表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の葬式――断罪された姉の為、妹は復讐を誓い真実を暴く  作者: 冬月子@書籍化決定!悪役令嬢のダイエット革命5/1発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/29

SIDE リリアーヌⅡ

そして、あの夜がやってきたーー。

リリアーヌは悪役令嬢として断罪され、婚約破棄を言い渡された。


王宮の一室に、リリアーヌはひとり座っていた。

拘束された身で、それでも彼女の胸を占めているのは、アレクシスへの失望でも、婚約破棄の屈辱でもなかった。

ただ一つ――妹のことだけだった。


(ロザリーは……大丈夫かしら)


断罪の場で見た妹の顔が、何度も脳裏に浮かぶ。

青白く色を失った頬。声も出せずに立ち尽くしていた、あの小さな姿が。


きっと今頃、ひとりで泣いている。

姉が罪人として糾弾されたのだから、周囲から何を言われているか分からない。


ロザリーは、強い子ではない。小さなころからそうだった。

転んでは泣き、夜に雷が鳴けば怖がって、そっと姉の部屋に忍び込んできた。そのたびに、リリアーヌは抱きしめて背中を撫でた。

「大丈夫よ」とそう言えば、妹はいつも安心したように笑ってくれた。


だから今回も――。


リリアーヌは、ゆっくりと顔を上げた。


「……お願いがあります」


扉のそばに立つ護衛――カヴェインに向かって、静かに声を掛ける。


「妹に……ロザリーに会わせていただけませんか。少しだけでいいのです。話をさせてください」


カヴェインは一瞬戸惑ったように眉を寄せたが、やがて小さく頷いた。


「……上に確認して参ります」


扉が閉じられ、再び部屋は静寂に包まれる。


リリアーヌはそっと視線を落とした。

断罪されたことよりも、これから自分がどうなるのかよりも――

ただ、妹のことが心配だった。


(早く。大丈夫よ、と言ってあげなくては)


心配しなくていいのだと。何も怖がることはないのだと。

だって、わたくしとロザリーさえいれば、何の問題はないでしょう

そう伝えれば、きっと妹は落ち着くだろうから。


***


だが、待っていたのはロザリーからの拒絶の言葉だった。

扉が閉まった。ロザリーの足音が、廊下の奥へと遠ざかっていく。


リリアーヌは動けず、足音が完全に消えてもなお、ただ扉を見つめていた。

今の出来事を、うまく頭の中に収めることができなかった。

ロザリーが——泣いていた。

あの婚約者に、捨てられたのだと言っていた。


(……そう、あの男は)


ロザリーを誰にも奪わせないために、リリアーヌが選んだ婚約者だった。

決して妹を愛することのない、あくまで政略のために結婚する男だったから決めた。

そのせいで――その男に捨てられ、ロザリーは傷ついている。自身が婚約破棄という失態を犯したせいで。

だから——だから、ロザリーは。


――はじめから、いなければよかった。


耳の奥で、その言葉だけが何度も反響している。


「あ……」


その事実が、遅れて胸に落ちてきた。

重く、どうしようもなく、逃げ場のない現実として。


「……ああ」


喉から、かすかな声が漏れる。

思考が、白くなる。部屋の輪郭が、ぼんやりと滲む。


(……ロザリーに、嫌われた……?)


自身でも気づかない内に心は疲労していたのだろう。

悪役令嬢と囁かれ、陰口を叩かれ、視線を逸らされる日々。

けれど、何を言われても、毅然としていた。

ロザリーがいるから。妹さえ信じてくれていれば、それでよかった。


――けれど。


その妹に、いなければよかったと言われた。

胸の奥で、何かが完全に折れた。


リリアーヌはふらりと立ち上がった。

足元が頼りない。床の感触さえ、どこか遠い。

それでも、気づいたときには足が動いていた。どこかへ。どこへとも知れず。

夜風が頬を撫でる。

テラスに出ていた。いつの間に、扉を開けていたのだろう。

月明かりの下、王宮の庭園が広がっている。

薔薇の香りが夜気に溶けていた。


「……ロザリー」


大切で、守り続けてきた存在。

リリアーヌにとって、世界の中心で、全てだった。

その妹に――存在を疎まれた。


(……これから、何を頼りに生きていけばいいの?)


答えはどこにもなかった。

ただ、胸の奥にぽっかりと穴が開いている。

何もない空洞だけが残っていた。


ロザリーがいない世界の輪郭が、リリアーヌにはどうしても掴めなかった。

存在の仕方が、分からなかった。

次の一歩を、どこへ踏み出せばいいのか——

リリアーヌはゆっくりと手すりへと歩み寄り、その冷たい鉄に指先を這わせて、

ふと、思いついた。


「――嫌われてしまったのなら、せめて」


(せめて、あなたの胸に刻まれた傷として。消えることのない痛みとして。

わたくしのことを——ずっと、忘れないで)


その願いだけを胸に。

リリアーヌはーー手すりの向こうへと身を投げた。

加害者であり、被害者だった妹。そして元凶とも言える姉でした。歪でも愛ゆえに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『悪役令嬢のダイエット革命』書籍化しました!
ご予約はこちらから
悪役令嬢のダイエット革命!
― 新着の感想 ―
なんかもう…辛い…生きてずっと仲睦まじい姉妹でいて欲しかった…なんなら二人の世界で完結しても良かった。読めて良かったです!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