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1.くちづけて
「私、無くなっちゃうよ、そんなにキスされちゃー」
手の甲、裏、指先、腕、肘、肩、首、鎖骨と落ちる脣は私を触れる。私の口は努めて冷たく告げる。
「むしろ、そうしてくれ」
喧嘩相手のように返される。双眸は、怒りに触れている。少しだけ。いいと思った。
続かない話は甘い雨のようで、触れたくすらない。
家でいいじゃないと、首に手を触れた。急所を晒して。まったく馬鹿のすることだわ。愛してなんかいないのに。
目が合えば、見透かされているみたいで、いや。私だって、見てあげる。
「ほんとにお前が無くなれば、煩わされずに済むのに。捕まらずに済んだのに、な」
「……ふん。犯罪者」
「同罪だろう」
誘って、引き寄せ、触れて、重ねる、脣。唇。
「まさか、重さは違うでしょう」
重さなんて、考えていれば、互いにこんなことしない。変える勇気が、気力が、力があれば、これだってしていない。
「ねぇ?」
「なんだ、今忙しい」
「私に触れるのが?」
「あぁ」
「そう」
これもいつまで続いていられるかね。……ほんとになくなるわよ、私。




