夕食に誘われたら個室、に!
短いです
「誰って言われても、多分知らない人だよ?」
その一言で、深川愛理の笑みが固まる。深川が知らない人、つまり、深川ではない。そんな当たり前のことを頭の中で反芻しても、うまく理解することができなかった。だが、深川の心情を察することができない成瀬は、そのまま言葉を繋げる。
「でも気になってるって言っても、イマイチわかんないんだよね。だって俺、まだ恋をしたことがないし。
例えばお天気お姉さんの清水美香さんは、好みどストライクだけど結婚したいとか思えな…なくもない。むしろ結婚したいけどさ、現実的じゃないし。それに、気になってる人が一人じゃないんだよねぇ、恥ずかしいことに。」
そう言って、恥ずかしそうに頰をかく成瀬が、深川には急に遠くにいるように思えた。落ち込んでいるのを隠すように料理を頬張る。胸が締め付けられるように苦しいのに、舌は正直で、美味しかった。
「愛理は……恋人とかいるの?」グラスを傾けながら、成瀬が大人っぽい雰囲気で質問をした。グラスの中身はオレンジジュースなのだが…
「恋人はいないけど、好きな人はいるよ…」
「え!?ああ、そうか、そうだよ。高校生だもんね、いない方が変だよね?」あからさまに成瀬が取り乱す。落ち着けよ。
「ちなみに、どんな人?」間髪入れずに、身を乗り出して問いかけた。
「教えてあげない。先にそっちが教えてくれたらいいけど?」
ああ、これはあれだ。最終的に相手に恥ずかしいこと言わせて、自分は上手くはぐらかすパターンだな。と、成瀬は思った。そのことに気づいた上で、成瀬は要求に応じた。だって知りたかったんだもん。
「気になってる人が一人じゃないって言ってけど、正確には三人かな。1人は清水美香さん。いや、割と真面目にね。」そう言って微笑む成瀬はかなり気持ち悪い。
「2人目は、職場の上司さんだよ。っていっても2人しか働いてない職場なんだけど。その人はねーコロコロ表情が変わって見てて面白いし、何より優しいんだよね。いっつも気づかってくれるし。」
気長に書いてきます、次も短めかもです