第三十六話 キャンプ
「店長、これどこに置きます?」
「んー、真ん中でいいだろう。どつせ皆使うんだ使いやすい場所に置けばいい。」
「わかりました。」
俺たちは今テントの設営をしていた。
と言っても、テントはそんなに時間をかけずに出来た。今はテーブルなどの小物を置いている最中だ。
「だあー疲れた。」
「木炭運んだだけだろ。」
「その木炭が重いんだって!なんで女子達はやらないんだよ。」
「お前それ、何度目だ。」
「女子達は今、杏奈のとこに行ってるだろ。」
少し前、杏奈の車がキャンプ場まできて優達を連れていった。
理由は知らんが優からの連絡からすると運びたいものがあるから手伝ってほしいそうだ。
男は2人しかいなくて、尚且つテントの設営もあるから女子全員で行くことになった。
そのあいだ、俺達はテントとかの準備。
働き手が2人しかいないんだから2人とも働くしかないんだ。
「文句ばっか言ってると杏奈にチクるぞ。」
「なんて?」
「『杏奈のせいで俺が働くハメになった。って龍平が言ってた』とでも言えばいいだろ。」
「適当な上に非人道」
非人道?なにを今更。
その後も龍平がグチグチ言いながらも取り敢えずは準備が出来た。
「女子達遅くね。」
「たしかに、30分ぐらいで戻ってくるって言ってたのにな。」
女子達が出発してから約2時間。
流石に帰ってきてもいい頃なんだが。
「青砥のとこに連絡来てないか?」
「いや、きてな...来てたわ。」
スマホを見ると優から少し遅れるという旨の連絡が入っていた。
「お前、スマホなしで生きてんの?」
「あまり、必要と感じたことはないな。」
俺がスマホを持ってるのだって家族との連絡用。
チャットアプリでグループを作って連絡を取りやすくするため。
多少はスマホゲームで遊んだりはするがそんな何時間も遊んではいられない。
「うわーマジかお前。一人だけ遅れてるな。」
「不便しないからいいんだよ。」
龍平とどうでもいいことを話しているうちに一台の車が止まった。
「青君!お待たせ!」
駐車場からここまでは少し離れているがそれでも聞こえるようなデカい声で叫ぶ人影がいた。
「相変わらず、倉宮さんは元気だな。」
「元気すぎて意味の分からない行動をするから面倒くさいんだ。」
「またまたー、そんなこと言って。ホントは好きなんでしょ?」
「いや、わからん。」
「あーうん。やっぱ青砥だな。」
「それってどういう意味...」
「あー!もう準備出来てる!」
「そりゃ、あんだけ時間があれば用意くらいは出来る。」
「仕事が早いのね。」
「あとは、料理を作ればいいだけだ。」
「よし、料理作ろうか。」
さて、早速料理を作ることになったのだがこの面子で料理が出来ない人がいないのが残念だ。
大抵、こういうのって優みたいな奴がなんかの錬金術で変な物体を生み出すんだが、優は自分で弁当を作るほど料理好きだ。
風凪には一度料理を作って貰ってるから除外。
ファミレスでバイトしている俺達はもう論外。
龍平と俺は、下手は下手だけどアニメとか小説とかで見るような黒い物体を作りだすことはない。
ハプニングがないに越したことはないはないが料理が出来る奴が集まりすぎるのも考えもんだ。
「私はなにをすればいいのかしら。」
「ああ、鈴姉は野菜を切ってて。」
「分かったわ。」
料理は主に女性陣を中心に作ることにした。
料理好き2人にファミレスでキッチン担当の加奈先輩がいればおぞましい何かが生まれることはないだろう。
一番心配なのが鈴姉だけど...?
チラッと鈴姉の方向を見るとまな板の上に野菜をのせて包丁と睨めっこしてる。
一体なにをしているのだろか。
すると、おもむろに包丁を振り上げるとそのまま振り下ろしてジャガイモを真っ二つにいた。
そして、また振り上げた。
流石に危ないので止める。
俺は後ろから振り上げた手を掴んだ。
「ほんとになにしてんの。」
「何って、野菜を切っているのよ?」
「いやいや、そんな野菜の切り方があってたまるか。」
まだ、ジャガイモみたいな物だからいいけど魚とかトマトとか潰れやすくて水っけのある物だったら飛び散るし周りにも飛ぶ。
「まさか、鈴姉...料理したことない?」
ビクッ!
目の前の肩が大きく揺れた。
「べ、別に出来ないわけじゃないの。ちょっと練習不足というか経験値不足というか...」
「それを、世間一般では出来ないっていうんだよ。」
「ううぅぅ。」
「ったく、高校生に食材の切り方を教えることになるとは。」
今の切り方じゃ危ないから安全な切り方を教える。
と言っても、小学生が習うような猫の手を教えるだけだが。
「取り敢えず、包丁は振り上げない、食材は押さえる。これだけは守ってくれ。」
「分かってるわよ。そんな危ない事しないわ。」
(さっきまでしてたんだよなー。多分止めなかったらずっとあの調子だったと思うし。)
と口には出さないが心のなかでは思っている。
「鈴音の指導ご苦労様。」
「あれほどだとは思いませんでしたよ。」
「私も初めてみた時はびっくりしたからね。いきなり包丁でまな板ごと切ろうとする勢いで振り下ろすから。」
「なんか恨みでもあるんですかね。」
これまでに加奈先輩も直すように努力はしたみたいだが一向に直らないらしい。
よくそんなんで今まで単位とれてたな。
「料理実習の前日はめっちゃ練習したそうだ。」
「なるほど、それでン乗り越えていたわけか。」
それから、鈴姉に教えつつ料理が出来た。
途中、龍平が杏奈に見惚れて手を切るというアホな事をやらかしたから出来上がるのが少し遅くなった。
時刻は午後6時、料理開始が3時だから3時間も料理していたことになる。
出来たのは定番のカレー。
持ち帰れないからそんなに量は作ってないがそれでもかなりの量がある。
「いただきます。」
「「「「「「いただきます」」」」」」
カレーを食べて少し川で遊んだ。水着を持ってこようとしたが入らなくてもいいやって思ったからもっては来なかった。
そのうちに水の掛け合いっこが始まった。
想像してみてほしい。
水着ではない私服で水を浴びたらどうなるか。
「グハッ!なんだここは...天国?」
隣では変態が杏奈を見て興奮している。
答えは、服が体に張り付くだ。
小学生ならまだしも高校生にもなれば下着をつける。
服が水に濡れることによってラインがくっきりと浮かび上がるんだ。
「下着でそんな興奮するか?」
俺は優と風凪の下着なら見たことがある。それに妹だっているし。
だから、そんなに珍しいもんじゃないし。
「龍平にも美人な姉がいるだろうに。」
「アレを女としてみるのは限度がある。それに杏奈ちゃんの下着なんてめったに見れないからね。」
「もしもし、警察ですか。隣に女の子の下着を見て興奮してる変態がいます。」
「ポリスメンはダメだって!」
「龍平先輩。」
「はい!」
俺達が話しているといつの前にか杏奈が目の前まで来ていた。
急に名前を呼ばれて裏返る龍平。
「あとで、お話があります。」
龍平を見る杏奈の目は汚物を見る目より酷く冷たいものだった。
「あんな目でも可愛いっていいよな。」
そして、その目線で喜ぶ変態いや...極変態がここにいた。




