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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
終章 悠斗と倖楓
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友人からの事情聴取

「で?何から話せばいい?」


 俺は投げやりな言い方をして、槙野と明希に聞いた。


 決して褒められた聞き方ではなかったが、俺が話す気になったことに満足しているのか、2人が気分を害した様子はない。


「そうね…。まずは、そもそも倖楓ちゃんと付き合う気があるのよね?」


 槙野はいつになく真剣な眼差しで俺を見ている。

 それだけ倖楓のことを大事に思ってくれているということだろう。

 それがわかってしまうから、俺もいい加減なことは言えない。

 ただ、どうしてもハッキリと言い切れない自分がいた。


「…無いわけじゃない」

「なによ、それ」


 やはり俺の曖昧な言い方が、槙野には気に入らなかったらしい。


「倖楓ちゃんのこと、好きじゃないわけ?」

「好きだよ…」


 それだけは、俺の中でハッキリしている。

 以前までの俺なら、この気持ちを倖楓に打ち明けるなんて、選択肢にも出せなかった。

 でも、今こうして迷っているのは、それが抑えきれなくなり始めているからに他ならない。


「じゃあ、何を迷ってるのよ」


 煮え切らない俺に、槙野が不満を滲ませた。

 槙野の気持ちは俺自身ですら共感できる。結局、俺は中途半端なのだ。


「香奈、落ち着けって」


 この場にいる中で、明希だけは違うようだ。

 決して俺に呆れても不満に思ってもいない顔だった。


 そんな明希に、槙野は不満を漏らした。


「だって、明希も2人にはいい加減、幸せになって欲しいでしょ?」

「それはもちろん」

「だったら…」

「俺たちだってそう簡単にいかなかっただろ?悠斗達には、悠斗達なりの事情があるんだよ」

「それは…、うん…」


 明希の言い分で納得できたのか、槙野のさっきまでの勢いが無くなり、しおらしくなる。


 そんな様子を見て、今度は明希が話を進めることにしたようだ。


「まあ、悠斗が遊佐さんを好きなことは前提として、それよりも聞いておかなきゃいけないことがあると思うんだよ」

「なに?」


 俺が聞き返すと、明希は飲み物を飲んで一息吐いた。


「4人で水族館に行ったときに2人で話したこと、覚えてるか?」


 無言で、俺は頷いた。

 忘れられるわけがなかった。


「あの時は時間も無かったし、他にも悩みがあったから聞けなかったけど…、今日聞かせて欲しい。悠斗と遊佐さんに何があったのか。もちろん、悠斗の話せる範囲でいい」


 あの時のことを誰かに話すのは、今でも怖い。

 でも、明希と槙野のことを俺は信じている。

 もうあの時の、何もわかっていなかった俺とは違うのだから。


「話すよ。少し、長い話になるけど」


 俺はそう切り出して、倖楓と離れることにした出来事を全部話した。


 槙野は話の途中で憤った顔をしたが、明希が宥めていた。

 でも、そんな明希の右拳も強く握られていて、それでも黙って俺の話を最後まで聞いてくれた。

 俺のためか、倖楓のためか、あるいは両方のために怒ってくれていることが、素直にありがたいと思える。


「…話してくれて、ありがとな」

「いや、こっちこそ、聞いてくれてありがとう」


 そして、明希は聞いた話を消化するために少し黙り、俺も話し終えた安堵から黙っていた。


 しかし、槙野だけは違った。


「……ない」

「え?」


 槙野が何か口にしたが、上手く聞き取れなかった。


「わかんない!」


 大声とまでは言わないが、周囲に聞こえるくらいの声量を槙野が出した。明らかに怒っている。

 隣のテーブルに人がいなくて良かった、と心から思う。


「そんなに説明下手だったか?」

「違う!内容はわかったけど、水本のことよ!」

「俺?」


 むしろ話したのは俺のことなので、槙野が何を理解出来ていないのか、俺の方がわからなかった。

 明希に助けを求める視線を送ったが、ここまで我慢させた槙野を押さえるのは難しいと言わんばかりに首を横に振られた。


 俺は仕方なく、槙野に気の済むまで喋って貰うことにした。


「水本が倖楓ちゃんから離れたのは、私も同じようなことしたし…、良くはないけど、仕方ないと思う」

「あ、ありがとう?」


 てっきり、そこは怒られるのかと思っていたので驚いた。


「でも、その後よ!」

「え?」

「どうして高校で再会して、そんなことがあってもあんなに仲が良くて、好きだと思ってるのに告白しないのかってことよ!」


 結局、初めの疑問に戻ってきたらしい。

 俺の打ち明けた話なんて大して関係ないように思えて、乾いた笑いが出る。


 告白をしない理由。

 ずっと、また倖楓に何かあった時に俺がちゃんと守れる自身がないからと思っていた。

 でも、今ならもっと単純な理由を言える。

 ―――――怖いんだ。


「今更、自分から離れた奴が、“好きだ”なんて言っていいのかって思うんだよ…」


 弱々しく口にした俺に、槙野は、


「ばっかじゃないの?」


 堂々と、正面から否定した。

 そこに俺を軽蔑するような感情はなく、ただ叱るように。


 呆気にとられている俺に構わず、槙野は続ける。


「あんた、倖楓ちゃんが水本のことどう思ってるかくらい、わかってんでしょ!」

「それは…」

「ていうか、()()()()()()()()()そんなにグズグズしてるのが、一番意味わかんない!」


 全部正論で、何も言い返せない。

 倖楓が俺のペースで良いと言ってくれたことに、甘えていただけなのだと思う。


「…ん?」


 落ち着いて考えると、今の槙野の発言に違和感がある。


「なあ」

「なによ?」

「なんで俺とサチがキスしたって知ってるんだ…?」


 俺が問い詰めると、槙野は目線をゆっくりと明後日の方へ向けた。

 誤魔化すのが下手過ぎる…。

 まあ、誰が喋ったかなんて考えるまでもない。

 脳内で、犯人が『てへぺろ』としている光景が目に浮かんだ。


「悠斗、意外とやることやってるんだな…」

「変な言い方するな!」


 帰ったら、倖楓に絶対文句を言ってやろうと、俺は心に決めたのだった。

次回更新は月曜日の20時頃になると思います。

変更があれば、またお知らせします。


新作も同時に更新していますので、気が向いたら読んでみてくださると嬉しいです。

どちらの作品も、感想などお待ちしております。

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