異世界87日目 6月26日(水) ①自分の言った事は責任を持ちましょう
登園時間が迫って来たのでいつもの通り、ルーミィと二人でゲートに園児達のお迎えの為に向かったのだか、違和感があった。いつの間にか魔方陣のゲートが増えていたのである。
おそらくサラ用のゲートであろう。てっきり昨日みたいに虚空から現れるのかと思ったのだが一体いつの間に設置したのだろうか……。
まあ、世界記憶の名の通りレイバーさんは魔法が得意そうだし、こんな離れ技も出来るんだろう……。
サラの初登園も大切であるがまずはアメリアとソフィにしっかりとお話をしないといけない。下手すると親御さん達が乗り込んでくる可能性もある。早急に手を打たねば。
そんな事を考えていると2つのゲートから銀色の光と赤色の光がほぼ同時に発光し、園児が二人現れた。
「カズヤせんせ~! おはよ~!」
はい、元気いっぱいのご挨拶ですね。
「……カズヤ……おはようございます」
はい、呼び名変わってるね。
「おはよう、二人とも、ちょっとこっちに来てくれるかな?」
すぐさま二人には番の件について考え直すよう話をしたのだが、これがまた難航している。
「……カズヤと番になる……父上と母上も了承した」
「パパとママもいいって言ってたよ! カズヤせんせ~と番~!」
親御さん達なんで了承しちゃうかな~、どう考えてもダメでしょ!?
「和也先生……この子達にしっかりお話をして分からせて――」
「……ルーミィ先生も守られた……アメリアと三人で番になる」
「えっ、私も!? か、和也と番……あの、えっと……その……ふ、ふつつか者ですが、よ、宜しくお願いいたします……」
そこの女神様、昨日俺とイリアさんに言った事覚えてます? おかしいですよね?
「二人とも、お便り帳出してくれるかな?」
全力で書き込んだ。その場で、それはもう全力で! ええい、こうなったら、『時の流れに身を任せて気付いたら、ああ、そんな事もあったね』作戦でいこう。
「はい、お便り帳直しててね。それとね、二人はまだ子供だからルーミィ先生みたいに大きくなるまでは番になれないんだ。今すぐ番になっちゃったら保育園で遊んだり学んだり出来なくなっちゃうんだ」
「ええ~、それはちょっとイヤ~。アメリアもっと保育園であそびたい~!」
「……ルーミィ先生のように大きくなるまで……分かった……カズヤとの約束」
と、とりあえずなんとかなったか……ソフィ、ちゃんと先生を付けようね?
「わ、私はすでに大きいから……す、すぐにでも……」
ルーミィも早くこちらの世界に帰って来て下さい。っと、ゲートが緑色に発光している、どうやらサラが来たようだな。
「カズヤ先生、おは――」
盛大にこけたあ!! 何故だ、そこには凸凹も無い平坦な地面だよ? こける要素無いでしょ?
「ううっ……よう~!」
この子、超が付くほどのドジっ子だわ。
「サラちゃん、大丈夫?」
倒れてしまっているサラの元に駆け寄り、土を払ってあげる。まだ園内着を渡していないから折角のおべべが汚れてしまった。
「きゃは! カズヤ先生~こそばゆいよぉ~」
くねくねと体を揺らしながら少しだけ艶やかな声を出してきた。しっかり遺伝しているようだ、エロフの血が……子供なのに色っぽい仕草をする……。
いやな予感がして咄嗟に後ろを振り返ると、闘気のようなものを揺らめかせながら歩んで来られるお方が居る。もちろん、実際にはそんなものは出ていないのだがそう感じ取れてしまった。
「約束が違いますね?」
こちらの世界にお戻りになられたのですね。お帰り、女神様。勝手を申し上げて恐縮ですが、もう少しゆっくりしてくれても良かったかな?
しっかり怒られた後、遊戯室に場所を移してまずは神力で服などの保育園用具一式を具現化させた。その際にルーミィにはサラを見過ぎないようにと釘を刺された。
でもしっかり見ないとサイズ感がイメージ出来ないんですけどね。
「すごお~い! カズヤ先生、魔法上手~!」
神力って魔法なんだろうか。ちょっと違うような気もするが世界記憶さんのご息女がおっしゃるんだからきっとそうなんだろう。
「はい、サラちゃん。保育園で使う服やカバンだよ。他にもいっぱいあるからね」
ちなみにレインコートや麦わら帽子も一緒に具現化しておいた。みんな一緒がいいもんね。
「ありがとう~。じゃあ、お着替えするね~」
その場で脱ぎ出すだと!?
「ここで着替えちゃダメぇ!! ルーミィ先生!!」
すかさず服を下ろした。あ、危なかった……。おへそを通り越して胸が見えるギリギリであった。あと一歩遅かったら完全に全部見えていたぞ……。しかし、少しだけだが膨らみがあった、お、恐るべしエロフ!
「サラちゃん! ここじゃなくてあっちのお部屋で着替えましょ!」
ルーミィは使用していない部屋にサラを連れて行ってくれた。あの子、お母様と同じく天然系だわ……。
しばらくして園内着に着替えた元気なサラちゃんと死んだ魚のような目をしたルーミィが帰って来た。……どうやら恐ろしい現実を突きつけられたようだ。
「まだなにも変わらない~」
「……早く芽が出て欲しい」
「お花育ててるんだ~」
三人で花壇の淵にしゃがみ込んでいる姿を後ろから眺めているのだが非常に可愛らしい。とっても絵になる。
「ここはお芋さんのばしょ~」
「……秋にはお芋さんがいっぱい」
「サラ、お芋さん大好き~」
アメリアとソフィが率先して案内してくれている。やはり子供同士ならではの繋がりがあるのだろう。下手に大人が介入するよりもよっぽど自然に溶け込んでいる。
「カズヤ先生、ルーミィ先生、保育園ってお友達も居るし楽しいね~!」
サからの言葉にルーミィと顔を合わせ自然に笑みがこぼれる。何よりの言葉である。
「あとね~、先生達のエプロンもとっても可愛いよ~」
……サラ、やっぱり君もそう思うのかい? もう、おっさんあがくのをやめたよ……そうだね、このエプロンは可愛いよね……。




