三章八節 異変
レオンが西欧を去ってから1ヶ月が過ぎた頃、西欧の新制度により生徒は少しずつだが各地から集まりだした。
「理事長ー。理事長先生ー……隠れたか?」
「お前はもう少しちゃんと探せ、理事長室にもう一度行くぞ」
「おお、そうだな」
至る所で新しく入った新入生が廊下や教務室で目立ち、その中でもごく少数の者だけが仮面による襲撃と校舎崩壊の惨劇を目にしている。
そして、理事長が考案した新制度によって旧制度の階級制では無くなり、生徒自ら率先して勉学に励むようにという目標を目指して進級制度を取り入れられた。
従来の制度は強い者が優先して研究環境を確保できた階級級制でなく、自らが進んでより高みを目指す進級制が用いられた。
その制度後は、生徒の大半が自らの魔法を深く理解しようと研究に没頭するようになり、従来にはなかった新たな魔法や魔法の秘密が解明されていき。
その噂を聞き付けた各地の魔導師が西欧へと集まりだし西欧の存続所か、研究所が足りなくなると言う事があり敷地を広げる計画が進められていた。
「この成分とこの成分を組み合わせるだよ……」
「違うな……ここの魔法式は少し弄ろう」
各研究室からは、常に討論している声が聞こえており弱い者が虐げられていた時とは全く別の学園へと変わっていた。
しかし、旧制度の中にあったランク制度は未だに健在である。
生徒は週に一度だけ、上のランクの生徒と模擬試合をして勝利する事で自らのランクを上げより上の研究環境と研究資料を確保できる。
しかし、E~C~Aとランクが上がる度に生徒の模擬試合白熱しており、特にAランク昇級を掛けた模擬試合では上級魔導師が使う高難易度な魔法の撃ち合いや、それの応用版が一般の観客や生徒を熱く盛り上げる。
休日になれば模擬試合専用の研究施設『立体闘技場』で休日を熱くする。
黒は理事長と楽しいお茶会を開いていた。
「本当まぁー……よーやりますよ、新入生のメンツも増えてきましたけど。西欧がただの学園じゃねぇ事は、あのイカれた教授を見たら一目瞭然ですよ」
理事長室で話し合う二人の後ろ姿を秘書は黙って見ていた。
いや、見てる事しか出来ない。
少しでも動けば二人の威圧に押し潰されそうだった。
「秘書の子を下がらせてくれないか?」
黒は理事長を見詰めながら提案する。
理事長は秘書に向けて手を挙げ部屋を出るように告げ、次いでに「誰にも部屋に入れるな」と命令した。
秘書が部屋を出ると、理事長は黒に黒色の封筒を渡した。
黒は渡された封筒を開き書いてある内容を確認すると、眉をしかめる。
その表情に理事長は首を傾げる。
「どのような内容だったのですか?」
理事長が尋ねると、黒は命令が記された紙を封筒ごと炎で燃やし、燃えカスを絨毯に踏みつける。
理事長は声にならない声を挙げる、そうんな事には見向きしなずに黒は部屋を出ていく。
すると、自分の目の前に立つ男に気付いた。
赤色の髪をした北欧貴族の様な容姿の男は窓に腰を掛けたまま黒に手を振る。
「またアンタか、何度言われても生徒会には入らないですよ」
黒は男を横切ろうとするが、男は黒の正面に立つ。
幾ら黒が方向を変えようとも男は正面に立ち続ける、しばらくして黒は男に別の話を持ち掛ける。
「どこまで聞いた……理事長との話」
男は制服からアメを取りだし黒に投げ渡す、黒は男を見詰めたままアメを受け取り、口に入れる。
そのアメは口の中で溶け、シュワシュワとした炭酸が口に広まり柑橘類を思い浮かべさせる味が口の中で広がる。
男はアメを口の中で転がし、噛み砕いた。
「いやー。そこまで、詳しい話は聞いてないが……お前が連盟の命を受けてるって事は理解した。別にそれをどうこうする訳じゃねぇ……」
黒は警戒とためか、距離を取り右手は血燐の鍔に手で触れていた。
男は黒の目付きに冷や汗をかきつつも、深呼吸をして話し合おうと試みた。
「――ただ…」
男は真剣な表情で黒を見る。
「俺の学園に喧嘩吹っ掛けた奴らを叩きのめす手伝いをさせてくれ……力になるぜ。この――」
黒は男の口を制服で塞ぐと理事長室の扉を蹴り開け、男を机の上に叩きつける。
「――クボハァ!」
男は背骨を強打したため、咳き込み机からソファーへと移り背中を撫でる。
「ッ………! 加減を知らんのかよ。今の騎士団は」
男は黒と理事長から任務の事を聞き、西欧を狙う教授の存在と仮面について黒の知る事は全て話された。
「なるほど………教授を捕まえるために、黒はここに残った。本来の任務を教授の確保へ切り替えたと……なるほど」
男はうんうんと首を縦に振り、考え込んだ。
