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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第2章 新たな日常と変わらないもの
21/111

2人の午後

気が付けば20話超えました。

今後もよろしくお願いします。

 バイト終わりに倖楓に引っ張られながら、俺たちは駅の方へ向かっていた。なんか前にもこんなことがあったなと思う。


「どこ行くわけ?」

「お昼食べよ!」

「それなら洋介さんの料理食べればよかったのに…」


 ディナーのバイトは無いが、まかないは作ってくれるはずだったのに倖楓が断ってしまった。


「それももちろん美味しいけど、行きたいところがあるの!」


 どうやら食べたい物があるらしい。俺は黙って連れて行かれることにした。




 しばらく歩いていると倖楓が突然止まった。目的地に到着したらしい。


「ここ!」


 そう言って指を刺したのはラーメン屋だった。


「ラーメン食べたかったの?」

「そうなの!ずっと来てみたかったお店なんだ!」


 再会した日に連れてかれたのはケーキ屋だったので、ラーメン屋に来たかったとは意外だった。そういえばケーキ屋もこの近くだったな。


「じゃあ入るか」

「うん」


 俺たちは店に入って券売機の前で止まる。


「何か目玉のメニューがあるの?」

「うん、担担麺です」


 なぜかドヤ顔だ。そんなに好きなのだろうか。


「へー、それじゃあ醤油豚骨に―――」

「なんでそうなるの!?」

「冗談だよ、担担麺ね」

「もうっ」


 2人で食券を買って店員さんにそれを渡し、カウンターに並んで座って出来上がるまで待つ。


「でも、サチが辛い物なんて意外だった」

「そうかな?」

「昔はダメだったよね?」

「あー、たしかにそうだったね」

「いつから好きになったの?」

「中学2年の時にね、むしゃくしゃする事があって。勢いで食べてみたら好きになったの」

「そ、そうなんだ」


 倖楓からむしゃくしゃというワードが出たことにも驚いたが、人の食の好みを変えるほどの出来事ってなんだと思う。


 思ったより早く担担麺が出てきたので、この会話は終わってしまった。


「あ、おいしい」

「だね!マンションからも比較的近いし、何度も来れるね!」


 本当に好きなんだな。それから2人とも夢中で食べていて会話もなく食べ終わる。


「ごちそうさまでした。待たせてごめんね」


 俺の方が早く食べ終わっていたので、倖楓を座って待つ形になっていた。


「いいよ、出ようか」

「うん」


 2人で店を出ると、倖楓が元気に次の目的地の提案をしてきた。


「甘い物食べたいからケーキ屋さん行こ!」

「まだ入るの?」

「ゆーくん、ケーキを前にして女の子にそんなことを聞くなんて愚問だよ?」

「あ、はい」


 俺が悪かったらしい。とはいえ、俺もお腹に余裕があったので文句はない。俺は行く当てに確信を持ちつつも倖楓に確認をする。


「ここからだと、前に行ったとこ?」

「そのつもり!」


 すぐに場所が決まったので店の前で立ち止まるということもなく、移動を始めた。




 ケーキ屋に到着すると、お茶をするのに丁度いい時間帯だからか混んでいた。外で数組が待っているほどだ。


「並んでるね、どうしよう」

「俺は待ってもいいよ。サチが他にもお店知ってたらそこでもいいし」

「んー、それじゃあ待とっか」

「わかった」


 待機列の最後尾に並ぶ。幸いなことにまだ椅子が残っているので座って待つ。


「ここに来るのも久しぶりだね」


 倖楓が急にそんなことを言ってくる。そういえば前回初めて来た時から今日で1週間だ。


「まだ1週間だよ」

「あの時は1週間後もこうしていられるか不安だったんだよ?」


 倖楓が苦笑気味に言う。あんなに勢いが強かったからそんな風に思ってたなんて考えもしなかった。なんだか、どこまでも関わらないようにしたのを申し訳なく思ってしまった。


「…なんか、ごめん」

「ううん、責めてるんじゃないんだ。とにかくこうして一緒にいられて嬉しいなって」

「一緒にいるっていうか、一緒にいられてるの間違いのような」

「もうっ、すぐそういうこと言う」


 そんな会話をしていると、出口から4組ほどの客が一気に店を出た。それからすぐに店員に呼ばれて席へ案内される。


「思ったより早く入れてよかったね」

「だな、タイミングが良かった」

「ゆーくん、今日は何にする?」

「んー、チーズケーキかな」

「チーズケーキかー、じゃあ私は紅茶のシフォンケーキにしよ」




 注文してからは、混んでいるのに思ったよりすぐに運ばれてくる。少しでも回転率を上げるためだろうか。運ばれてきたケーキを見て、俺は先週のことを思い出していた。再会したのは学校だけど、思えばこの店から始まったように思う。そうやってぼんやり眺めていると、倖楓が話しかけてきた。


