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俺にラブコメを仕掛ける強襲型幼馴染  作者: 一葉司
第2章 新たな日常と変わらないもの
22/111

竜虎相搏つ

少し早い時間の更新になりましたがお楽しみください。


予告通り、話が少し動きます。

 週も明けて月曜日。そろそろ本格的に授業も始まってくる頃だ。


 そんな今日は7時間授業だが、その7時間目に俺は体育館にいた。正確には全校生徒が体育館に集まっている。先週から話題に上がっていた新入生歓迎会がこれから行われようとしていた。


 体育館ではクラスごとに整列していた。普段と違うのは、集会などと違って体育館の前半分は新入生が座っている点だけだ。


 俺も新入生なのでもちろん前半分に座っている1人だ。しかもクラス委員なので列の先頭に座っていることもあって1番前に座っている。見やすいのはいいが正直ほとんど興味がないので寝ていると目立つので困ってしまう。これから退屈な時間が始まるなと思っていると、隣に座っている同じくクラス委員の倖楓が話しかけてくる。


「そろそろ始まるね」

「終わったら起こしてくれる?」

「もうっ、ちゃんと見ないとダメだよ」


 怒られた。なんだかんだ倖楓はしっかりしているのでクラス委員向きなのかもしれない。


 突然、体育館の照明が落とされた。後方の上級生達の列から歓声や指笛が聞こえてくる。それに感化された新入生からも同じような反応が聞こえる。どこにでも同じようなやつはいるもんだなと思っていると、スポットライトがステージの中央に当たった。


 そこには1人の女子生徒が立っていた。さっきまでの騒がしさが嘘のように体育館が静まり返る。その美しく儚げな顔や、感情の温度を感じさせない雰囲気に全員が目を奪われていた。


「綺麗な人…」


 隣にいる倖楓すらも彼女の美貌に見入っている。


 そんな女子生徒が口を開いた。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」


 その美貌から発せられた声に、周りから感嘆のため息すら聞こえた。


「私は2年生で生徒会副会長の橘茉梨奈(たちばな まりな)といいます。今日は司会進行を務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」


 彼女の美しいお辞儀に、全校生徒が1テンポ遅れて大きな拍手を送った。


「それではまず、こちらの映像をご覧ください」


 そう言って彼女はステージをはけいく。全校生徒がまだ彼女の余韻に浸っている間、恐らくただ1人俺だけが憂鬱になっていた。


「あぁ、やっぱり最初から寝ておけばよかった…」


 その後も進行する度に聞こえてくる彼女の声で、俺は早く終わってくれないかと思う。


「ゆーくん?」


 そんな俺を見て倖楓が声をかけてきた。少し心配そうな声。俺は気にしないようにしてもらうために笑顔を作って返事をする。


「どうした?」


「…ううん。なんでもない」


 その後は倖楓も話しかけてくることもなく、新入生歓迎会は終わりを迎えた。




 自分のクラスの教室に戻り、軽い連絡事項などを先生から聞いて解散となった。


「はぁ」


 1日の疲れとさっきまでのストレスでため息をついてしまった。それを見ていた倖楓がまた心配そうに声をかけてくる。


「やっぱり、ゆーくんどうかしたの?具合悪い?」

「いや、ただ疲れただけだよ。心配させてごめん」

「ならいいんだけどね…。そうだ!このあとどっか寄って行かない?気分転換しよ!」

「そうだな、そうするか」


 あまりにも気分が落ち込んでいたので、倖楓の提案に乗ることにした。


「うぅん、これは重症かも…」


 倖楓が何か言っていた気がするがまったく耳に入ってこなかった。


 ふと教室を見回すと、もう明希と槙野は教室にいない。


「そうか、もう部活行ったのか」


 新入生歓迎会が終わった放課後から、新入生は部活に参加できるようになっている。今日から1週間は仮入部期間で、1週間後から入部届を提出して部活に正式に所属するという流れだ。明希と槙野は最初からバスケ部へ行ったはずだ。これで朝と放課後を一緒にというのは滅多に出来なくなってしまったことになる。少し残念だが入学前からわかってたことなのであまり気にしない。


