機械帝国編……行き倒れ少女と麗人の出逢いは化学反応をおこす
こんばんわ、新章突入します(☆∀☆)
東北の片田舎のスラム街でお兄ちゃんと惨めに、そして命をかけて生き抜いた懐かしい匂いがする。
それはとても臭くて、腐敗した臓器がばらまかれたゴミの匂い。
「うえーん……寒いよ……お兄ちゃん」
無意識だった……吐きこぼれるようにくちびるから溢れる言葉。
冷えたアスファルトに加えて空から舞い降りる雪……氷点下近くまで下がった外気温。
わたしの生きている証である体温を容赦なく体の芯まで奪っていく。
「わたし……死ぬのかな……お兄ちゃんに逢えないまま……」
ぽつりと呟いた少女……うらぶれた姿を差し引けば、見かけは人間ぽい……。
――心まで弱ってしまうなぁ……死んだら楽になるかな――
都会の夜は明るい。
街路灯の灯りが大道路を照らし、都会の酸いも甘いも全て照らしていく。
「お腹……すいた……人間を鎌で襲って……略奪したら……ああっ、ダメ……」
カサカサの唇から小さく落ちる言葉……とても弱々しくて、年頃の女の子がみだりに口にする言葉ではない。
もう少しでわたしの命の灯火が消えようとしたとき……彼は突然やってきた……変な化物と黒子戦闘員に追われながら。
「大人しく捕まれカバ! 少しだけお尻ホッた後に改造怪人として機械帝国の尖兵という名誉をもらえるカバ!」
「「「下っ端ウイウイッヒー!」」」
カバをモチーフにしたカバ型改造怪人と弱そうな黒子戦闘員……ああっ、もしかして……正義のヒーローにいつも負けっぱなしの悪の軍団の改造怪人と下っ端戦闘員かな?
「このエロどもがぁーっ! 絶対につかまるかぁーっ、シルクが待っているたんぽぽ荘に帰り着くまでは! それにしても目覚めたら牢屋の中やったし、いったいここは何処なんやねーんっ!?」
あれれ、逃げ回る綺麗な人……思わず憧れ半分で見とれてしまうほど蠱惑的な魅力溢れる麗人がカバの怪人に追い詰められている。
「教えてやるカバ! ここは機械帝国が支配するジパングの首都・新東京カバ! わしらは人間や妖怪刈りを専門に行う第三小隊、『怪人カバヤンと愉快な下っ端戦闘員』かば!」
「「「下っ端ウイウイッヒー」」」
「怪人カバヤンって見たまんまですよーっ!?」
「ズバリ! 惚れたカバか?」
「惚れるわけないやろーっ!?」
「だったらお願いがあるカバ……今夜、わしと寝てくださいカバ……河原で桃に捕まってどんぶらこーと揺られて来たときから惚れたカバ!」
あれっ、麗人が眉を寄せながら自分の世界に陶酔しがちのカバ怪人をまじまじと見つめて、小さく嘆息する。
「誤解がないように言っておきますが……僕は男の子です」
「大丈夫カバ! 男も女もオスもメスも、オカマもオナベも得意技カバ! わしのビックジョンは両方いける口カバ!」
「「「下っ端ウイウイッヒー」」」
「ここにも変態さんがいたぁぁーっ!」
「そんなに褒めるなカバ」
「褒めてねーっ!」
「「「下っ端ウイウイッヒー!」」」
え、えっと……一応……助けたほうが良いかな……わたし……最後の力っぽいけど。
強行的な長旅、栄養が不足した上、体温が下がりあまり動かない身体に鞭打って、身を大きくしならせて飛ぶ、距離にしておおよそ六メートルを跳躍して一気に機械帝国の尖兵たちとの距離を縮める。
人間の範疇に収まりきらない妖怪の力を駆使して……そう、わたしの尻尾、鎌の刃で怪人たちの頭部や四肢をナイフでケーキを切り分けるように切り裂く。
飛び散る血肉と機械のパーツ、突然のことに逃げ惑う黒子の下っ端戦闘兵。
「はううぅ……もう、ダメぇぇぇーっ」
最後の下っ端戦闘兵を切り裂いたと同時にわたしの意識は闇に落ちていく。
――最後に善行つんだぽいから……天国にいけるかな――
なんだかよくわからないが……とっても綺麗な人がわたしを抱きかかえて何か言ってくれている……うふふ、こんな美人さんの腕の中で死ねるなんて……幸せかも。
そして、わたしの意識は意識が消えた。
いかがでしたか?
新たなキャラクター登場です。
そして、新たな世界観を紡ぎ始めるたんぽぽワールドを今後ともよろしくお願いします。




