赤ん坊を渡されたんだが
本編が始まります。
この世界は大きく3つの大陸で出来ている。3つの大陸は海で遮られ、大陸の周辺に多く点在する島々で構成されている。一つの大陸は大きな森豊かな自然に囲まれ、ヒューマンや亜人を主とする『リグレイ大陸』。自然との共存を主とし、様々な農業、林業が盛んな大陸。一つは大陸の大半を暗闇に覆われ様々な魔術に特化した住民が住む『リュート大陸』。この大陸は魔素が多く光があまり入らない為、肌や髪は白く一見妖艶な容姿の生物が多い。その容姿から大陸の住民を『魔族』と呼ぶものも多い。魔素は魔術や魔法を駆使する為に使用するエネルギー、力の事だ。この世界に生まれたものはたいてい魔素を体内に持つ。体内若しくは世界に『ある』魔素を使い火、水、土、光、闇、雷等の魔法を使い生活している。最後に荒野が大半を占め魔素も少ない『フューリ大陸』。俺はフューリ大陸の『ガルガンダ』というころに祀られている。ここはフューリ大陸の一番端の荒野に位置し、周りに生命を象徴する木々や川、山が少ない。そんな荒野の端に小さな林があり、そこに日本の『長屋』を模して建てられた社兼俺の家がある。
「俺、子供育てたことないんだが・・・」
ふと俺は魔族の女性に渡された赤ん坊を抱え呟いた。そのままガレキの中に残し他のものに拾わせたほうがこの赤ん坊の幸せだったかもしれない。
「まぁ、仕方がない。少し育てて後は人間に任せるか。」
修羅はこの世界に多く干渉しないと決めていた。力が戻ったら自分の世界をまた作ろうと考えていたからである。あまり干渉が大きいとその世界と繋がったままで、自分の世界を作ったとしてもその世界が干渉した世界に影響を出してしまうからである。
「しかし、困った。この赤子を育てて他に任せられるとこまで干渉しても影響はあまり出ないと思うが・・」
『おぎゃ!おぎゃ!』という赤ん坊の鳴き声で修羅の言葉は遮られた。
「ん?赤子よどうした?」
修羅は赤ん坊に話しかける。普通なら「何してんだ?」「おしめか?」「お乳か?」「それとも寂しいか?」などと話しかけるが
「フム、わかった。」
修羅はそう答えると空中から哺乳瓶を出し、赤ん坊に食事を与えだした。
「んぐ、んぐ、んぐ」
「ム、そうかそうか。それはよかった。」
修羅は赤ん坊の伝えようとしている事が自然と分かった。赤ん坊は自分がしてもらいたいことを強く思い声を出す。修羅はそれを読み取ることが出来る(しかし、赤ん坊や小動物等思考が簡単な対象でしか出来ない)。その為、はたから見ればちょっと危ない人に見える。
「しかし、どうしたものか。必要なものは俺の『空間』から出せばいいが、どんな教育をしていけばいいやら・・・ブツブツ」
修羅は一通り考えを巡らせ一つの結論を出した。
「よし、一人で生きていける程度まで育てるか。」
一人でも飢えない程度の事を教えていこうと決意する。
「あぅあぅ、あう。」
と赤ん坊が修羅の腕に哺乳瓶を押し付けた。
「ん?俺にくれるのか?大丈夫。食べなくても俺は死なないし、問題ない。」
修羅達『神』は食べる行為を行わなくても問題ない。あえて食べる事を趣味としている神もいる。後者はあまり多くないが修羅は食べないほうだった。
「うぁ!あぅ!」
赤ん坊は修羅の腕に強く哺乳瓶をさらに強く押し付けてきた。
「ム、分かった、分かった。そう睨むな、俺はこっちのを食べるから。」
そう言うと修羅はまた空中から赤い果実を取り出しかじって見せた。
「あっあぅ!」
赤ん坊は目を輝かせながら修羅に小さな手でしがみついて来た。
「ん?これか?俺の世界で『りんご』って食べ物だ。これは別の空間からものを出出しただけだ。俺にしか出せんぞ。破壊された時たまたま残っていた世界をこの『空間』に留めただけでこう云うことは神なら誰でもやってる。」
赤ん坊は目を輝かせたまま修羅の腕を掴んで離そうとしない。
「好きなだけ掴んで構わない。一人で色々出来るようになるまでは面倒を見よう。」
「うだぁ!」
赤ん坊は強い眼差しで修羅を見つめていた。
(あまり懐かれないようにしないとな。)
少し赤ん坊から距離を置こうと思う修羅だった。
次回から世界の時間がちょっと進みます。