「最低限俺が動ける範囲でお前を助けよう。ただし! 俺は教授よりも、西欧学園とそこにいる生徒を守る事を優先する。それでいいなら助けよう」
男の提案を呑んだ黒は、男と握手を交わす。
「よろしくな……えー…と」
黒は首を傾げて男の顔を見つめる。
「――サーフェス・ルヌネス。西欧学園生徒執行会、略して生徒会。その会長の俺が助けてしんぜよう!」
黒は会長と名乗ったサーフェスから距離を置く、警戒しつつ男を見定める。
「そんなに警戒すんなよ。俺の力なら宛にしてくれて構わない」
サーフェスは秘書が淹れた出来立ての紅茶を飲む、黒が血燐に手を掛けた瞬間。
黒の背後に回り血燐奪い取る。
咄嗟の出来事に黒は反応出来ずにその場で固まる、と言うより、反応出きていたからこそ固まり、自らの目を疑うのであった。
咄嗟人間目の前の男が自分の背後に回ったのではないか、その段階で竜人の超神経を優に越えてしまう辺りは、理事長の次に強いと言われるだけはある。
しかし、人間が異族内最強を誇る竜人族の空間把握能力を越える速度で動くとは信じ難かった。
黒は冷や汗を拭い、ソファーに倒れ込む。
「どうだ? 高速魔法と空間制御魔法の組み合わせは?」
サーフェスは満面の笑みで黒を見下ろす。
そこには、純粋に魔法を愛する男の姿があるだけだった。
黒は、サーフェスに向け拳を突き出す。
「何だ……それ?」
サーフェスは驚くが、しばらくの間があったが何かを思い出すかの様に黒と同じく拳を突き出した。
黒ははにかみつつサーフェスにレオンや俺らを監視していた事を知る。
「まぁ、監視次いでに見ていたけど。この拳合わせは何の意味あんだろうな?」
「さぁ? 知らんな」
黒は取られた血燐を帯刀ベルトに付け、理事長室を後にする。
「サーフェスさんから見て、黒さんはどう思います?」
理事長はサーフェスを背に扉から差し込む光を眺める。
「確かに理事長の言うとおり強い奴ですよ。……今はどういう訳かその強さを全く感じない」
サーフェスは紅茶のカップを机に置き、水魔法で作った小さなクラゲに黒を追跡させる。
「このクラゲの情報で黒の本質を見抜きましょうか?」
「いえ、必要無いでしょう。彼が何かしらの措置を受けて本来の力を出し切れないのは承知の上です。」
理事長は机で頬杖を突きサーフェスを見詰め、サーフェスも何かを察したのか何も言わずに理事長室を後にする。
(現在……西欧は見えない組織とその教授と静かな戦争状態。西欧を小さな瓦礫の上に立っていると想定すると、八方位から攻められ防戦一方な状態。――少ない戦力の中で西欧を守るなら、何かしらの措置を受けている奴の力も利用するって考えか……)
サーフェスは爪を噛む、険しい表情のまま真っ直ぐ通路を進む、その後ろを不気味な笑みを浮かべた女子生徒が後を付ける。
「クスクス……きょーじゅの読み通り、西欧は連携が取れてないや」
女子生徒はサーフェス目掛け、小型カプセルを投げ付ける。
咄嗟に殺気に気が付き、殺気の方へ振り向くより先にカプセルが破裂しサーフェスの全身に煙がまとわり付く。
サーフェスは待避しようにも体は動かず煙に呑み込まれる。
「1人目……ゲット!」
サーフェスの立っていた場所は煙が立ち込め、人が消えたとは到底考え付かないだろう。
サーフェスが行方不明になったと言う事実を伏せて2週間が過ぎた所で、敵に動きが現れた。
生徒の中では既に噂が広まり、黒て理事長では対処出来ない程に膨れ上がっていた。
「本当何ですか? サーフェス会長が殺されたって…》」
「犯人ってまだここに入るんだよね」
「まさか…ここを襲撃した奴に殺されたのか?」
「次は私達の番だよ!」
生徒達は真偽も定かではない情報に踊らされ、挙げ句の果てに疑心暗鬼になり犯人の擦り付け合いが始まり、更には魔法での撃ち合いが始まる。
「普段理事長は、理事長室で他校との会合や雑務に追われており大まかな学園関係の事を生徒会に任せっきりで、殆ど学園に関わらないでいる。そして、かの黒竜は最高の力を持っていても使えない。宝の持ち腐れって奴だ」
ブェイが西欧の慌てぶりを見て笑う。
「ブェイさんは、趣味が悪いですよー」
「うるせぇマギジ。仕事1つしない奴に俺の趣味がどうとか言われたかねぇ」
マギジはその発言にキレる。
「ハァ? 仕事ならしてますー。実験しかしてないくそジジイのおもりしてるこっちの身にもなってくんないかなー?」
ブェイとマギジが頭をくっつけ歪み合ってると、背後から暁のため息が聞こえた。
「暁さん……?」
「見てたんかよ、暁」
二人が喧嘩を止めると、暁は笑顔になり二人に違付き背中を叩く。
「僕は仲間同時が傷付くのは見たくないな。仲良くやろうよ」
暁は西欧を見詰め、笑みを浮かべる。




