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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第4章 それぞれの夏
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夏の始まり(3)

お待たせしました。

「ゆーくん!このオフショルなんてどう?」


 倖楓が、ハンガーにかかった水着を俺に見せて意見を求めてくる。色はご丁寧にパステルブルーを選んできていた。


 諸々の都合で試着が出来ないので、制服の上から水着当てて確認をすることになっていた。1着ずつの交代制だが、俺はずっと見せられているので、すでにヘトヘトだ。


「だから、何回も言ってるけど、どれも良いと思うってば…」

「んー、反応が薄い…。やっぱりもっとセクシーなやつがお好みなのかな…」


 人に意見を求めるくせに、人の話を全く聞かないという、わけのわからない状況になっていた。俺がため息をつくと、倖楓が次の水着を探しに行く。


 そして次は茉梨奈さんの番。かれこれ10周目くらいだろうか…。


「これなんてどうかしら?」


 そう言って見せてきたのは、バストのフロント部分がクロス状になっている水着で、わりと際どいように見える。茉梨奈さんが持ってくる水着は毎回形が違ったが、ある共通部分があった。それは、


「…なんで毎回黒なんですか?」


 倖楓は青系だけを持って来るのに対して、茉梨奈さんは黒だけを持って来ていた。もしかして色の役割分担でもしているのだろうか…。


「あら、黒は嫌いだったかしら?」

「べつにそういう話はしていません!」


 そもそも俺の好みで水着を決めることに意味なんてないだろうと思う。


「ところで、月末のお祭りはどうする予定なの?」

「え?ああ、2日目に明希と槙野とサチと一緒に行くことになってますね」

「そう、1日目は?」

「そっちはバイトですね」


 俺が予定を伝えると、茉梨奈さんが考え込んだ。しかし、すぐにこっちを見て、


「2日目に私も一緒に行けないかしら?」


 いつもみたいに命令口調ではなく、普通に相談されると、つい二つ返事で許してしまいそうになるが、さすがに1人で決められることじゃない。


「俺はいいですけど、他の3人に聞かないとわからないですね」

「それもそうね、私から連絡してみるわ」

「わかりました」


 これで次の水着を探しに行くのかと思いきや、茉梨奈さんがまだ会話を続ける。


「そういえば、バイト先は飲食店だったかしら?」

「そうですよ」

「次はいつバイトがあるの?」

「…明日ですけど」


 明らかに不穏な会話の流れに、俺は警戒心を強める。


「そう、場所を教えてくれる?」

「参考までに理由をお聞きしてもよろしいでしょうか…」


 営業スマイルで理由を尋ねる。上手く笑えている気はしないが。


「行くために決まっているでしょう?」


 そんな「バカなの?」と言いたそうな顔をしないでください。


 ここで嫌ですと断ることもできるが、恐らく自力で突き止めて来店する気しかしない。いや、間違いなく橘茉梨奈ならやる。それなら少しでも機嫌を損ねないように立ち回るのがベストだと思う。


「…わかりました。詳細は後でメッセージで送ります」

「ええ、お願い。今日中よ?」

「わかりました…」


 こうして、茉梨奈さんの来店が確定した。






 翌日、昼のルピナスにドアベルが響く。またお客さんが来たようだ。俺は接客に向かうと、そこには―――


「空いてるかしら?」


 茉梨奈さんが立っていた。


 まあ、予想できたことなので特に驚かない。普通に接客しよう。


「はい、テーブル席でよろしいですか?」

「ええ」


 スムーズに茉梨奈さんを席に案内する。()()()()の時はここまで来るのに、倍以上の時間がかかったな…。茉梨奈さんを案内した席は、奇しくも誰かさんの時と同じだった。


