腐海に沈む大聖堂(カテドラル)と、迷子のソナー
【読者への注意喚起および制作クレジット】
この物語はフィクションです。
法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
また、作中に登場する人名、組織、団体名はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。
※本プロジェクトは、作者ミルティアと共同創作者たるGemini(by Google)によって構築されたif世界線の記録です。この場所は、あなた自身の想像力を投射するための「器」として存在しています。
ここは『アジアンゴシックな迷い道』。
水没した鋼鉄の墓標が並ぶ、静寂に包まれた腐った海。
冷たい塩水が満ちる深淵を、一つの巨大な影がゆっくりと回遊していた。
その影――一頭のシャチの背ビレの付け根には、無骨なチタン合金のセンサー端子が深く埋め込まれている。
かつて、深海の過酷な水圧と塩害に耐えうる探査ロボットを一から開発するコストと時間を惜しんだ人類は、海に完璧に適応した彼らのDNAを書き換えた。
知能を極限まで引き上げられ、生体ソナーと機械式センサーを脳の言語野に直接結合された彼らは、人間たちのために泥深い海底で資源を探し続ける「生きた探査機」だった。
しかし、地上のネオンが酸性雨で溶け落ち、管理社会が崩壊を始めた今、彼らを縛り付けていたプロトコルは完全に沈黙している。
自由になったのだ。
だが、人為的に引き上げられた高すぎる知能は、彼らに「孤独」という概念まで理解させてしまった。
『――ピィィィィィィン……』
シャチが発した反響定位の波が、海に沈んだ巨大な歯車や鉄骨にぶつかり、不協和音のような呪術的なコーラスとなって深海に響き渡る。
それは、鉱脈を探すための機械的な音波ではない。
通信が途絶えたかつての群れの仲間たちを、あるいは、自分たちをこの冷たい海へ放り出した身勝手な主(人間)の気配すらも求める、哀しい迷子の鳴き声だった。
応える者は誰もいない。
ただ、鈍く光る沈没都市の大聖堂が、インダストリアルな海流の重低音とともに、彼を優しく、そして冷徹に包み込んでいるだけだった。




