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台本、セリフ、声劇台本 まとめ  作者: 紫蛇ノア
台本
9/13

 君の泣き叫ぶ声がする。

 左耳はくぐもっていて、天に向けた右耳から君の声が聞こえる。

 口は……動かない。目は、目の前は真っ赤だった。

 もし、救われるのならその手を取っただろう。

 しかし、もう手も腕も、足も動かない。

 骨は全部折れたかな。

 どくどくと体の中から流れ出し、私の周りを水溜りが作られていく。

 真っ赤に染まった視界のなか、光に照らされたところが白く光っているのが見えた。

 その光はときおり揺らめきを見せてたまに手の形を象る。

 助かると思って君は手を伸ばしているのだろう。

 だけど私はもう助からない。

 ごめんね。ごめんね。

 頭でそう唱えても口は動かない。

 ふわりと浮遊感がした。ガチャリとキャスターの立てられる音がする。カラカラと車輪が回る音がする。男や女の声が聞こえた。お腹のあたりを押さえる感覚がする。

 その傷はもう癒えない。しっかりと痕を残して刻まれてしまった。

 水溜りの水もさらに増え続けていく。

 君と同じようにサイレンも喚いた。けれどその大きな音はゆっくりと遠ざかっていく……。

 視界が真っ白になる。

 あぁ、花びらと一緒に無数の金の光がふわふわと舞い降りてくる。

 アレはきっと私の記憶を削り取る走馬灯。ふわふわと落ちて来たくせに、ガリガリと削っていく。

 ヒビが入った銀板がガラガラと崩れ落ちる。

 アレはきっと最期の砦。私を守っていた概念が削り取られ崩れていく。

 あぁ……、ふわふわする。

 これが死か。

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