表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第4.5章 夏の終わり
82/111

元通りになるために

連続更新の1回目です。

「明希から連絡来てないの?」


 俺が尋ねると、槙野はスマホを取り出す。


「…来てる」


 しかし、折り返すのかと思いきや躊躇っている。

 まだ逃げたことが心に重くのしかかっているのだろう。


「じゃあ、明希がいる場所だけ聞いてくれない?」

「場所だけでいいの…?」

「ここから移動するにしても、バッタリ遭遇したりするのは困るからな」

「わかった」


 槙野がメッセージを送ると、明希からすぐ返信が来た。

 どうやら、槙野が離れた時の場所からそれほど移動していないらしい。


「よし、俺が行ってくるよ」

「え?水本1人で?」

「槙野が戻り辛そうなのもあるけど、戻ったら戻ったで状況が変わるか微妙なところだと思うし、上手いこと言って俺達が元々一緒に行動する予定だったことにするよ」


 我ながら強引だとは思う。でも、相手も強引というか空気が読めてないと思うしお相子だ。

 それに、槙野が凹んでたんだから明希の方も相当メンタルにきてるのは想像できる。ゴリ押した方が案外スムーズかもしれない。


「それなら、私達もゆーくんと一緒の方がいいんじゃない?」


 倖楓は不安そうに同行を申し出る。

 俺もその方が良いとは思う。ただ、その場合の不安要素が大きい。

 具体的には、「それなら皆で見よう」とかなんとか言って付いて来ようとしてくることがありそうに思えた。というか、すでに空気を読めない行動をしている時点で、ほぼあると思っている。


「2人がいると向こうが一緒にって言い出すかもしれないからさ。1人の方が事情を説明するのも楽だし」

「…うん。わかった」


 倖楓は渋々といった様子ではあったが、納得してくれたみたいだ。


「とりあえず、花火見る場所も決めなきゃだし、移動しようか」


 2人にそう告げて、俺達はその場を後にした。




 移動を始めて20分くらい経った頃、土手の端の方ではあるが空いている場所を見つけた。槙野がレジャーシートを持って来ていたので、それを敷いて倖楓と槙野に座って待っていてもらうことに。


「じゃあ行ってくるけど、何かあったらすぐ連絡して」

「わかった」

「いってらっしゃい、ゆーくん」


 俺は2人から離れて、明希が待っているはずの場所へ向かう。

 向かう直前に、改めて槙野に場所を聞いてもらったのでそこで待っているはずだ。もちろん俺が行くとは言っていない。


 10分程度歩くと、人混みの隙間から明希の姿が見えた。

 すると、明希にも俺が見えたらしい。人混みの中から槙野を見逃さないように目を凝らしていたのだろう。その顔は驚いていた。

 そして、後ろにいる5人が槙野の話に出ていたバスケ部の連中だろう。

 俺は人の流れのまま進み、明希の前に出る。


「…悠斗、なんで…」


 色々と頭の中が混乱しているらしい。

 大体、想定の通りだ。

 明希のそんな様子に、後ろの面々もさすがに違和感を覚えたようだった。


「久木、どうした?」

「誰?」


 2人の男子が明希に声をかけた。

 すると、今度は女子の1人が声を上げる。


「あ、1組の遊佐さんとよく一緒にいる人だ。…ほら、球技大会で鈴木と…」


 一応、顔は知られているらしい。後半は最後まで聞こえなかったが、球技大会での出来事を言っているのだけはわかった。そんなに大した話でもないし、出来ればあまり広めないでほしい…。

 仲良くなりに来たわけでも無いし、わざわざ自己紹介する必要も無さそうだ。とりあえず挨拶だけしておこうか。


「どうも、はじめましてー」


 久しぶりに外面良くしてみたが、問題なく切り変えられた。

 そして、すぐに明希の顔を見る。


「何してんだよ、行くぞ」


 取り繕ったまま明希に対して話すなんて、いつぶりだろう。


「…え?」


 明希はまだ思考がまとまっていないようだ。

 すべて突然のことなのだから当然だとは思う。


 突然のことに驚くのは明希だけではない。


「どういうこと?」

「てか、槙野さんは?」


 他のやつらも困惑している。


 すかさず俺は、予め決めていた設定を話す。


「あれ?もしかして言ってないの?元々、俺達で見ることになってたんだよ」


 こうしてさらっと嘘を吐けるのは、我ながらどうかとは思う。まあ、悪事とまでは言わないが誰かを傷つけたりするための嘘ではないのだから多少は許されるだろうか。


「明希と槙野には買い出しを頼んでたんだけど、そこでみんなに会ったらしいね」

「あ、あぁ…」


 明希もようやく頭が回り始めたのか、俺の話に合わせてきた。


「槙野が途中でどっか行ったのは買い出しを終わらせるためでさ、明希はみんなと別れるのが言い出しにくかったらしいんだよ」


 俺がそう言うと、バスケ部の面々は明希を見る。


「そうなの?」

「…実は、そうだったんだよ」


 明希はなんとか作った苦笑いで答える。

 すると、女子の1人が、


「じゃあ、みんなで一緒に見ればいいんじゃない?」


 やっぱり来た。

 他のメンバーも「たしかに」や「いいね」なんて同調している。


「もう場所取っちゃっててさ、この人数で見れるスペースじゃないんだよね」


 こうなったら1つずつ、同行出来る可能性を潰していくだけだ。


「それなら見る時は私達は別の場所に行くとか!」

「こっちに人見知りのやつがいてさ。俺も大人数は苦手だから、申し訳ないんだけど」


 作った苦笑いで、今度はやんわり断る。


「………」


 女子は何も言い返してこなくなったが、まだ不服そうだ。この人が槙野の言ってた明希にベッタリなやつに違いない。

 仕方ない、一番無難な理由を見せよう。


「あとさ、正直な話、球技大会の時からバスケ部の人に対して印象があんまり良くないんだ」

「それは…」


 本心は全く気にしていない。むしろ個人の印象を集団に重ねるのはどうかと思うくらいだ。

 ただ、世の中そういう人も少なくないし、それを否定するのも難しい。

 目の前の女子や他のやつらも、そこまで深く考えるまでいかなくとも、さすがに球技大会での内容を知っているだけあって、強く出れないらしい。


 この辺りが潮時だろう。

 俺は明希の目を見て、


「ほら、槙野が待ってるぞ」


 と、きびすを返す。

 バスケ部の連中のことは、もう見向きもしない。


 明希も、ここで大事な方を選べないほど優柔不断ではない。


「ごめんな!今度埋め合わせするから!」


 そう言い残して、歩き出した俺の後を追って来る。


 人混みに紛れた後も、俺達は振り返ることなく歩き続けた。

今日はあと2回更新があります。

次は18時頃の予定です。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