「気付いてなかったの?ちゃんと2人とも声かけてくれてたよ?」

「え?」

「ほんとに大丈夫?」


 全く気付かなかった。最近はこういうことも減って来てたのにまた戻ってしまったらしい。


 俺はしっかりするために自分の頬を両手で叩いて気持ちを切り替えた。


「よし!サチ、行くか」

「う、うん!」


 倖楓が少し驚いていたけど、少しは安心してくれたようだった。俺は帰り支度をすぐに済ませて倖楓と教室を出た。


 廊下に出ると、なんだかやけに騒がしい。みんなが同じ方向を見て傍にいる友人と話している。何かあったのかと思っていると倖楓が俺の肩を叩いて話しかけてくる。


「ねぇ、あの人」

「ん?」


 そう言った倖楓の目線の方向を見ると、さっきまでステージの上にいた人物が立っていた。


「げっ」


 目が合って思わず変な声が出てしまった。もしかして聞こえていたのか、彼女の眉が少し動いた。これは良くない兆候だ、逃げるに限る。


「サチ、行こう」

「え?う、うん…」


 俺は彼女から180度向きを変えて歩き出そうとする。すると背後から冷たい声が聞こえてきた。


「あら。目が合ったのに何も言わずに行こうとするなんて、そんな風に教育したつもりはないのだけれど」


 ダメだ。めちゃくちゃ怒ってる。意を決して対面することにした。


「あー、お久しぶりです橘先輩。見ない間にずいぶんとお綺麗になられたので気が付きませんでしたー」

「あら?おかしいわね、私達はいつからそんな他人行儀な呼び方をするような仲になったのかしら?それからその言い方だと昔の私はそれほど綺麗じゃなかったという認識でいいの?」


 火にガソリンを注いでしまった。もう大炎上してる。少しでも火の勢いを抑えないといけない。


「…すみません、茉梨奈さん。以前は校内1だったのが今では地域1だと言いたかったんですよ」

「そうなのね。でもあなたの中で私がどのくらいの存在なのかよくわかったわ。入学して1週間も経ったというのに、一向に挨拶に来ないんですもの。あなたに会いに来てもらうには地域1程度の女ではダメということね。ハードルが高いわ」

「いやいや、逆にこちらが気後れしてしまったんですよ。それに入学してすぐはこちらも慌ただしかったので、落ち着いたら挨拶に伺おうと考えてたんです」

「不思議ね?同じ新入生で同じクラスのはずの久木君と槙野さんはすぐに来てくれたのにどうしてあなたは来れないのかしら?」


 あいつら裏切ってたのか!せめて声かけてくれれば一緒に行けたのに。2人に対する恨み言が止まらない。


「ちなみに2人はいつ挨拶に?」

「入学式の後よ、生徒会役員として私も案内の手伝いをしてたから。わざわざ連絡をして会いに来てくれたわ」


 よりにもよってその日か。それは誘えないわけだ。


「あー、その日はやむを得ない事情があったので」

「そう。私よりも優先した事情がなんなのかとても気になるわ」


「あ、あの!」


 さっきまで隣で会話を聞いていた倖楓が突然声を上げた。茉梨奈さんが興味なさそうな顔と声で言葉を返す。


「なにかしら?」

「その日は私がユウを連れて行ったんです!だからそんな風に責めないでください!」

「別にあなたが連れ出したことなんてどうでもいい。私は今日まで会いに来なかったことを責めてるのよ」

「でもユウにもいろいろ事情があったはずなんですから、そういう言い方しないであげてください」

「一応メッセージを送ったりもしたのよ?でもはっきりとした返事をしなかったのは彼なんだから」

「それは…擁護できないかも」


 もう少し頑張ってほしかった。それにしても、ちゃんと呼び方の使い分けが出来ていることに感動だ。


 そろそろ倖楓に申し訳ないので俺がちゃんと場を収めないといけないだろう。


「すみません。俺が全面的に悪いので許して下さい」

「最初からそう言えば良かったのよ。その偏屈なところを私の前で出すの、いい加減やめなさい」

「努力します。じゃあ今日はこの辺で…」

「待ちなさい。今までの埋め合わせを今日しなさい」

「いや、今日は…」

「なに?往生際が悪いわね」

「ダメです!今日は私と用事があるんです!」


 そう聞いた途端、茉梨奈さんの倖楓を見る目が少し鋭いものに変わった。


「あなた名前は?悠斗君との関係はなんなのかしら」

「遊佐倖楓です。ユウとは幼稚園からの幼馴染です」


 風邪をひいたのか寒気がする。それに幻覚かな、龍と虎が見える。


「じゃあ、彼に選んでもらいましょう?」

「ゆーくん!どっちと放課後を過ごすの!」


 やっぱり平穏な日常は二度と手に入らないかもしれないと俺は嘆くことしか出来なかった。

ようやく茉梨奈さんが登場しました。

思ったより長くかかってしまいましたが、茉梨奈さんのこともよろしくお願いします。


評価ポイントが1000を超えて、ブックマークも700件以上になりました。

皆様ありがとうございます。


明日も更新がありますが1話のみかもしれません。

少しバタついてまして、1日に2回更新出来るストックが無くなりそうです。

もう少し毎日更新を続けたいので頑張ります。

それに伴って更新時間がブレる可能性がありますが、よろしくお願いします。

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