「どうしたの?ぼうっとして」

「いや、なんでもないよ」

「当ててあげよっか」

「だからなんでもないって」

「先週のこと思い出してるでしょ」


 そこまでわかりやすく顔に出てるだろうか、そんなつもりはないのだが。


「そうだけど…」

「もー、しょうがないなぁ。ゆーくんは欲しがりさんなんだから」

「え?」

「はい、あーん」


 同じ日を思い浮かべていても考えてることは全然違った。ていうか、こんなことしてたなとため息がでる。


「そんなこと考えてないから。いらないよ」

「んっ」


 ケーキを乗せたフォークを一層近づけてくる。先週来た時みたいに注目される前に食べることにした。


「はい、よくできました♪」

「俺はちびっこか…」


 恥ずかしい思いをしているとこっちに向けられる視線を感じた。横目で見てみるとこっちを見ながら小さい声で話している。先週来た時に感じた視線とは違う感覚。もしかしたら彩天の生徒かもしれない。失敗したなと俺は反省する。すると倖楓が少し怒ったように話す。


「あんなの気にしたらダメ。私とゆーくんには関係ないんだから」

「俺はそんなに強い考え方できないよ」

「大丈夫だよ、私が一緒にいてあげるから。それなら強くなれるでしょ?」


 その笑顔も、考え方も、俺には眩しすぎる。倖楓に気を取られて、それからは視線が気にならなくなっていた。


 2人ともケーキを食べ終え、倖楓は出る前にお手洗いに行った。テーブルで待っていると、店員がお冷を注ぎに来る。


「お冷入れましょうか?」

「あ、お願いします」


 俺は店員のそばにコップを置く。店員はコップを手に取って水を注ぎ、コップをテーブルに戻す時に話しかけてきた。


「彼女さんと仲直りされたんですね」

「はい?」


 急に話しかけられた上に内容も意味がわからなかったので思わず聞き返した。


「先週いらっしゃった時はギクシャクした雰囲気だったので。でも今日は、お二人とも楽しそうでしたよ」

「は、はぁ」


 どうやら先週もいて覚えていたらしい。それにしても、そんな風に見えていたのかと驚いてしまった。


「また来てくださいね」


 そう言い残して店員は戻って行き、同じタイミングで倖楓も戻ってきた。


「どうしたの?」

「いや、なんでもないよ」


 わざわざ言うことでもないと思って倖楓には話さなかった。




 会計を終えて外に出るともう空が朱くなっていた。結局どこかに行くというよりもご飯を食べただけだったな。しかし横にいる倖楓を見ると満足そうなのでこれでいいのかなと納得する。


 急に倖楓が思いついたように話す。


「今日の晩御飯は軽いものにしようか、時間も少し遅めで」

「え、今日も俺の部屋で食べるつもり?」

「え?だって昨日約束したでしょ?」

「あれ、結局成立したことになってたのか…」

「じゃあ、スーパー寄って帰ろっか!」

「あ、はい」



 スーパーに向かう道で俺と倖楓は、歩きながら明日の学校の話をしていた。


「明日は新歓だね。部活に入る予定もつもりもないけど、どんなパフォーマンスあるか楽しみかも」

「やることは中学と大して変わらないと思うけど」

「ほら、ダンス部とかは中学には無かったからアクロバットみたいなのあるのかなとか!」

「あー、あるかもな」


「そういえば金曜日のお昼休み、ゆーくんが香菜ちゃんに言われてたことってなに?」

「それは…」


 なんと話せばいいのか、出来れば話さずにいたいと思う。なんとか誤魔化そうとした俺の目に見覚えのある人影が映り、思わず視線を顔ごと向けた。


「ゆーくん?」

「あ、いや。なんでもない」


 たぶんこんな話をしていたから、見間違いをしたのだろうと自分を納得させる。




 しかし、いつまでも避けられないか。そう考えて俺は明日からが憂鬱になっていた。

再会から7日経った2人の距離感の変化を伝えられたでしょうか?

もうすごく近いような、どこか遠いような、でも確実に良くなっていってると思います。


少し長くなりましたが、一応ここまでが2章プロローグのようなものです。

つまり次の更新からまた物語が少し動きます。

安定し始めた2人の関係がどうなっていくのかを楽しみにしていただければなと思います。

22時更新の予定なのでよろしくお願いします。

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[一言] 更新お疲れ様です。応援してます。
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