並行世界編・間幕……あんころモチとは美味なものなのですーっ!
お久しぶりです!
楽しんでいただけましたら幸せます。
ここは無数の露天が立ち並ぶ商店路。
全長5キロに及ぶ露店街は格安に特化した『格安ストリート』。
そこには人や獣人達の営みがあり、誰であろうとも身分など関係なく自由が保障されている残酷で汚いことが蔓延している場所。
「びえーんモーっ、喝上げモー、ぺちゃぱい赤貧の神にあんころモチをたかられたモー!」
艶のある黒髪と肩を竦めた絶世の美少女っぽい赤貧の神シルクの前で『えっ、このぬいぐるみが喋ってるの!?』と思える現実味を感じられない小さな牛のぬいぐるみモーモーが抗議の声をあげていた。
「へへーん、煩いのです! 今のどっきりびっくり抗議言葉は聞かなかったことにしてやるのです! それにしても一口牛ステーキ、良くやったのですーっ! 小さい牛のぬいぐるみのくせにうちのお腹の貢献度が高かったのです、特別に褒めてやるのです!」
興奮気味の口調、それは仕方がない。
喉を唸らせながら万人(男)が振り向いてしまうほど魅力的な破壊力があるシルクのにんまりフェイス。
そして、透けるような白い手の上にはキラキラと輝くあんころモチが一つ。
うっひゃー! 大収穫なのですーっ、アンコがいっぱいのお餅なんてもう300年前に道端のお地蔵さんにお供え物も横取りしてお口に頬張った依頼なのですーっ!
そんなおぼろげな記憶を回想しながら無邪気な声を上げるシルクの前には諦観が滲みでている小さな牛のぬいぐるみがプリプリと身体を揺らしながら怒っていた。
「モーモーは一口牛ステーキじゃないモー! モーモーが50年かけて道端で拾ったなけなしのお金からしっかりこっきりと茶店のあんころモチ代をたかられてしまったモーッ! とんでもない赤貧の神に捕まってしまったモー!」
「特別にご褒美に兄さまから教えてもらった名言を聞かせてやるのです! 耳の穴を100メートルは広げて聞きやがれなのです! おほん!『アンコは素敵なのです! あんことうんこはひと文字違いでパッドエンディング』、むふふ、やはり兄さまの名言は素晴らしいのです!」
「モーモーには理解できない世界モー、いたいけな牛から喝あげモー」
「カツ揚げはとんかつなのです! 牛は挙げてもカツ揚げにならないのです、フンス!」
「ぶっ飛んだ屁理屈女モー」
これ以上ないほど素直なモーモーの言葉にシルクはあんころモチを口に頬張りながら至福の表情を浮かべていた。
いかがでしたか?
少しでもクスッと笑っていただけましたら嬉しいです。
これからもかきくけ虎龍作品を宜しくお願いします。