「すぐにお冷お持ちしますね」

「ありがとう」


 本当にスムーズに接客できる。俺は謎の感動を覚えた。


 お冷を取りに下がると、()()()()が近づいてきた。明らかに怒った顔。接客業なんだから、そんな顔したらダメとか言ったら叩かれそうだ。


「どうして橘さんが来たの!?」

「昨日聞かれたから教えた」

「私の時は教えてくれなかったくせに!」

「教えなくてもどうせ来るって、誰かさんで学んだんだよ」

「もうっ!」


 まだ倖楓が何か言ってるが、仕事中なのでこれ以上はスルーすることに。俺はお冷を持って茉梨奈さんの席へ。


「お冷お待たせしました」

「注文いいかしら」

「はい」

「オムライスと、食後にチョコレートケーキとアイスコーヒーをお願い」

「かしこまりました」


 変な注文もしてこない、これが正しいお客と店員の関係だ。やっぱり素直に教えてよかったと思う。しかし、俺が下がろうとすると、茉梨奈さんが話しかけてきた。


「その恰好、似合ってるわね」

「…どうも」

「ところでお祭りの件だけど、槙野さんと久木君から許可が出たわ」


 最初の一言は、話の切っ掛けか。イジられるのかと思った。


「そうですか、仕事中なんでスマホ見てなくて」

「自分で言うから送らなくていいって言ったの。だから大丈夫」

「なるほど」

「それだけよ、引き止めてごめんなさい」


 俺は改めて下がる。すると、また倖楓が絡んできた。


「仕事中なんだから、お客さんと会話してちゃダメだと思います!」

「いや、誰かさんが来たときも会話に付き合わされた記憶があるんだけど?」

「そんな人知りませーん」


 都合の良い頭だと呆れてしまう。


「とにかく!次から私が接客します!」

「でもサチ、茉梨奈さんとすぐケンカするでしょ?」

「しないよ!」


 ムキになってるけど、どこからその自信がくるんだろう…。


 俺が倖楓に困っていると、海晴さんが話に混ざる。


「なになに?あのお客さんお友達なの?」

「学校の先輩です」

「へー!綺麗な人だね」

「まあ、そうですね」


 俺がそう言うと、二の腕に刺すような痛みが走る。


「痛っ!」


 倖楓がすごい力を込めてつねってきていた。俺はすぐに退避して二の腕を摩る。これは手におえないくらい不機嫌だ…。


「あー!」


 急に海晴さんが納得したような声を上げた。すると、倖楓の両肩に手を乗せて、


「倖楓ちゃん、頑張ってね!」


 と真剣な顔で応援した。


「はい!」


 倖楓も真剣な顔でそれに応える。なんで倖楓は急に応援されることが多いのだろうか?




 出来上がったオムライスを俺が持って行こうとすると、倖楓が先に取って持って行ってしまった。まあ、仕事だし任せることにする。


 少しして倖楓が戻ってきたが、また不機嫌な顔になっていた。今度はどうしたのか。


「どうしてお祭りも来ることになってるの!」


 どうやら今聞いたらしい。


「昨日聞かれたから、明希達にも聞いてくださいって言ったんだよ」


 俺がそう言うと、倖楓は腕組みをして納得いかなそうに黙り込んでしまった。




 その後、茉梨奈さんの食べ終わった皿を片付けてからデザートとコーヒーを運ぶと、また話しかけられる。


「そういえば、次に予定が空いている日はいつ?」

「明日は暇ですね」

「そう。明日、私に1日ちょうだい」


 まあ、実際に予定は無いので問題ない。


「まあ、いいですけど」

「いい?絶対に2人でよ?」


 すごく念押しされる。別に誰かを誘うつもりもないのに…。


「わ、わかりました」


 明日の予定が、思いもしないタイミングで決まった。


 戻ると、今日はもう見慣れた倖楓の不機嫌そうな顔が出迎えた。


「…何の話してたの?」

「明日、出かけることになった」


 俺がそう答えると、倖楓が目を大きく開いて、


「明日は部屋で過ごす予定だったでしょ!」


 そこそこ大きな声で言ってきた。


「そんな約束してないし、それは予定とは言わない!」


 それから、倖楓の文句が15分程続くと、茉梨奈さんが伝票を持って席を立った。


 それを見た俺はレジで茉梨奈さんを待ち、伝票を受け取って会計をする。


「レシートいりますか?」

「大丈夫」

「はい。ありがとうございました」


 俺が店員としての挨拶をすると、茉梨奈さんは俺を見て、


「それじゃあ、また明日ね」


 と微笑んだ。すると、すぐに目線を横にずらして不敵な笑みに変わった。


 俺がなんだろうかと思っていると、茉梨奈さんは何も言わずに店から出て行った。


 俺も戻ろうと向きを変えると、すでに腕を組んでそれはそれはご立腹な倖楓が立っていた。…もう勘弁してくれ。


 そう思いながら戻ると、海晴さんが、


「いやー、あれは強敵だね」


 と感心したように言う。意味がわからない。


「はい?別に戦ってませんよ?」

「悠斗くん…。はぁー」


 海晴さんがすごく大きなため息を吐いた。


 俺は全然納得がいかないまま、1日バイトをするのだった。

昨日は更新が出来ずにすみません。

急に予定が変わる場合は活動報告に書きますので、あれ?と思ったらチェックしていただけたらと思います。


そういえば、昨日でこの作品の投稿を始めて1ヶ月でした。

ブックマークや評価や感想などで反応をくださる皆さんのおかげで、なんとか投げ出さずに続けてこれました。

本当にありがとうございます。


明日はちゃんと更新がある予定なので、よろしくお願いします。

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