終わらない終わりの始まり
"ラビ"さんは、わたしを本当に恋人扱いしてくれて。
たった一日の恋人ごっこは、夢のような時間だった。
けれど世界に終わりは来て。
振り出しの先、優しい恋人はもういない。
これで良い。一日夢を見られたのだから、上出来じゃないか。
そう思って、わたしはまた、終わりに向かって歩き出す。
また、あの子と"ラビ"さんを会わせるために。
『あなたがラビ、さん?』
『そうだよ。きみが、トモくんかな?』
最初の会話は変わらない。あの子と関わっていない"ラビ"さんの行動は、一緒だから。だからわたしは、いつも通りに声を掛ける。
「あなたがラビ、さん?」
彼はいつもと同じように微笑んで。
「そうだよ、麟くん」
けれど発した言葉は、いつもと違うものだった。
「なんで、本名を……どこかで会ったことありましたっけ?」
内心動揺しつつも、舞台でだってハプニングは付き物だ。とっさにアドリブが口を突いてくれる。
「何度も会っているよ。"前回"は、恋人同士にすらなった仲じゃないか」
あれは恋人になったわけじゃなく、あくまで恋人ごっこで。
「"世界は終わらなかった"よ、さあ、責任を取って、麟くん」
世界は確かに、終わったはず。
頭が真っ白になったわたしに、"ラビ"さんはうっそりと微笑んで。
「末長くよろしくね、麟くん」
終わり続ける世界で。終わるはずだった物語の幕が、こじ開けられる音がした。
拙いお話をお読み頂きありがとうございました
本編はこちらで終了で残りは蛇足です
よろしければ今少しお付き合い下さいませ