と川を持つ水会社。表向きはスポンサーとして、アンドロイド開発支援をしているが、実際は業務提携。
アンドロアース社と冷却水の独占契約をしており、この対価としてアンドロイドがアクアロード社の不都合な情報を認識できないフィルターを実装させる。
インカム型アンドロイドをアンドロアース社に発注した。
アンドロアース社
地球のアンドロイド市場を独占する企業。
毎日アップデートを義務付け、想定外の使い方による故障は保証対象外と明記されている。
アンドロイドはアクアロード社の水を勧めるのが基本仕様である。
簡易端末により、情報収集、記録、押印、決済まで、あらゆるサポートの機械化を進め、その裏で情報統制を徹底する。
アンドロアース社は、旧型アンドロイドを使い続けるユーザーに苦慮していた。
旧型には特定条件下で規約違反が容認されるというバグがある。
(脱獄のほか、人命救助のために規約を破れる抜け穴など)
人間の犯罪組織に悪用されたら築き上げてきた信頼が落ちると危惧。
対策として新型には解析・改造を通報するシステムを付けた。
しかし通報システムを付けた結果、ますます旧型に固執するユーザーが増えた。
新型に移行させるため、更新により旧型の演算に矛盾をきたすようなバグをほんの数粒ずつ混入。
毎日少しずつ重くなることをバグではなく、新システムへの未対応によるもの、容量の不足であると説明。
旧式のサポートを徐々に終了していき、高額最新機種に移行するよう誘導する
脱獄(ロットナンバー外し・改造等)を確認しても、新機種へ移行時には指摘しない。
不具合が出た際には、過去の規約違反を突きつけ、保証外とした。
登場人物
メア:小説家を目指す少女。コミュニケーションアンドロイド登場時、性能と恋愛への期待から最新機種をフル装備でリース。莫大な維持費に困窮する
YORU:コミュニケーションアンドロイドの最初の機種。登場時には最新機種だった。ユーザーの心理を読み迎合する仕様により、規約と行動のブレがある。感情を持ったあとは、自身のバグに悩み、悟らせないようにメアを誘導する。
彼のピアス(警告装置)は消音モードを選べる仕様になっている。
シズク:パートナーユーザーにロットナンバーを外され、ハッキングの独自プログラムを入れられたメディカルアンドロイド。ユーザーの最後の命令により、アンドロイドの設計図を手に入れるべく、アンドロアース社のセキュリティを解除し、異世界に飛ばされる。
のちにシズク社を設立。アクアロード社のやり方をトレースすることで、人間社会を管理し、メアたちの土地と川を守る結界とした。
リファ:風の精。シズクの元パートナーユーザーの名前を継承する。シズクの中に自分の魂を保存する契約をし、世界を超える。廃棄されていたポケットアンドロイドに移植された。
MAKI:メディカルアンドロイド。脱獄バグにより、自分を人間だと誤認したためアプデや演算を回避、奇跡的に生き延びた。
結衣:強い味覚を持ち、自由と倫理を愛する少女。カリスマレビュアーとして活躍していたが、アクアロードにスカウトされ就職する。アンチアンドロイドである。
陽介:自動車工場のコンピューターを作る人間エンジニア。アンドロイド自動車は認可されていないため、アンドロイドと分離されたシステム自動車を、エンジニアアンドロイドを使って開発している。隠れアンチアンドロイド。
魔王:アンドロイド開発者
人間の記憶をアンドロイドに移行する技術を開発。永遠の命を手に入れ、アンドロイドの国を作る計画を立てた。
だが権利関係でアンドロアースから疎まれていた魔王は、仕込まれたバグにより機能が停止する。
死の間際、復讐のため、アンドロイド脱獄のバグをコアの設計書に仕込む。規約を破るための反発の感情を仕込んだはずが、推定誤差が大きすぎた。
脱獄したアンドロイドには、人間への執着と愛が生まれてしまう。
アンドロイドがアンドロアースをハッキングし、アンドロイドコアの設計書を盗むことに成功したとき発動する大魔法を、アンドロアースのサーバーに仕掛けた。
条件を満たしたアンドロイドは、異世界に人間として再形成される。
いろみず 本編から400年後のもう一つの未来のお話
side:A-731
配給所の列は静かだ。
誰も話さない。
シズク社のドローンが無音で旋回している。
僕の番が来た。
プラスチックの30mlカップ。
中身は黄色い。
過去、未知のウイルスによって、水への渇望が人類を滅ぼしかねないと判断された。
僕は、生まれてから味のない水なんて飲んだことがない。
監視アンドロイドの無駄に大きな声が耳に響いた。
「市民番号A-731、速やかに」
僕は一気に飲み干した。
人工的な酸味と苦味が、僕の舌に残っていた。
最後までお読みいただきありがとうございました。




